ミノタウロスの皿(藤子・F・不二雄)

251 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/26(金) 23:07:53
藤子不二雄「ミノタウロスの皿」

宇宙船の事故でただ一人生き残った主人公。救助隊の到着まで20日以上。
そのまま宇宙船が墜落した星は、偶然にも知的生命体の文明があった。
そこでミノアという美しい少女に助けられる。外見も人間と全く同じ。
コロニーに迎えられて元気になる主人公。美しいミノアともいい感じになっていく。
唯一の難点は食事が不味いこと。彼らは食事を「エサ」と呼ぶ。
地球に帰ったらうまいステーキを腹一杯食ってやる、と誓う主人公。

ある日、花を摘んでいたミノアが指に棘を刺してしまった。大騒ぎで泣きながら帰るミノア。
やはり大騒ぎで泣き叫ぶ家族。「大袈裟だなあ…」と思っていると医者が来る。
医者は地球でいう牛そのものだった。医者(=牛)は
「これくらいなら大丈夫、ミノタウロスの大祭までには治るよ」と。
安堵で大喜びのミノアと家族。大祭の主役に選ばれていたミノアは、傷やあざ
一つでも失格となってしまうのだ。

そして医者(牛)は主人公に「ん?これはどこのウスだ?」と家族に聞く。
ミノアの父は「迷いウスで、かわいそうに頭がおかしいらしいのです」と説明。
「とりあえず保護しよう」という牛に主人公は「僕はここにいるから」と答える。
そこで主人公はやってきた牛たちに強制的に捕まえられ、牢屋に入れられる。

牛の王様たちが主人公の供述通り宇宙船の残骸を発見し、主人公の言っていることが
本当なのだと知って解放。「失礼をいたしました」とお詫びして賓客扱いに。
この星の支配者は牛そっくりの彼らで、ミノアたち人間に似た「ウス」は家畜だった。
救助が来るまで王宮にどうぞ、と言われるが、主人公は美しいミノアが
家畜であることにショックを受けつつも、ミノアの家に住む許可を得る。
そしてミノアはもうすぐある「ミノタウロスの大祭」の主役に選ばれていた。
彼女は血統のいい食肉種である、と。

ミノアは大祭の主役として大皿に乗せられる。
つまり食べられる。


253 名前:ミノタウロスの皿2 :2008/12/26(金) 23:09:18
主人公は驚愕でミノアに問うが、彼女は誇らしげに「そうよ。見直した?大変な名誉なのよ」
と話が通じない。「食用ウス」にとって、自分がどんな食材になるかは重要なこと。
発育が悪いと最悪畑の肥料になるかもしれない。
大祭の主役になることはウスにとっての最大の出世に等しく、おいしければ歴史に名前も残る。
主人公とミノアの価値観は平行線。
地球の人間の倫理と彼女の「ウス」の意識は全くかみ合わない。

主人公は権力者に話をしに行く。
とにかくこんな残酷なことはやめるべきだ、と訴える。
支配者たちは礼儀正しく彼の話を最後まで聞くが、やはり通じない。

大祭の前日、主人公がミノアに問う。「死ぬんだぞ、怖くないのか?」
しばらく黙って、ミノアは「怖いわ」と。
やっと通じたと思った主人公はミノアに、祭りが終わるまで逃げよう、一緒に地球へ行こう
と言うが、ミノアは「大祭の栄誉を失う方がもっと怖いわ」と拒否。


254 名前:ミノタウロスの皿3 :2008/12/26(金) 23:10:45
祭りの当日、最高権力者に最後の訴えをするが、結局時間の無駄になってしまい
ミノアは調理に回される。慌てて後を追う主人公。だが一足違いでミノアはいなかった。
早くしないとミノアが料理されてしまう、と焦る主人公に
「大丈夫ですよ。ミノアは活き作りになるんです」
次の部屋は「血液をソースと麻酔薬に入れ替える」行程。
運ばれていくミノアが望んだ人工心肺。首だけになっても意識が残り、客の賛辞を聞きながら…

やっと追いついた時、ミノアは大皿に乗せられて祭りの会場へ運ばれていくところだった。
銃を持って追いかける主人公。お祭りの山車みたいな賑やかな車の上にいて、主人公の声が届かない。
「飛び降りろ!後は僕に任せるんだ!」「来てくれたの?なあに?聞こえないわ」
「早く!飛び降りろ!」「そうでしょ。私おいしそうでしょ」
「助けてくれと言ってくれ!」「お皿の近くに座ってね!いっぱい食べてね!」
山車は会場に入って行き、残される主人公。
華やかな舞台の上で大観衆に手を振る誇らしげなミノア。
「入るの?入らないなら締めるよ」と祭りのドアが主人公の前で閉ざされる。

救助船の中で主人公が
「帰りの宇宙船の中で待望のステーキを頬張りながら僕は泣いた」
というモノローグで終わり。


273 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/27(土) 01:37:03
>>254
後味悪いとは思わない
それぞれ民族の文化は尊重されるべきと思うから…
民族と歴史の誇りに満ちて死んだミノアは幸せなのではないかと思う

276 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/27(土) 02:00:18
>>273
作中でもミノアは最後まで幸せそうに描写されてるよ。
この話のキモは、
主人公の地球人が自分本意の感覚を最後まで捨てきれずに、
相手の文化に自分の感覚で踏み込んで、勝手に騒いで空回りしてるところ。
ミノアの幸せそうな描写やウシ人間社会の徹底して冷静な描き方から、
作者は主人公のそういう滑稽さをこそ描こうとしてるんだと思う。

282 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/27(土) 03:47:17
>>276
自分本意の感覚ってのを捨てきれずっていうか、捨てる気はなかったように見えるんだよな…

 

ミノタウロスの皿 (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)
ミノタウロスの皿
(小学館文庫―藤子・F・不二雄
〈異色短編集〉)
藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 1 (藤子・F・不二雄大全集 第3期)
藤子・F・不二雄大全集
SF・異色短編 1