宣伝カンパニア(アーサー・C. クラーク)

505 名前:本当にあった怖い名無し :2012/09/03(月) 03:24:18.27
A・C・クラーク「宣伝カンパニア」

『地球よ、油断するな!/シリウスからの侵略者』
というポスターが西側社会に溢れた。
SF超大作3D映画「宇宙からの怪物」は空前の大ヒットだ。
広告代理店は、映画のシリウス星人を模した蜘蛛型の模型をばらまいて年寄りを震え上がらせ、
宇宙船に似せた小型飛行機を無許可で飛ばしてパイロットを狼狽させた。
上映のたびに気絶する観客の数がまだ話題になっていた頃、悲劇は起きた。

銀河帝国にとって、地球との平和的接触は簡単なミッションのはずだった。
確かに地球は、原始的好戦期を脱したばかりの、技術は進歩しているが道義的には後退している状態だった。
しかし、銀河帝国は長い歴史の中でファースト・コンタクトの技術を磨き抜いてきたのだ。

最初の使節団は暴徒によって文字通り粉砕された。
次の使節団も同じだった。
部隊を率いるゼルヴァシュニ王子は、彼の種族の有名な欠点である癇癪を爆発させ、地球に最終兵器をばらまいた。


506 名前: :2012/09/03(月) 03:25:09.67
生命体がすべて死に絶えた地球で、紫色で四つ目のパンダによく似たゼルヴァシュニ王子と、
編み棒を三本刺した毛糸玉によく似た顧問は地球人の野蛮さと不可解さを語り合うのだった。

彼らは映画のシリウス星人とは似ても似つかない姿をしていたし、第一シリウスではなくリゲルからやって来たのだ。
まあ、今さらどうでもいい事だが。

 

天の向こう側 (ハヤカワ文庫SF)
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