蟲師/泥の草(漆原友紀)

837 名前:1/2 :2009/04/05(日) 18:03:51
漆原友紀の漫画「蟲師」から「泥の草」
独自の設定と雰囲気重視な話なんで、わかりにくかったらサーセンw

舞台は"鎖国を続けている日本"をイメージした和風世界。
この世界には「蟲」と呼ばれる架空の生物(妖怪か霊みたいなもの)が存在していて、
蟲の生態や対処法について研究をしている人々を「蟲師」と呼んでいる。
主人公もそんな蟲師の一人で、
各地を放浪しながら、蟲と人との係わり合いを描いてく…ってのが全体のストーリー。

ある時、主人公は山間の里を訪れる。
そこは「死者を山に帰す」という特異な因習が古くから伝わる里だった。
これは死人が出ると火葬や土葬などを行わず、山中の沼地に死体を置いて葬るというもの。
こうするとやがて骸は骨まで消え失せ、着物だけがその場に残される。
ただし骸が消える一週間ほどの間は山に入る事が禁忌とされ、
守らないと村中に病が広がると言い伝えられていた。

しかし最近になって、その掟を破った者がいたらしい。
それと同時に里の人々は脚にイボと麻痺が発生する奇病に悩まされ、
蟲師である主人公に診てもらおうと集まってくる。

よく見ると、イボは「骸草」と呼ばれる蟲の芽であった。
骸草とは名前の通り草に良く似た蟲で、動物の死体を泥状に分解しその上に生息する。
生体がこの泥を踏むと、脚に寄生しながら子株を広げ、その子株を踏んだ者は更に骸草に寄生される。
(つまり里の因習は全て骸草によって引き起こされていた)
言い伝えどおりに薬を処方してやると、骸草の芽はたちまち枯れ、麻痺も緩和された。

そんな主人公の元に、叔父を診てほしいのだと一人の少年が近づいてくる。
彼の家へ向かって叔父の脚を見ると、イボ(芽)ではなく成体の草がびっしりと生えている。
主人公は初めて見る症状に驚きつつも治療しようとするのだが、
他の人には効いた薬も叔父にはまったく効果がない。


838 名前:2/2 :2009/04/05(日) 18:05:03
詳しく話を聞くと、掟を破り山へ入ったのはこの叔父と少年だった。
その時山に帰されたのは少年の実父(=叔父の弟)で、供養するために叔父が少年を連れ出したらしい。
そこで叔父と少年が見たものは、辛うじて人の形を留める泥の塊と、そこからびっしり生える骸草だった。
掟を破ったから叔父の症状は他より重いのかと推理する主人公。
しかし同じ条件である筈の少年の症状は、他の人々とほとんど変わりない。
考えた挙句、主人公はひとつの可能性に気がつく。

少年に席を外してもらい、叔父と二人で対面する主人公。
彼が考えた可能性とは、骸草は死臭に反応して成長するのではないかというものだった。
実は叔父は、事故死に見せかけて弟を殺害していた。
そのせいで身体から死臭が消えず、結果死体に対するのと同じよう骸草に成長してしまったのではないかと。
症状を抑えるには、死臭がなくなるまで洗い清めるしかない。
そう助言して主人公はその場を後にする。

一人川原へと向かい体を洗い始める叔父。
そこへ少年がやってきて、思いつめた様子で「父さんを殺したの……?」と聞く。
どうやら先ほどの主人公との会話を聞いてしまったらしい。
殺人の事実を知られ、叔父は思わず少年へと掴みかかる。
しかしその手を振り払われてしまったため、バランスを崩して川の中に落ちてしまう。
足が麻痺している叔父は溺れながら少年に助けを求め、やがて水中へと沈んでいった。

後日。主人公が叔父の沈んでいった川原を訪れる。
そこにあるのは、ちょうど人の形に生えた骸草。
「山にも帰れなかったのか…」そう呟いて、主人公は里から去っていく。

短く纏めると「弟を殺してしまった兄が、弟の息子の前で死んでしまう話」で後味スッキリに見えるんだが、
叔父が弟を殺した理由も理由だし(叔父の娘を弟が誤って死なせてしまい。あげく十年近く黙っていた)
少年は叔父の優しさを最後まで信じようとしてるから、なんか余計に後味悪かった。

 

蟲師(8) (アフタヌーンKC)
蟲師(8) (アフタヌーンKC)