親愛なるエス君へ(連城三紀彦)

573 名前:本当にあった怖い名無し :2010/01/20(水) 14:45:05
連城三紀彦「親愛なるエス君へ」 ※猟奇表現あり注意

フランス人青年の主人公は幼い頃から人肉食に強い憧れを抱いていた。
このままではいずれ事件を起こすに違いないと将来を悲観し自殺も考えたが
どの道破滅ならやはり夢を叶えたいとそれ以来良識的な仮面を被りつつ生贄となる人間を探していた。
留学中の日本人女性とデートする内に生贄は日本人女性が良いと感じるようになり大学卒業と共に東京に渡った。

その2年後、パリで留学中の日本人男性Sが白人女性を殺して食べるという事件が世間を賑わせる。
主人公は自分がパリに留まっていれば、きっとその犯人と友達になれたのにと悔やんだ。
と同時にSが被害者を全て食べ尽くすことなく逮捕されてしまったことを不満に思っていた。
肉の一片すら残っていない状態こそ、主人公の理想であった。
それでも事件に鼓舞され彼はますます生贄探しに勤しんだ。
東京で3人ほどガールフレンドを作ったがいずれも門限付きで一晩でも帰宅しなければ騒ぎになる。
そうなればまだ肉が残った状態で事件が発覚しかねない。そこで全員リリースした。

そうして辛抱強く生贄の出現を待ち続けたある日、彼がひき逃げを目撃した。
被害者に駆け寄ろうとした彼もまた逃走する車に轢かれ足を骨折する。
大急手当てをしてくれあた病院から大病院に転院すると、診察に現れた女医がその時のひき逃げ犯だった。
彼は神に感謝した。退院の日、主人公は女医に
「ひき逃げ犯の顔をはっきり覚えているが通報しない。あなたを愛してしまったから」と告げた。
妻子持ちの同僚との不倫に疲れていた女医は主人公の真意も知らず一石二鳥とばかりにその愛を受け入れた。


574 名前:本当にあった怖い名無し :2010/01/20(水) 14:47:45
女医が不倫相手と別れ数日休暇を取ることにしたと言い出した日、
ついに夢を叶える時が来たと内心歓喜した。
自宅に招き、彼女が寝付いたところで裸にして風呂場に運んだ。
そして目を覚ました彼女の前で持っていた手斧を振り下ろした。

3日後。主人公は友人知人を招き手料理を振舞った。
来客の中には美食家もいたが料理に使われているのが何の肉が言い当てられず
「ラム肉を干して独自のスパイスに・・・」などという出鱈目な調理法に真面目に聞き入ってる。

けれどその正体は、主人公自身の肉だった。

彼は「人に食べられたい」という欲求をずっと抱え続けていたが加害者になってくれる人間がいなかった。
彼のために手を汚してくれる生贄をずっと探し続けてきたのだ。
骨折した足が治っていないフリをして車椅子に乗る主人公の、
ひざ掛けの下が空だということに気付く客はおらずみな料理に舌鼓を打つばかり。

生贄に女医を選んだのは適切に処理してくれそうだったから。
ひき逃げ犯に罰を与えるという口実が主人公の罪悪感を和らげてくれてもいた。
両足は自分で切り落とし、残りは女医が処理して食べるように頼んだ。
目撃者を確実に消滅させられて好都合であるはずだが女医は頑なに拒否したので
調理して必ず他人に食べさせるということで折り合いをつけた。

望みが完全に叶う前に、彼は今回の経緯を手紙にしたためた。あて先はSの現在の居所だ。
特殊な場所なので検閲を受け事件が表沙汰になるかもしれない。
そうすれば女医との約束は破られることになるがひき逃げ犯なのだから仕方が無い。
Sが自分を食べてくれれば需要と供給が一致したのに神は小さな悪戯で二人をすれ違わせた。
主人公自身はこの先を見届けることは出来ないが、
彼のことはSと同国の誰かが代わりに食べてくれるだろう。おわり。

自業自得だけど女医頑張ったのにふんだりけったり。
食べたい人より食べられたい人の方が被害者多くて傍迷惑なんだな。


575 名前:本当にあった怖い名無し :2010/01/20(水) 16:34:43
何年か前、食べたい人と食べられたい人が
ネットの出会い系で知り合って実行して逮捕されたよね
たしかドイツだったと思う。どっちも男だった

576 名前:本当にあった怖い名無し :2010/01/20(水) 17:46:34
S君が執着していたのは白人の「女性」だから
出会えていたとしても食べては貰えなかったと思う。

577 名前:本当にあった怖い名無し :2010/01/20(水) 17:58:50
なんてこったいw

578 名前:本当にあった怖い名無し :2010/01/20(水) 18:10:25
>>576
皮肉なオチだなw

579 名前:本当にあった怖い名無し :2010/01/20(水) 18:56:01
S君って、察するにパリ人肉事件の佐川一政がモデルなんだよね?

なんか、実際にはカニバリズムの性癖は持っておらず
フランス警察に対する欺瞞だった、って説があるようだけど。