素直な戦士たち(城山三郎)

639 名前:素直な戦士たち1/2 :2009/10/24(土) 00:11:42
小説「素直な戦士たち」
30年ぐらい前、受験戦争真っ盛りの時代に書かれたものなので、今となっては多少違和感もありますが。
適当に補完しているので、違っていたらごめん。

物語は、平凡なサラリーマンの青年が見合いをするところから始まる。
見合い相手の女性は、開口一番に「あなたのIQはおいくつですか?」と尋ねてきた。
面食らいながらも子供の頃に知能テストで出した数値を答えると、「高いわ!すてき!」と大喜び。
訳を訊くと、自分が産んだ子供に英才教育を施し、東大に合格させるのが夢なのだと言う。
「私自身にはたいした経歴もないけれど、一人のエリートを育て上げる。それってすごくないですか?」
青年は、目を輝かせて夢を語る相手に、これまで自分が知り合った女たちにはない魅力を感じる。
つき合ううちに「この女と一緒に夢を叶えてみたい」という気持ちが強くなり、二人は結婚した。

新婚早々から、夢を実現するための計画が実行に移される。
受験戦争を勝ち抜くにはやはり男の子の方が有利と、男子を授かるためにセックスの体位まで指定する妻。
その意向は知り抜いた上で結婚したのだから、夫は閉口しながらも協力せざるを得ない。
努力の甲斐あって男の子が生まれ、妻は熱心に教育に励んだ。
ある晩、「頭の良くなる音楽」を聞かせながら赤子を寝かしつけている妻がいかにも幸せそうに見え、
たまらない愛おしさを感じた夫は、そのまま妻を押し倒してしまう。
かくして、当初の計画にはなかった次男が誕生する運びとなった。
東大合格という使命を担った長男とは違い、この子は健康でさえあればいいと「健次」と名付けられた。


640 名前:素直な戦士たち2/2 :2009/10/24(土) 00:15:31
名門幼稚園のお受験、塾通いと、母親と長男は一体となって奮戦する。
父親は、その様子を「やり過ぎだ」と思いつつも咎めだてすることができず、
母親からの待遇が明らかに違う次男をなるべくフォローしてやるしかない。
多数の生徒を東大に送り込む進学校に長男が入学する頃には、母親はもはや長男の下女と化していた。
次男はガリ勉をすることもなくそこそこの成績をおさめ、意外にも長男と同じ進学校に合格した。
進学校では底辺の成績であるものの、友人との付き合いも多い次男は、
母親にべったりで勉強することしかしない長男を「兄貴はオカシイよ」と批判する。
必死で勉強に励む長男の方も、優秀な生徒たちの集まる学校では中の下程度の順位しかとることができず、
異常なまでに神経質になって母親をオロオロさせる毎日だった。
思うように成績が伸びない焦りは憎悪へと変わり、それは特に、自分を馬鹿にする弟に向けられた。
長男は、受験勉強もそっちのけで、密かに弟を抹殺する計画をたて始める。

会社で働く父親のもとに、ある日、病院から連絡が入った。
「家では勉強に集中できない」と言う長男に借り与えた賃貸マンションの一室で、
息子二人がベランダから墜落して大ケガをしたというのだ。
改装したばかりのマンションで、ベランダの手すりがまだきちんと固定されておらず、
工事が済むまで気をつけるように業者から言われていたことを、長男はよく知っているはずだった。
長男は頭を強く打って意識不明。手足を骨折しただけですんだ次男は、
「兄貴は馬鹿だよ。ベランダで物に躓いて、叫び声を上げながら俺に飛びかかってきたんだ」と言う。
医者は、長男の命に別状はないが、今後過度のストレスを与えるのは禁物だと告げた。
放心状態で長男の枕元に座り込んだ母親がポツリとつぶやく。
「IQは健次の方が高かったのよね。あの子の子供なら…」
その言葉を聞きながら、父親の胸にはやるせない無力感が広がっていった。


641 名前:本当にあった怖い名無し :2009/10/24(土) 00:37:13
まさしく毒親
母親も父親もどっちもな

642 名前:本当にあった怖い名無し :2009/10/24(土) 01:00:52
>>639-640

後味悪かった
次男は自立できるようになったら一切母親に関わらないようになってほしい

643 名前:本当にあった怖い名無し :2009/10/24(土) 02:20:03
>>639-640乙

>「私自身にはたいした経歴もないけれど、一人のエリートを育て上げる。それってすごくないですか?」

種がまともで、栽培法にいくら気を使ったとしても
そもそも畑が(ry


644 名前:本当にあった怖い名無し :2009/10/24(土) 03:16:34
乙です
現代でも十分通用する話ですよ
テレビのエチカの鏡で東大に入れる子育て法とかやってたけど、
人間千差万別なんだからマニュアルなんか絶対ないよなあ

 

素直な戦士たち (新潮文庫)
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