黄色い大地

640 名前:本当にあった怖い名無し :2009/09/27(日) 03:34:24
中国と言えば「黄色い大地」って映画も何とも言えない後味だったな。

1930年代。八路軍(共産党の軍、日本と戦った。つまりエリートというかなんというか、
当時はゴールドセイントみたいな感じ)の若者が全国を回って地方の歌を集めるような仕事をしていた
(当時の切迫した情勢からして眉唾だが、実施に歌詞を共産党風にアレンジして歌わせようとしたとか、諸説あり)。
そのために陝西省の砂漠に住んでいる少数民族の村にやってきた。
最寄の水源である黄河とは数キロも離れていて、水は一日に運べる量以上は使えない。
風呂に入るのは生誕時、結婚、死後の三回だけという彼等の生活はもちろん非常に過酷だ。

若者は一軒の民家に泊まりこむ。偏屈そうな父親と、10代半ばの娘、その弟と慎ましやかに暮らしていた。
娘はとても歌が上手だ。その土地で生まれた歌を教わる過程で、当然のように村の習俗にも話が及んだ。
「娘の嫁ぎ先は親が決める」という父親に対して
「都会では自分達で決めます。共産党では女性も戦います」などと返す若者。
そのインテリジェントにソフィスティケイトされた姿を見て娘は淡い恋心を抱き、弟も彼に憧れを抱く。
「私も共産党に入りたい」という娘に、若者はいつか迎えに来ると約束する。

しかしある日、娘は米一袋と交換に妻を亡くした男のもとへ嫁ぐことになる。
父親としても断腸の思いだ。しかしこうしなくては生きていけない。では当然のように行われてきたことだ。

新婚初夜、娘は初めて自分の夫の顔を見て絶句する。歯が抜け、まぶたが垂れ落ちた老人だったのだ。
深夜、娘は黄河に向かい船を漕ぎ出す。都会に出るのだ。若者に連れられ、都会で自分の道を見つけるのだと。
不慮の事故なのか、元よりそのつもりだったのか、船は沈み、娘は命を落とす。
翌日、若者が村を去る日だ。姉の訃報を聞いた弟は若者を追いかけて走る。砂漠では雨乞いの儀式の真っ最中だ。
遠くに若者の姿が見える。弟は群集の中を泣きながら走る。儀式の歌と騒音で、弟の声は届かない。

終わり。

 

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