老媼茶話/八天幻術

628 名前:「八天幻術」1/4 :2009/02/21(土) 02:46:29
江戸時代の奇談集『老媼茶話』から「八天幻術」

ある旗本に仕える下っ端侍に佐久間作左衛門という男がいたが、
博打にのめり込んで無一文になってしまった。
やむなく主人が所蔵する鉄砲を盗み出し、金に換えて衣服など整え勤め続けていた。
主人は鉄砲の所在について厳しく詮索したが、ついに知れることはなかった。


629 名前:「八天幻術」2/4 :2009/02/21(土) 02:47:37
その頃、近くに八天通明居士という霊能力者がおり、評判になっていた。
主人は通明居士を呼び寄せ、盗まれた鉄砲の在処を占わせてみた。
通明居士は家来をすべて広間に集め、印を結び呪文を唱えながら
幣帛(神社にあるような紙のヒラヒラを付けた棒)を高く掲げて
「この幣帛が倒れた前にいる者が盗人である」と言い、家来一同の中に投げ出すと
その幣帛はひとりでに人の間を飛びまわり始めた。

630 名前:「八天幻術」3/4 :2009/02/21(土) 02:48:50
作左衛門は「きっと自分の前で倒れるだろう。そうなったら幣帛をへし折って
通明居士に掴みかかってやる」と思い、幣帛の動く様子をじっと睨みつけていた。
幣帛は作左衛門の前でいったん倒れそうになったが持ち直し、
同じく下っ端の家来である、愚直で臆病な児嶋文右衛門という男の前で倒れた。
これで文右衛門が盗人と決まり、翌日裏庭で処刑されることになった。

631 名前:「八天幻術」4/4 :2009/02/21(土) 02:50:33
文右衛門がしょんぼりと裏庭に連れて行かれるのを見た作左衛門はたまらなくなり、
「鉄砲を盗んだのは私で、文右衛門に罪はありません。私は博打で負けて
しょうがなく鉄砲を盗んで売り払いました」と上役に訴え出た。
上役から話を聞いた主人は「幻術に惑わされて無実の人間を殺すところであった。
作左衛門の仕業は不届きではあるが、名乗り出た勇気に免じて許す」と言い、
作左衛門の給金を増やして上の位に昇進させてやった。
文右衛門は「臆病だからそんな目に遭うのだ」とクビになり、江戸から追放された。

なんか、みんなダメじゃね?


633 名前:本当にあった怖い名無し :2009/02/21(土) 10:51:31
>>628-631
乙。
マジでみんなダメだな。
許して昇進させるなんて有り得ん。

634 名前:本当にあった怖い名無し :2009/02/21(土) 10:57:54
上の人間がいつも下の人間のやらかしについて適切な処置を行えるとは限らないという話、かね

636 名前:本当にあった怖い名無し :2009/02/21(土) 13:47:56
でも、使用人や官吏としては、
作左衛門はダメダメで文右衛門の方が使えるけど、
サムライとしては、
「幣帛をへし折って通明居士に掴みかかってやる」って作左衛門は
立派な?サムライ魂持ってそうで、
しょぼんと連れて行かれる文右衛門はダメダメじゃない?

このスレでよく出る「赤まんま」の話
(赤飯の材料を盗んだと疑われた農民が、
食べたのは赤飯ではなく赤蛙だと証明するために娘の腹を割いた話)でも、
農民ですら盗人の汚名を受けたら娘の腹を掻っ捌いてでも
無実を晴らそうとするのに。


637 名前:本当にあった怖い名無し :2009/02/21(土) 13:59:26
農民じゃなくて武士の娘じゃなかったか、それ。

638 名前:本当にあった怖い名無し :2009/02/21(土) 17:03:42
>>628
幣帛タンがへし折られたくない一心で嘘ついたのかどうかがすげー気になる

639 名前:本当にあった怖い名無し :2009/02/21(土) 17:27:47
>>636
> サムライとしては、
> 「幣帛をへし折って通明居士に掴みかかってやる」って作左衛門は
> 立派な?サムライ魂持ってそうで、
> しょぼんと連れて行かれる文右衛門はダメダメじゃない?

それのどこがサムライ魂なの?
お前は侍を何だと思ってるの?


640 名前:本当にあった怖い名無し :2009/02/21(土) 18:29:14
潔く切腹、なんて侍は幻であると