アルトハイデルベルク(マイヤー・フェルスター)
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277:本当にあった怖い名無し:2013/04/23(火) 10:30:48.91
- ドイツの作家、マイヤー・フェルスター作の戯曲
「アルト=ハイデルベルク」東ドイツのザクセン地方にあるカールスブルグ公国の王子、
カール・ハインリッヒは、伯父である大公の手で
王位継承者として厳しい教育を受けていた。当時の習わしに従い、他の貴族の息子たちと共に
ハイデルベルク大学へ進むことになったカール。
王族とはいえ、彼も大学近くの下宿で共同生活をすることになった。
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278:本当にあった怖い名無し:2013/04/23(火) 10:32:10.33
- 下宿を経営するのは、人のいいリューダ―夫妻。
そこでケティというウィーン生まれの若い娘が働いていた。
ケティは主人の親戚の娘で、故郷には牛飼いとして働く許嫁が待っているが、
彼女自身はこの結婚に気が進まなかった。二人はお互いに両親を早く亡くしているという境遇も手伝い、
身分の違いなどないかのように仲を深めていく。
ケティと仲良くなったのをきっかけにして、
給仕や使用人、学生たちとも仲良く、楽しい日々を過ごすカール。
洗濯男のケラーマンには、「僕が大公になったら、給仕にしてやる!」と笑った。
身分の違う彼らも、今だけは青春を共に過ごす学友であり、仲間だった。しかし四ヶ月後、公国から使いの者がやってくる。
伯父である大公の病気が治りそうもないので、
早く帰国するようにとの使いだった。
カールは国政のため、寂しさをこらえて帰国を決意。
ケティとの涙の別れを経て、ハイデルベルクを去った。
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279 :本当にあった怖い名無し:2013/04/23(火) 10:34:03.45
- 二年後、無事にカールスブルグ公国大公となったカール。
彼は政略結婚を二週間後に控え、悲しみにくれていた。
そんな中、ハイデルベルクからケラーマンが訪ねてくる。
給仕にするという約束を覚えていたカールは喜び、
ハイデルベルクの友人たちの消息を聞く。
愛するケティはまだ宿で働いていて、カールが去った後は涙にくれる日々だったという。
カールはいてもたってもいられなくなり、短い青春を過ごした懐かしのハイデルベルクを、
その日の夜のうちに尋ねることにする。懐かしのハイデルベルク。
しかし、そこは様変わりしていた。
カールの泊まった下宿はさびれ、昔ほど学生はいない。
一緒に酒を飲み、勉強し、遊んだ学生仲間も、
大公となったカールを目の前に緊張し、打ち解けて話せない。
大公のために懐かしい学生歌を歌ってくれるが、それも精彩を欠いており、
カールはわざわざハイデルベルクへ飛んできたことを後悔しそうになった。「ああ、青春の時とはなんと、うつろいやすいものであろうか。
私の思い出とは、なんと儚いものであったのか」そんな中、ケティだけは昔の姿を留めており、カールのもとへやってくる。
「みんな昔のままだったよ、ケティ。マイン川も、ネッカー川も、それからハイデルベルクも。
ただ人間だけは変わってしまったんだ。昔のままの人は一人もいないんだ」
カールは思わずケティを抱きしめた。
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280 :本当にあった怖い名無し:2013/04/23(火) 10:37:46.55
- 「変わらないのは君だけだ、ケティ。君ただ一人なんだ」
しかし、ケティは故郷のウィーンで牛飼いの許嫁との結婚が決まっていた。
そして、カールも二週間後には愛してもいない相手と政略結婚する。
「私たち二人は、どうしようもなかったのよ。そうでしょう?
私たちは、いつもそのことを知っていたわね」
ケティは悲しそうに笑った。
「僕のハイデルベルクへのあこがれは、ケティ。君へのあこがれだった」
ハイデルベルクを去るカールの脳裏に、
楽しかった短い青春の思い出が、浮かんでは消えていくのだった。フェルスターは日本ではあまり知られていない作家なので、
この作品は岩波文庫か、少年少女世界名作文学全集くらいでしか読めないかと。
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281 :本当にあった怖い名無し:2013/04/23(火) 10:46:49.32
- 納得ずくめの別れでもやっとするが、後味悪くないな
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284 :本当にあった怖い名無し:2013/04/23(火) 15:27:37.56
- >>277-280
綺麗に終わっていると思った
ケティが見る影もなく醜くやつれててカール幻滅
とかだったら後味悪そうだなと思うけども