サン・ルーム(柴田昌弘)

38 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/06/23(木) 22:06:39
車椅子で思い出した、身体が悪い繋がりで後味悪い話。

舞台はSFチックな未来。主人公は虚弱体質で寝たきりの少年。
母はなく、父は仕事で飛びまわり、財産はあるので家政婦と介護用ロボがついている。
SFな未来の世界では環境破壊が進み、空はスモッグで真っ黒。
お日様の当たるサンルームを持つことが一番の贅沢となっている社会だった。
財産家である父親は、もちろん少年にサンルームのある家を与えていた。
しかし甲斐甲斐しい家政婦がついていても、最新型の介護ロボットがいても、
贅沢なサンルームのある家を与えられても、父に省みられることもなく、
不健康な身体をベッドに縛りつけられる生活に、少年の心が晴れることはなかった。
そんな感じで当然友達もいない少年だったが、ある日TV電話の間違い電話を
きっかけに、どこの誰とも知らぬ少女と友達になることができた。
初めて心弾む日々を送る少年だったが、楽しければ楽しいほど、外に出て少女に
会いにいくこともできぬ自分に落ち込むばかり。
しかし、これもまたふとしたきっかけで、少女はなんと隣の住人だったことに気付く。
ちょっとだけでも健康になり、少々ふんばれば会いにいけるかもしれないと希望を抱いたことで、
少年は明日への活力を取り戻した(続く)


39 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/06/23(木) 22:09:10
しかしそこへ滅多にやってくることのない父が現れる。少年の虚弱体質は並大抵のものではなく、
このままでは彼は成人することもおぼつかない。
そこで少年にサイボーグ手術を受けさせる段取りをつけたというのだ。
いくら自分の身体が弱いから、明日をもしれぬ身体だからとわかっていても、
いきなり自分の身体を全部とっかえます、と言われてはいそうですかと納得できる人間はいない。
少年ももちろん拒絶反応を示した。そしてそうなるくらいなら、どうなってもいい、
隣の少女に会うんだと思い立ち、介護ロボに命令して自分を抱えさせて隣の家めがけて
大きくジャンプした……。

遠い未来。環境破壊で空はスモッグで真っ黒になり、太陽の光はもはや地上に届かぬほど
弱々しい。その光を少しでも浴びるため『超高層』の『マンションの屋上』に作られた
サンルームは、庶民には到底望めない贅沢となっていた…。

少年が飛び出した部屋の外には、少女の住む隣のマンションとの間に、
下が見えないほどの奈落が広がっていた。その暗黒を見つめながら、
最愛の息子をなくした父親がただ呆然と立ち尽していた(終)

ちなみに柴田昌弘の読みきり短編漫画です。
「紅い牙~ブルーソネット~」の単行本に同時収録されてたやつだと記憶してる。


42 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/06/23(木) 22:18:18
>隣の少女に会うんだと思い立ち、介護ロボに命令して自分を抱えさせて隣の家めがけて
>大きくジャンプした……。
何で玄関から会いに行かなかったんだろ?

万一うまくいったって、ロボットに抱きかかえられて
ハァハァ侵入してきたら不法侵入者と見なされて
一瞬で友情は破綻すると思うんだが。


44 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/06/23(木) 22:46:40
>>42
入り口に父親が立ちはだかっていたから、
反対方向の窓に逃げたんじゃなかったっけ・・・ウロオボエだけど。
主人公と少女は、テレビ電話だけじゃなく
仮想世界で親しくデートをしていて顔を知ってるので、
(精神だけ切り離して、好きな世界に入れる装置があり、
 体の弱い主人公も、仮想世界なら健康体で遊べると言う設定)
急に会いに行っても相手はわかってくれると思ったんでしょう。

 

未来都市バラン (ソノラマコミック文庫―柴田昌弘傑作集)
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