アシュラ(ジョージ秋山)

905 名前:アシュラ 1/4 :2008/11/30(日) 05:34:35
眠れないから書いてみる。
すごい長文になったから、長いの読めない人は読み飛ばし推奨。
最初は主人公に名前がなくて、途中まで全部「子供」にしたから
「子供」は同一人物だと思って読んでください。

「アシュラ」ジョージ秋山

舞台は、中世頃の日本。
大地には、飢饉で苦しみ、死んだ人間の骨や屍が無数に転がっている。
死体にはうじがわき、カラスがたかっている。

そんな中、妊娠した気のふれた女が、殺した人間の肉や、
転がっている死体の腐肉を食らいながら生き延び、出産する。
母親になった女は、母乳を出すために必死で食料を探すが、
遂に食べられる死体もなくなり、餓死寸前の母親は我が子を食べるため火に投げ入れる。
「生まれてこないほうがよかったのに」

突然の豪雨により火は消える。
死んだかのように見えた「子供」だったが、村人の出したゴミを食べ、
民家に忍び込んで盗み食いをしながら山で一人生き抜いていく。

ある年のこと、日照りが続き、父・母・兄・弟のある家族の家には、
もう食料がなくなってしまっていた。
父と兄は、山に暮らす「子供」から肉を奪って食うが、
それは行方不明になった弟の肉であったことに兄だけが気付き、罪悪感に苦しむ。
その後、父と兄は、病により死んでしまった母親の肉をも食って
なんとか生き延びるが、父は死んでしまい、兄は孤児となる。

人の言葉も話せず、獣のように生きている「子供」は、ある日法師に出会う。
法師は、子供が人肉を食らったことを見抜き、獣の世界ではなく、
人間の世界に住めと説き、南無阿弥陀仏という言葉を教える。


906 名前:アシュラ 2/4 :2008/11/30(日) 05:35:57
過去に弟を食ってしまった兄は、散所へ流れ着き、
時期を同じくして「子供」も散所に入れられてしまう。
散所では、暮らしは苦しいが、人肉を食うような生活には
戻りたくないと思う子供達が奴隷のようにこき使われていた。
兄は、人肉を食ったことをひた隠しにしながら、自分の弟を殺し、
自分に人肉を食わせた「子供」を恨み、つらくあたっていた。

散所で暮らす子供達は、荘園に住む子供達に差別されており、
ある日、散所の子供達と荘園の子供達の間のケンカで、
「子供」が荘園を治める地頭の子を殺してしまう。
怒り狂って犯人を捜す地頭に、兄が、「子供」が犯人であることを
告げ口したため、「子供」は地頭に崖から落とされてしまう。

散所を治める散所太夫のところに、気のふれた女、
藤乃(冒頭で「子供」を生んだ女)が突然現れる。
藤乃は、散所太夫と一緒に暮らしていたが、妊娠発覚後、散所太夫に
「この世に生まれても地獄だから、子供は堕ろして極楽へ往生させろ」と言われて姿を消していた。
子供はどうしたのかといぶかる散所太夫だったが、何故か突然、
少し前に散所で見た「子供」が自分の子供であるという確信を持つ。

散所に暮らす子供達の中には、七郎というリーダー格の若者がいた。
七郎は、村に住む若狭という女と好き合っていたが、
若狭の父親は、彦次郎という若者と自分の娘を結婚させたいと思っていた。
ある日、若狭に拒まれた彦次郎が無理矢理若狭を襲おうとするが、
「子供」のお陰で若狭は助かる。


907 名前:アシュラ 3/4 :2008/11/30(日) 05:37:21
地頭に追われている「子供」をかくまい、食べ物を与え、言葉を教え、
母のように姉のように「子供」に接する若狭。
若狭のお陰でやっと人間らしくなってきた「子供」だったが、
彦次郎が密告したため、地頭が「子供」を殺しにやってくる。
それでも「子供」をかばう若狭だったが、自分がいない間に「子供」に襲われ、
怪我をして半殺しにされた自分の父親を見て態度を一変させる。
地頭に捕まって木から吊るされ、カラスのエサにされそうになった「子供」を
散所太夫が救い、「子供」は散所太夫の家へ連れて行かれる。

父親とは、母親とは何かを散所太夫の家で考え始める「子供」
その頃、「子供」の母親である藤乃は、近所の家から赤ん坊をさらい、
「アシュラ、アシュラ…」とつぶやきながら、たき火にくべて焼き殺していた。
子供を火に投げ入れる藤乃を見て、それが自分の母親であることを思い出した
「子供」は、藤乃を崖から突き落として殺す。
散所の子供達に、藤乃が散所太夫の妻であったことを知らされ、
父親が散所太夫であることも知る「子供」
「アシュラ」とは、「子供」の名前であった。

