I LOVE YOU

457 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/04/24(日) 00:53:17
とある国にひとりの少年が暮らしていた。
ある日、少年の住む町に映画のフィルムがやってきた。
それは古いアメリカの映画だった。豊かな町並み、楽しげな音楽、そして愛を語らう男女。
少年はその映画の虜になった。そして叶うならばアメリカに行ってみたいと思った。
しかし、彼の住む国は決して豊かな国ではなかった。

時が過ぎ、少年は青年になった。彼の国は更に貧困が進んでいた。
職はおろか日々の食べるものにさえ事欠くようになった。
そんなとき青年の元に「アメリカに働きに行かないか?」という話がやってきた。
「これで両親や兄弟を食べさせることが出来る。いずれは家族と一緒にアメリカで暮らしてもいい・・・。」
彼は港についた貿易船の船底の小さな箱の中に潜り込んだ。
真っ暗な箱の中で、彼は幼い頃に見た映画の風景を思い浮かべていた。


458 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/04/24(日) 00:55:18
つづき

船が大きな港へ到着した。青年は箱から出され波止場へと下ろされた。
ところが、約束していた職を紹介してくれる人がいない。
青年は寒さに震えながら軒に身を寄せて数日間待ったが、迎えの人はやって来なかった。
言葉の通じない国でひとり、彼は途方に暮れた。

仕事を探さなくては。それよりも何か食べるものを、いや水を・・・。
青年はふらふらとした足取りで歩き始めた。
雨どいに溜まった雨水を飲み、裏路地のゴミ箱を漁ってわずかに腹を満たした。
夢にまで見たアメリカの風景がとても色褪せて見えた。
どれくらい歩いたのか、周りは港町の盛り場から住宅地へと変わっていた。
暖かな光がカーテンから漏れる家が並んでいる。家族の会話らしき声も漏れてくる。
そのとき青年は聞き覚えのある音楽を耳にした。


459 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/04/24(日) 00:56:23
つづき

青年は思わず一軒の家の窓に駆け寄った。
カーテンの間から中を覗くと、ソファで仲良く寄り添う夫婦が見えた。
赤く燃える暖炉の炎、テーブルの上でカップから立ち上る湯気、
ラジオから流れる軽快な音楽。映画のシーンそのものだった。
青年は空腹も孤独も忘れて、ガラス越しの光景を眺めた。

 「ガタン!」と窓枠が揺れて音を立てた。夫婦は窓に目をやった。
 そこには、見たことのない男が目をギラギラさせながら窓に顔を押し付けている。
 妻は悲鳴を上げた。夫はとっさに暖炉の上のショットガンを手にとった。
 男は何か意味不明なことを叫んでいる。震える手で夫は引き金を引いた。

青年は英語が喋れなかった。
知っているのはあの映画で愛を語らう男女の言葉だけだった。
「 I LOVE YOU 」
彼は何度も叫んだ。そしてそれが彼の最期の言葉になった。