クレイジーピエロ(高橋葉介)

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高橋葉介「クレイジーピエロ」

1930~40年代のヨーロッパを思わせる架空の土地が舞台の中篇。
どさ回りのサーカス団が森の中で赤ん坊を拾った。
猛獣使いにする、いや空中ブランコ乗りだ、よく見ろ優しい顔だからいいピエロになる、
と皆で可愛がって育てたが、ピエルと名付けられたその捨て子は
臆病で芸がなかなか上達しなかった。

哀れに思った占い師の婆さんはピエルに暗示をかけてやった。
「お前は優しすぎるんだ、優しい事はいい事さ。でもそれだけじゃダメなんだ」
「誰でも心の中に悪魔を飼ってる。そいつはとっても強いんだ、
 手綱をつけて飼い慣らすんだ。お前が支配するんだよ、そうすりゃ強くなる」
ピエルは毎日水晶玉の暗示をせがみ、芸はめきめき上達した。


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しかしピエルはある夜、昔自分を噛んだ事のある錦蛇を素手で引き裂いて殺した。
またある夜、因縁をつけてきた地元のチンピラ数人がバラバラ死体で見つかった。
そのうち戦争が始まり、サーカス団は解散した。

圧政にあえぐ占領下の国で、クレイジーピエロの噂が広がった。
長剣一本で占領軍と渡り合い、人間離れした身体能力で兵士を皆殺しにするピエロ姿の殺人鬼。
救世主かと思われたが、戦場ならともかく占領下の町では迷惑千万。

スパイ容疑の冤罪で、士官四人がかりで個人的な拷問を受けていた少女一人を救う為に
士官と護衛を皆殺しにするのはいいが、一歩遅く少女は殺されている。
功名心に駆られた士官が村を一つ、ピエロをおびき出すエサにして村人を残酷なやり方で殺していく。


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ピエロが士官をさらに残酷なやり方で血祭りにあげるが、既に村人は全員殺されている。
クレイジーピエロは怒りに任せて暴れるだけなのだ。

戦後。
荒野の真ん中、廃線になった線路脇の、元は駅舎だった小屋に
老婆と孫らしい少女が住み着いている。
遠くに兵隊三人の姿が見えたので、老婆は少女を納屋に隠した。
小屋に辿り着いた三人はとりあえずの暇潰しに老婆を殴り、食料と水を強奪した。
一人は納屋で少女を見つけ、レイプの順番を決めてまた納屋へ少女を担いで戻った。

老婆は順番を待つ間退屈だろうからと昔話をしてやった。
「クレイジーピエロならよく知ってるよ、あたしの息子も同然だもの」


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老婆は前述のサーカス団の占い師だった。
占領軍の圧政が始まり、クレイジーピエロの噂が広がった。
老婆にはそれがピエルだとすぐにわかった。
老婆は苦労して彼を探し出し、暗示をかけて力を封印した。
さらにもう一つ暗示をかけ、孫娘だと思い込ませて一緒に暮らしているのだった。

孫娘…女装を解いてピエロ装束に戻った少年が
兵士の生首と長剣を下げて飛び込んできた。
彼は兵士二人を斬り殺すが、老婆は兵士に撃たれて倒れた。

「仕方ないね、お行き…でもピエル、お前は一体何者なんだい…」
老婆が死ぬのを見届けたピエルは飛ぶように走り、線路沿いに都会へ向かった。
『クレイジーピエロの伝説はここから始まるのだ…魔の影、人の形をした災厄の伝説が…』

 

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