ホーム » 小説 » 小説/さ行 » ジェリーフィッシュ(明野照葉)

600 名前:1/3 :2010/01/22(金) 03:36:43
タイトル忘れたけど作者名に葉って字が入ってた気がする
中身もうろ覚え

主人公はプレイボーイなイケメンで、夏に行われる趣味の集まりにも毎年違う彼女を連れだっている。
主人公の趣味は水上オートバイだったか、なんか海上での乗り物系のやつで、
特に金持ちでもない一般人がやるにはやや値の張るスポーツなので、仲間うちでお金を出し合っている。
そんで、季節外の時はその乗り物は、海辺の街に住む一家のところへ、好意に甘えて置かせてもらっている。
かといって見返りがないわけではなかった。
そこの一家は金銭などは望まなかったが、一家の一人息子も遊びにくわえてやってほしいと言っている。
毎年主人公たちはその30代ぐらいの一人息子と海辺で遊ぶようになった。
主人公とスポーツ仲間たちは、その一人息子のことを「くらげ」と呼んでいた。

主人公は新しい彼女にくらげを紹介した。
彼女はお洒落で性方面には若干軽いところもある今時の女の子で、
そんな彼女がくらげを見てどんな反応をするのか主人公は意地悪く楽しみにしていたが、
彼女はくらげの顔を見ても顔色を変えたりせず、むしろとても丁寧に接した。
主人公は少し興ざめに思ったが、彼女は思っていたよりも優しい人物なのだと見直しもした。

くらげという名前の由来は、彼の顔にあった。
彼は元々は健康的な青年で、主人公らが嗜んでいるのと同じスポーツを好んでいたのだが、
水上で事故に遭い、健常者ではなくなってしまった。
その自己のせいで顔は醜く歪んで、まるでくらげのようなフォルムになった。
まともに言葉も話せず、表情はいつも弛緩していて、いかにも脳足らずな微笑みを常に浮かべていた。
好んで彼に近づこうとする者はいなかったが、一応の意思疎通はできたし、
暴れたりもしないので、毎年仲間にしてあげていた。
事故の恐怖感が残っているのか彼はけして海中に入ろうとはしなかったが、
波際で遊び相手になってあげると楽しそうにしていた。


601 名前:2/3 :2010/01/22(金) 03:38:26
主人公の彼女は、今時な都会の子に見えるが実は地方出身だという。
彼女が生まれ育った村では「くらげ」のような人をありがたがる風習があるのだという。
人間として欠けた部分がある者は、その分、別のなにかが神に近づいているのだという考えに基づくものだが、
要は障害者に優しく接するための教えだった。彼女の村では障害者を「まれびと」と呼ぶのだという。
彼女はくらげに親切に接し、くらげも他の人に対するよりも彼女に対しては心を開いているようだった。

主人公は、あんな障害者になってしまってもくらげには性欲が残っているのだろうかとふと思った。
彼女への懐きようは、単に親切にしてくれた者だからではなく、恋愛感情も多分にあるのではと考えたのだった。
ある日、スポーツを終えた彼女がシャワー室に入って行った。
主人公は、くらげがシャワー室の近くにいることを確かめた後、
自分もシャワー室に入っていき、わざとドアを少しだけ開けておいた。
シャワー室の中で主人公は彼女とセックスして、彼女に声を上げさせた。
彼女からは死角になって見えないようだったが、主人公からは、
声につられてやってきたくらげがシャワー室を覗きこんでいるのが見えた。
主人公に気づかれたことを察してか、くらげは慌てて音を立てながらその場を走り去って行った。
あえぎ声に反応するなんて、あんな奴でも性欲が残ってるようだと主人公は笑った。

主人公と彼女はしばらくシャワー室にこもっていたが、他の仲間たちに早く出てこいと呼びだされた。
なんでも、先ほどくらげがすごい勢いで走りだし、その勢いのままに海中に入り、
遠くの方まで泳いで行ってしまったのだという。
主人公たちが見ると、遠くにくらげの頭がわずかに見えた。
今まで海に入ろうともしなかったのに何故か、みんなはくらげに戻って来いと呼びかけた。
彼女が呼びかけたときだけ、振り向くかのようにくらげのシルエットが揺らめいたが、
やがてくらげの姿は見えなくなった。
その後、海上保安隊などが捜索に出たが、くらげは見つからなかった。


602 名前:3/3 :2010/01/22(金) 03:42:03
彼女は、シャワー室にいた時に物音を聞いたが、あれはくらげの発したものだったのではないかと言ってきた。
主人公は会話を交えるうち、うっかりして、くらげの反応を見るためにセックスしたのだと暴露してしまった。
彼女は、主人公のせいでくらげは自殺したのだと責めるように言う。
薄々と自分のせいではないかと思っていた主人公はそう言われてギクリとしたが、
まともな思考回路も失っているような障害者であるくらげが自殺を選ぶわけがないのではと反論した。
「どうしてあの人がまともな思考を失ったと思えるの?顔があんな風になるほどのひどい事故にあったんでしょう
 言葉を発せなくなっても、表情もまともに出せなくても仕方がない 
 だからって心がなくなったとまでどうして思えるの」
他の人たちは腫れものにふれるように、あるいは冷やかし半分にくらげと接していたが、
くらげと対等に対話するようにしていた彼女は、
くらげの頭の中までが歪んでいるわけではないと知っていたのだった。
くらげはすっかり意思を失っていると思っていた主人公は、彼女の言葉にショックを受けた。
「ここに来たのははじめてだから、くらげというあだなの意味がずっとわからなかった
 でもあれは蔑みの言葉だったんだ 貴方はまれびとを蔑んで自殺に追いやった、私を共犯にして
 まれびとはずっと海にいる 私はもう海に行けない、私がまれびとを殺したから」
彼女はそんな感じのことを言って泣き出し、主人公との仲はご破算になった

その翌年、主人公はまた別の彼女を連れてまた海にやってきた。
乗り物を置かせてくれる家の人は、くらげの死亡理由が主人公にあるとは知らないので、
やつれぎみだが相変わらずよくしてくれた。
海中に入っていた主人公は、足がなにかチクっとするのを感じた。新彼女も同じく痛みを訴えた。
「やだっ、まだそんな季節じゃないのにクラゲ?」
その言葉に、主人公も仲間たちも凍りついた。
ただでさえ昨年のくらげの事件を引きずって後ろめたさを感じていた彼らは、
その日を期に、もう海にはこないようになった。

くらげがどうしてもやる夫で脳内再生されてしまうが、
彼女の言うとおりに健常な意識は残っているのにそれを表現できないだけで池沼扱いされてたら、
生き地獄だったろうなーと切なくなった


622 名前:本当にあった怖い名無し :2010/01/22(金) 17:23:00
>>600
明野照葉の「ジェリーフィッシュ」だな
昨秋に出た文庫に収録されてたの読んだんで思い出した

しかしタイトル忘れてて、うろ覚えとかいいながらよくそこまで内容を覚えてるねw


624 名前:本当にあった怖い名無し :2010/01/22(金) 18:20:12
>>602

シリアスな話だなーと思ってたら、最後の3行の
やるおのせいで笑いしか出てこんではないか。


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