アシュラは父である散所太夫と対峙し、母親を殺したことを告げる。
「人を生むだけなら誰でもできる、自分の母親に火に投げ入れられるような
自分を何故生んだのか。生まれてこないほうがよかった」と
繰り返し言うアシュラを見て、自分の犯した罪は重いとアシュラに詫びる散所太夫。
だが、「自分が虐げられ、苦しみながら一人で生きている間、
酒を飲み、女を抱いてのうのうと生きていたお前を父とは認めない。
人間を憎んでいるというが、一番悪いのはお前だ、こんな自分は
何をしても悪くない」と散所太夫を殺そうとするアシュラ。

自分が人間を愛すること、人と関わり合うことを恐れたために、
憎しみあう関係ができたと気付き、アシュラに殺されることを覚悟する
散所太夫だったが、そこへ実はまだ生きていた藤乃が現れる。
アシュラは母をも殺そうとするが、法師が現れ、自分がアシュラを預かると言い出す。


909 名前:アシュラ 4/4 :2008/11/30(日) 05:45:01
法師は、アシュラと暮らしながら、「どんな親でも、親があったからこそ
お前が生まれた。許すしか道はない」と説かれるが、
それを受け入れられず、相変わらず生まれてこなければよかったと思うアシュラは、
法師の元から脱走する。

山で幸せそうな猿の親子を見たアシュラは、親猿の首をはねて殺してしまう。
それは、アシュラが初めて、食う目的ではなく生き物を殺した瞬間だった。
人間の本性は獣であり、獣になった人間を責めても仕方がない、
己の中の獣と戦うことが人間の道だという法師の言葉を思い出しながら、
誰もが獣なら、自分だけが人間らしくしても損だ、と、
アシュラは、幸せそうに暮らしている一家を殺す。
追いかけてきた村人をも殺しながら、若狭や幸せそうな一家などを思い出し、
葛藤するアシュラ。
頭の中には「なぜそんなことをするの」という問いかけが浮かんでいた。

アシュラが村人を殺したことは地頭にも知れ、大掛かりな山狩りが行われる。
魚を捕りに入った滝壺で村人に追いつめられ、山中を追いかけ回されながらも
なんとか追っ手から逃れたアシュラは、散所の子供達に助けられ、飯を分けてもらう。

一方、父が怪我をし、女手一人では食料を調達できなくなった若狭の家では、
父と若狭が食い物に困っていた。
そんな二人の元にアシュラが現れ、食えと人肉を放り投げる。
結局それはイノシシの肉だったが、人肉と言われたものを食ってしまった若狭を見て、
「人間は誰でも獣になる瞬間がある」という法師の言葉を思い出し、
打ちのめされたアシュラは若狭をののしる。


912 名前:アシュラ 4/4 + α :2008/11/30(日) 05:48:31
若狭に食べさせるために散所の子供達の食う米を盗んだ七郎だったが、
結局失恋してしまい、悲しみのあまり失踪する。
食料がなく、散所の子供達は食う物に困るが、
アシュラが小頭を殺して食料を奪ってくる。

リーダーの七郎がいなくなり、小頭も殺してしまったため、
もう散所にはいられないアシュラと子供達は、都へ行くことを計画。
都には食料があるはずだともくろんでのことだったが、都は遠く、道中の食料にも困る始末。
更に、途中で都から逃れてきた人々に出会い、
都へ行くのはやめた方がいいと言われ、ひるむ子供達。

それでもアシュラは都へ向かおうとするが、そこへ藤乃がやってくる。
アシュラの名を呼びながら近づいてくる母親の藤乃を見て、法師に言われた
言葉が脳裏をよぎるが、藤乃を「気ちがい」と呼び、突き飛ばし、引き倒すアシュラ。
病に冒されていたらしい藤乃は息絶え、アシュラと、
都から逃れてきた人々・散所の子供達は皆どこかへ行ってしまう。

地面に倒れ、残された藤乃の元に、花を持って戻ってきたアシュラは、
死んでしまった母に、生まれて初めてすがって泣く。
母を埋めたアシュラは、また一人で生きていく。
「生まれてこないほうがよかったのに」という言葉とともに。

終わり


913 名前:アシュラ :2008/11/30(日) 05:49:54
4回で収まらなかった…ごめん。

全編を通して、どんより、うつうつとした話。
絵柄が絵柄なので、そこまでグロではないけど、
気持ち悪いのが嫌いな人にはお勧めしない。

自分的には、後味は悪いけど、考えさせられるというか、
読んで良かったと思うし、何回も読み返したい漫画。

 

アシュラ (上) (幻冬舎文庫 (し-20-2))
アシュラ (上)
(幻冬舎文庫)
アシュラ (下) (幻冬舎文庫)
アシュラ (下)
(幻冬舎文庫)