奈落(山岸凉子)

431 名前:奈落  1/3 :2008/11/19(水) 00:20:00
主人公(妹)は姉を生まれながらの人生の勝利者であり、自分は敗北者であると思って生きてきた。
彼女ら2人はそっくりな容貌だったが、
姉は金髪に青い瞳で、妹は茶色の髪に灰色の瞳をしていた。
姉妹の両親は、母にそっくりな上に、母の「自分がそうであったら」と願っていた理想そのものである
金髪と青い瞳を持つ姉を溺愛し、母と容貌、髪と瞳の色が同じ妹は姉より一段低い扱いを受けていた。
妹は母の理想の自分像である姉が可愛がられ、
母に本当にそっくりである自分が 姉ほど可愛がられないのを不満に思う。
また、姉妹の母は、姉には女の子らしい可愛らしい色の可愛い服装をさせ、髪を長く伸ばさせたが
妹は地味な色の服を着せられ、髪も短くさせられていたため、周囲には姉と似ていると言われた事がなかった。
そのことに不満に思った妹は、母の死後、庭のごみ捨て用の穴に散髪用の鋏を捨ててしまう。
髪を切られなくなった妹は、姉に似ていると周囲に認められ、妹ははそれに喜び感じる。
その後、成長するに従って、妹は姉の真似をするようになっていく。
姉妹の父を含めた周囲の人間にそれをやめるようにも、妹は姉の真似をやめようとしなかった。

成長した姉は、容姿、演技力、知性の全てを備えた女優としてデビューし、人気を得る。
姉のマネージャーは若い美形で、妹は彼に憧れていた。
姉と同じようになりかった妹も芸能界にデビューをはたしたが、
姉のように実力を伴わない妹はなかなか出演作を見つけることが出来ない。
しかも妹のマネージャーは姉マネージャーと別人の中年男であり、そのことに不満を持つ妹は段々姉へと対抗心と嫉妬を募らせていく。
妹マネージャーがやっと見つけてきた妹への出演依頼は、ポルノ紛いの映画であった。
その事がよく分かっていない妹は、出演する気まんまんだったが、姉と父の反対により
出演は取りやめとなり、妹マネージャーは解雇される。
理解の無い父と姉だと思い込み、妹は泣きながら眠りについた。
夢の中で彼女は ごみ捨て用の穴のなかに鋏を捨てる夢を見る。


432 名前:奈落  2/3 :2008/11/19(水) 00:20:35
翌朝、頭痛と共に目覚めた妹は、父が自動車の事故で亡くなったことを知らされる。
悲しむと同時にこれでようやく自由になれると喜ぶ妹だったが、あいかわらず彼女には仕事は無かった。
姉と姉マネージャーが恋人であることを知った妹は
自分の欲しいもの全てを姉が奪っていくと嘆いた末、自分に仕事が来ないのは
姉の陰謀であるとすら思い込むようになる。
その夜、また妹は鋏を捨てる夢を見た。

翌日遅く目覚めた妹は、姉が自動車の故障による事故で亡くなったことを知る。
姉の事故の原因となった故障は、人為的なものなのかそうでないのか区別がつかないものだった。
姉の葬式で、妹の周りではその話がささやかれ、妹は注目を浴びていたが、彼女は気にしていなかった。
姉がいなくなった今、自分こそが人生の勝利者であり、姉にとってかわれるのだと思った彼女は
髪を金髪に染め、姉マネージャーに言い寄るが、妹は姉ではなく、姉に成り代わろうしても
決してなれるものではないと拒絶されてしまう。
その日の夜に妹は 鋏を捨てようとして手を見ると鋏を持っていない という夢を見た。


433 名前:奈落  3/3 :2008/11/19(水) 00:22:31
父と姉の死を知って、妹のマネージャーが妹への出演依頼を持って戻ってきた。
これでようやく姉のように女優になれる、と喜ぶ妹はマネージャーについていくが、
辿りついた先はポルノ映画の撮影場だった。
騙された事を知って怒る妹だったが、おまえが姉を殺したのだろう、とマネージャーに仄めかされた途端
何故か体の力が抜けてしまい、撮影スタッフ達に押さえ込まれてしまう。

その後、ポルノ女優となった妹は、髪を姉と同じ金髪に染め、姉の持っていたようなパステルカラーのドレスを
着ると、自分が姉そっくりに見えることに満足している。
彼女は、いまだに鋏を捨てようとする夢を見るが、穴のなかには顔の見えない
背中に鋏がいくつも刺さった金髪の女が倒れている。
あの女は姉なのだろうか?姉は私なのだから、すなわちあの女は…?

分かりにくい上、長文ですみません。
この話は山岸凉子漫画なのですが、絵でみると本当にぞっとする話です。


435 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/19(水) 01:06:46
奈落ってカトリーヌ・ドヌーブと姉がモデルだよな。
姉のファンなので嫌な気分になったもんだ。
もちろん別物と理解はしているが。

 

二日月 (山岸凉子スペシャルセレクション 8)
二日月
(山岸凉子スペシャルセレクション 8)