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239 名前:本当にあった怖い名無し :2010/03/04(木) 01:04:15
ファンタジー小説のうちの1エピソード

少年はいいとこのぼっちゃんで、基本的には屋敷にこもって暮らしていた。
父が地方に遠征することになり、付き添う事になった少年は久々に領地の外へ出た。
やって来た辺境の村には少年と同年代の子供たちも多くいたが、育ちが違いすぎてあまり仲良くなれなかった。
誰に対しても愛想のない少年のことを、お高くとまっていると口さがなく言う者もいた。
それでも、仮の宿を提供してくれている家の子供とだけは少しは打ち解けることができた。
その子供・Aは少年と同い年で、なにかと少年の世話を焼いてくれた。
子供たちのガキ大将的な者は、少年に取り入ろうとしているとAにも絡むようになった。

この村はブドウの産地であった。村で出来るブドウは二種類あった。
一つは、果実酒の原料になるもの。もう一つは、勝手に生えてくる強い毒性を持ったもの。
二つの姿はよく似ていた。大人たちは区別をつけることができたが、子供では難しかった。
子供たちはしばしば、それらのブドウを使って度胸試しをする。
一粒口に含み、毒性のあるものか否かを探るというものだった。
恐れて口に含む事もできない者、毒性のないブドウを恐怖のあまり吐きだす者は臆病者と笑われる。
毒性のあるブドウは飲みこめば死に至るほどのものではあるが、
口に含むだけならば、せいぜい口内がしばらく痺れるだけであった。

少年とAが一緒にいるところにやってきたガキ大将は、二人にブドウをつきつけた。
臆病なAはそんなことはするべきではないと言うが、
以前からのガキ大将の挑発的な態度を嫌っていた少年は受けて立った。
ブドウを口に含めばなんの刺激も襲ってこなかったので、少年はそのまま飲みこんだ。
その姿を見て、大丈夫そうだと判断したAは、急いで同じ房から実を取り、それを飲みこんだ。
途端に、Aは倒れ、苦しそうに痙攣した後に亡くなってしまった。

少年はそれまで自分で知りもしなかったが、
庶民とは違う特殊な生い立ちから、実は毒の類がまったく効かない体になっていた。
だからブドウの毒による口内の刺激すら感じず、その様子に安心して油断したAを死に至らしめてしまった。
身分を盾に無理矢理食べさせたのでは、そう噂されながらも、少年は弁解も出来ずに村を去って行った。


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