赤い蝋燭と人魚(小川未明)
- 人魚話が続いていますね。後味の悪さならやはり「赤い蝋燭と人魚」でしょう。いちおうあらすじ。
一人淋しい人魚の女性は、自分の子供だけもにぎやかな街で暮らさせようと、
子供のいない老夫婦宅に我が子をわざと捨てる。
老夫婦は人魚娘を育てることになった。足がひれなので外には出れないが、
それなりに楽しくくらす人魚娘。お絵描きを覚えて蝋燭に綺麗な絵を描くようになる。
その蝋燭を神社に灯すと航海安全だと評判になり、蝋燭は飛ぶように売れる。
しかし金持ちになった老夫婦は堕落し、人魚娘に対する思いやりを忘れ、
もっと蝋燭を描けとこき使う。育ての親を慕う人魚娘は、言うがままに
労働基準法無視の労働に耐える。
ある日、人魚娘の話を聞き付けた見世物小屋の親方がやってきて、蝋燭の売上
十数年分以上の大金を積んで、人魚娘を売るように要請。堕落しきった老夫婦は快諾。
売り飛ばされる当日、人魚娘はそれでも蝋燭に絵付けをしていたが、急かされて、
何本かの蝋燭を真っ赤に塗る。店頭に並ぶ真っ赤な蝋燭。一人の女がそれを買い求める。
その日、神社にはその真っ赤な蝋燭が灯された。それに呼応するかのように時ならぬ大嵐が襲い、
人魚娘を乗せた見世物小屋一座の船は沈没。
それ以来、神社に赤い蝋燭の灯った日は、どんなに天候がよくても大嵐が
襲うようになり、その蝋燭が灯っているのを見た者には凶事が襲うという。
賑やかだったその海岸の町は寂れていった(終)