カルネアデス計画(星野之宣)
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229 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/18(火) 20:35:11
- 星野之宣の初期の読み切りに「カルネデアスの舟板」てのがあって、
学生だった自分は結構落ち込んだ。海で幸せな時を過ごす恋人たち。ふたりは沖に出るのだが、
突然の嵐で流されてしまう。気づくと青年のほうの足はボートの挟まれ、海からあがれない状態。
女性は助けようとする女だが、うまくはずれない。
血の臭いをかいでサメが集まってくる。このままでは、二人ともやられる。
その時、女はオールを振り上げ、青年を叩きつぶそうとする。彼がサメに食われてしまえば、
自分は助かると思ったからだ。青年は、彼女を愛している事、嵐の中でかばった事など訴えるが、
必死の彼女には届かない。彼女にアタマを割られ、血まみれの青年はサメにバラバラにされて食われ、
顔に血のシブキをあび、ぼんやりとする彼女。
と、上空から近づく宇宙艇。艇は海から彼女をすくい上げて飛んでいく。
収納された艇の中で、気が付く女。そこには、自分たちと同じ姿だが、
見慣れぬスーツを来て、メカにかこまれた人々がいた。
彼女は、その中に自分にそっくりの女がいるのに気づく。さらに、殺したばかりの彼が、
驚いた顔で自分を見つめていた。
「キャアアアア!!」彼女の叫びとともに、今までいた地球が、宇宙の彼方で粉みじんになった。
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231 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/18(火) 20:38:29
- 彼らは、その地球と同時に存在する平行宇宙の地球から来た人々だった。
時空のゆがみ(だか何だか)で2つの地球が衝突する事が解り、科学の発達していた彼らは
相手の地球を破壊する事で、自分たちを助けることに決めたのだ。
助けのない海で2人の人間が溺れていて、板きれがたった1枚あった時、
自分の命が助かるためには、もうひとりを殺してもかまわない。
古代「カルネデアスの舟板」と呼ばれたこの論理は、現代においても、
正当防衛など緊急の際の手段として生きているのである。
破壊直前に、ひとりでも救出しようとしたのは、せめてもの良心だった。
だがさすがは平行宇宙。海で遭難した男女と、まったくそっくりの男女が存在し、
彼らはやはり恋人同士。しかも優秀なクルーとして、この艇に乗っていたのだった。地球に、無事もう一つの地球を破壊したことを報告する青年。
目の前には、恋人の女性と、彼女にそっくりの水着の女性。
「ひとりだけ救出しましたが……ダメです。完全に発狂しました……」
水着の女性のうつろな目は、すでに何も見ていなかった…。星野之宣って美大出てるとかで、なまじ絵が上手いからさー。
暗い話にごまかしようがなくて、かなり鬱。