文字が……(星新一)

1891/2:2013/11/22(金) 23:46:29.06
星新一「文字が…」

春子は芸術系のちょっとした才能で自活し、好き勝手に生きてきた。
しかし20代後半になってみると、「ちょっとした才能」程度ではこの先厳しいと思うようになり、
折よく知り合った親ほども年上の男性が熱心にプロポーズしてきたのであっさり結婚した。

春子は結婚して間もなく、幻覚を見るようになった。
【カネガホシイノカ】
という文字が白い所に現れるのだ。
白いタイルの上にこの文字を見た時、落書きだと思ってこすったが消えなかった。
その文字は、白い壁紙や本の余白にまで現れて春子を苦しめた。

夫が大金持ちなのを、春子は結婚するまで知らなかった。


1902/2:2013/11/22(金) 23:52:56.08
断じて金目当てではない、愛しているから結婚したのだと思ってはいるが、
実は夫の財産が欲しかったのでは?と春子は悩み、罪悪感から夫に尽くした。

時が経ち、死の床についた夫は献身的に介護する春子に懺悔した。
夫は若い頃金持ちの女と結婚したが、すぐに後悔した。
前妻は嫌な女で、夫を金で買ったつもりでいた。
我慢ならなくなった夫は治安の悪い国への旅行を提案し、現地で前妻を始末した。
今の財産は前妻の遺産を投資してできたものだそうだ。

「祟りがあるのではと内心怯えていたが、何もなかった。
 君に出逢えて僕は幸せだったよ。さよなら、春子」

関係ないのに祟られて可哀想。

 

ご依頼の件 (新潮文庫)
ご依頼の件 (新潮文庫)