わが谷は未知なりき(手塚治虫)

741 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/11(月) 03:40:07
手塚治虫のSF短編「わが谷は未知なりき」

西部劇に出て来そうな雰囲気の谷に住む3人の家族。
初老の父、若い姉と弟は畑を耕し、自給自足の暮らしをしていた。
一家は何代にも渡ってこの谷に住んでいると言う。
それなりに緑があり、それなりに暮らして行けるが
姉弟は一度も谷を出た事が無く、外の世界に憧れを持っている。

嵐の夜、見知らぬ男がやって来る。
男と姉はいつしか恋仲になる。それを知った父は男を追い出そうとする。
姉は男とともに逃げる。そして初めて谷の外の世界を見る。
そこは荒涼とした砂漠が広がっていた。「海は?街は?人は?」
そう尋ねる姉に、男は言う。「そんなものは無いよ…」

追って来た父と弟によって男は死ぬ(ちょっとうろ覚え)。
父も負傷し、虫の息となる。父は語る。
「ここは宇宙の流刑地なんだ。何代か前の先祖が罪を犯し、この星に来た。
 そこで先祖は努力の末、畑を切り開き、緑を育て、そして兄妹で子を作った」
それからずっと、子孫達も同じ事を繰り返して来た。
「お前達もいつか結婚し、子供を産め。それをいつかお偉いさん達が
 見つけて驚くだろう…」
父は息絶える。
2人は先祖代々のお墓に父を埋め、2人で暮らして行く事を決める。