キッズトーク(柳原望)
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858 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/10/13(金) 23:02:33
- 昔読んだ少女漫画 たしか白泉系
両親と別荘にやってきた少年は、近所に住んでいる少女と仲良くなる。
少女と会うのが楽しくて少年は幸せな気分だったが、母はふさぎこんでいた。
数年前、少年の妹が池で溺れて亡くなった。
母はそれ以来、少年には明るくふるまうが、
ふと気づくといつも暗い表情で自分を責めるようにうつむいていた。
妹は目を離した隙にいなくなり、見付かった時には池で溺れていた。
助ける事ができなかったと、母は今も悔やんでいた。
少年にももちろん悲しむ気持ちはあるが、数年の間に心の傷はだいぶ癒えたし、
初恋に浮かれて半ば妹の死を忘れていた。そして、母への気遣いも。
別荘を立つ日、最後に少女に会おうと少年は家を抜け出す。
両親が心配しながら少年を探し回っている事も知らず。
少女と別れて少年が戻ると、心配そうな顔で父が出迎えた。
しかし母は不思議そうに少年を見ながら「あなたは誰?」と聞いてくるだけだった。母はとても弱い人だった。妹の死を乗り越え前に進む事などできないほどに。
少年が行方不明になった時、母は妹が死んだ時の事を思い出した。
また自分が目を離したために、妹だけではなく少年も亡くなってしまったのではないか、
もう二度とあんな辛い思いをしたくない、母はそう思った。
そしてそんな思いをしたくがないために、妹が死んだ辛い記憶も、
これから先同じように亡くなってしまうかもしれない息子の事も忘れてしまったのだ。
母に忘れられた事に少年はショックを受けるが、
同時に、妹が死ぬ以前のように心から明るく笑う母の姿に安堵も感じた。
「こんな異常な事になるなんて…早く医者に見せましょう」
使用人はそう言ってきたが、少年はその意見を却下した。
「変っていうのは多数決の問題で、それが悪いとか間違ってるって事じゃない
前の泣いてるママに戻った方がいいの? 僕はもうママに悲しんでほしくない」
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859 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/10/13(金) 23:03:54
- 事故で両親を失ったので引き取った遠縁、そういう設定で少年は母に紹介された。
「私を本当のお母さんだと思って甘えればいいんだからね」
と同情で号泣しながら母はそう言う。
明るく元気で少し間抜けなところがある、かつてと変わらない優しい母。
でも確かに失ったものもあった。たとえば些細な距離。
母は手作りのお菓子を父に食べさせる時、直接手で取って父の口に放り込む。
だが、少年に食べさせる時はお菓子を皿に乗せてフォークつきでわたしてくる。
いくら優しく親切に接せられても、本当の家族であるがゆえの親密さはなくなった。
けれど、母が苦悩する事に比べればそれは小さな事だと少年は割り切った。それからまた数年たつ。少年は自分から望んで寄宿舎のある学校に進学した。
久しぶりに帰り、両親と共にパーティに参加する
しばらく会っていなかった遠縁のおばさんが母に話しかけてくる。
「娘さんが亡くなったって聞いて心配してたけど大丈夫そうね」
一家の事情を知らないおばさんは、妹の死を長文で悼み続ける。
戸惑いながら母は、忘れていたはずの妹の死を思い出しそうになる。
少年はおばさんの話をさえぎり、母を連れ出す。
「待って、なにかを思い出しそうなの」
頭を抱える母に、少年は言う。
両親を失った時の事故で僕の妹も一緒に亡くなっていたんです、と。
身を切るような思いで悲しげに話す少年に母は、
「そうだったの 聞いちゃいけないと思ってて知らなかったわ
そう…妹さんも……辛くなったらいつでもお義母さんに言うのよ?」
と言って励ますように微笑みかけた。
なにかを失ったわけではない、ただ形が変わっただけだ、少年はその笑顔を見ながらそう思った。母親はそれで確かに幸せになったのかもしれないけど、
実母に養子扱いされる少年の心境とか、親父の世間体とか、
なにより忘れられてしまった死んだ妹の事を思うと
なんかすっきりしない
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878 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/10/14(土) 02:45:13
- >>858
何この男前少年。
健気すぎて泣けた。
後味悪くはあるけど、切ない読後感だ…
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906 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/10/14(土) 19:16:16
- >>858-859
柳原望の『キッズトーク』だな。
主人公の相手役の幼少時代。