友情の証

835 名前:1/2 :2010/08/01(日) 21:51:42
何かで読んだ古い短編。タイトル・作者失念&うろ覚え。

あるところにとても仲の良い二人組がいた。
一人は大学教授、一人は肉屋。
およそ接点のなさそうな二人だったが、気球に乗るという共通の趣味が
互いを硬く結びつけており、しばしば二人で空の旅を楽しむ姿が目にされていた。
また二人には、他にも共通の特徴があった。ともに片方の目が義眼なのだ。
教授は実験の失敗により、肉屋は牛に襲われた際に、それぞれ片目を失っていた。

そんな二人が、ある時約束を交わした。
俺たちは片目でしか空の景色を眺めることが出来ない。それは仕方のないことだ。
けど、もしどちらかが死んじまった時には、残った方が目玉を貰うことにしよう。
それが友情の証だ、と気球に乗りながら誓う二人。
そしてその数日後、肉屋が事故に遭い死亡する。
教授が仕組んだわけではない。本当にただの偶然だった。
なにしろ、まだ書面での取り交わしも行っていないうちの出来事なのだ。
それでも教授は約束を果たそうとし、死体安置所に忍び込む。
そして肉屋の死体から目玉を抜き取り、代わりに自身の義眼を死体にはめ込んだ彼は、
返す刀で闇医師に駆け込み、移植手術を受けた。

数日後。
術後の経過は良好だった。拒否反応も殆どない。
早速空の旅を楽しみつつ、肉屋を偲んでいた教授だったが、そこでとんでもない話を耳にする。
なんと死んだと思っていた肉屋は、(誤診か何かの理由で)仮死状態に陥っていただけであり、
安置所で息を吹き返した彼は扉を叩いて看護師に救助されたというのだ。
加えて、不可解な点が一つ。肉屋は、なぜか両目が義眼=全盲となっており、
理由を医師が問いただしても答えず、ただ教授を呼べと叫んでいるのだという。
(医師は、以前は肉屋の目が見えていたことだけは把握していた様子だった)


836 名前:2/2 :2010/08/01(日) 21:53:27
取るものも取り合えず病院の個室へ駆け込む教授。
真っ暗な室内で彼を迎えたのは、肉屋の罵詈雑言だった。
お前は俺の大切なものを奪っていった、人道にもとる最低の野郎だ、
だがすぐに返せばポリスに突き出すことだけは勘弁してやる、だからとっとと返しやがれ!
あまりの言い様に教授が弁明しても一切聞く耳を持たず、飛んでくるのは罵倒のみ。
悄然となった教授だったが、全盲となったことでショックを受けているのだろうし、
なにより結果的に盗んだのは事実だからと、肉屋に目玉を返すことにする。

肉屋は術後にかなりの痛みを併発し苦しんだ様子だった。
また、こんないざこざの後では二人の間に友情が戻るはずもなく、互いに距離を置いたまま数年の時が流れる。
そんなある日、教授の元に手紙が届いた。肉屋からだ。
曰く、自分は近いうちに死ぬ。病気なんだ。だが、あの時のことを謝りたい。罵倒して済まなかった。
勿論今更許してもらえるとは思わないが、せめてもの詫びのしるしに、改めて俺の目を貰ってほしい。
何よりそれが当初からの約束だったはずだ。あるべきかたちに収めようじゃないか。

教授も、今更だ、とは思った。
だが、約束=ルールと捉える律儀な彼は、肉屋の最後の一文に従い、移植手術を受けることにする。
今度も拒否反応は殆ど出なかった。肉屋より自分の方が適合するなんて、皮肉な目玉だ、と教授は思う。

そうしてのち、更に数日後のこと。教授の元に、肉屋からの手紙が再び届いた。その内容は、

「ざまあみろ。俺は血液感染の病気だったんだ。今頃はお前も同じ病気になってるはずさ」

おしまい。

色々と作りが甘く、突っ込みどころの多い話だが。なんにせよ、教授が気の毒だった。


842 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/01(日) 22:15:47
>>835
教授は事前に何の病気かくらい聞けよw