同窓会
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361 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/19(日) 07:13:52
- タイトルは忘れたけど、読み切り漫画。
作家の中年男性は、ある日、子供の頃の転校で短い期間だけ過ごした町の旧友と再会する。
思い出話で盛り上がり、旧友は皆も集めて同窓会(クラス会)を開こうと提案する。
幹事ら3人程の旧友と連絡を取り合いながら、作家は忙しい日程に都合をつけて出席の段取りを整えた。
作家は、年甲斐もなく内心ちょっとドキドキしていた。
短い間だったが、その町には淡い初恋の記憶がある。
これといって接点はなかったが、クラスに活発で可愛い女の子がおり、魅かれていつも見つめていた。
彼女は今どうしているのだろうと、同窓会が決まってから気に掛かっていた。ところが、いざ出席してみると、クラスの顔ぶれにほとんど記憶がなく、彼女も来ておらず、
幹事3人以外との話は全く盛り上がらなかった。
いかに子供の頃の短い期間とはいえ、お互いこんなに覚えがないものなのかと落胆し、
作家として多少なりとも有名になった自分を皆は知ってくれているだろう自惚れていたのを恥じた。
自分以外のクラスメート同士は自分の知らない思い出話を楽しんでおり、非常に場違いな気がした。
作家は、例の女の子の近況をそれとなくクラスメートに尋ねてみた。
が、皆はそんな子はクラスにいなかったと首をひねり、そんな筈はないと作家は混乱する。
転校が多かったから別の町と混同していたのか?と一瞬自問するが、確かにこの町だった。惨めな気持ちのまま早々に同窓会を切り上げ、作家は帰宅する。
こんな事なら同窓会なんてやらなければ良かったと後悔した。
それにしても、確かに居たはずの彼女の存在は、一体どこへ消えてしまったのだろう?
彼女は自分だけに見える座敷童のようなものだったのだろうか?、と
すっきりしない気分が残り、悶々とした日々を過ごした。
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362 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/19(日) 07:15:36
- それからしばらく経った頃、部屋の模様替えをすると言って妻が家具をあちこち動かしていた。
ふと床の上に散らばされたアルバムをめくってみると、妻の子供の頃の姿は現在とは似つかない
あの少女と瓜二つ、いや、そのものと言ってもいいものだった。
だが、妻は大人になってから出会った自分とは無縁な地方の出身者で、
年齢も自分より5つほど年下だから同級生などではなく当時は幼児だったはずだ。
妻に聞いても、当然、子供の頃に自分と会ったことなど無いと言う。
親戚の中にも、あの町にいた女の子はいないそうだ。作家はふと、得心する。
「彼女」は、確かに実在していたのだろう。だが、それは自分の記憶の中にある「彼女」ではない。
現地を離れ幼い日から長年経るうちに、自分の中で思い出を美化し、
初恋の少女の姿を実際とは乖離した「自分の理想の女性像」へと置き換えてしまっていた。
そして、大人になった自分は、その「理想の女性」に出逢った。だから結婚した。
ゆえに妻の子供の頃の姿は、自分の記憶の「彼女」と瓜二つだったのだと。さらに数日後、旧友から詫びの電話が掛かってきた。
なんと、同窓会はクラスを間違えていたのだと言う。
旧友3人は自分のクラスの皆を集めて同窓会を開いたが、
実際には主人公と3人は隣のクラス同士の仲良し仲間で、主人公が所属していたのは別の学級だった。
記憶が曖昧だったために誤ったが、同窓会開催の噂を聞いた本当のクラスメート達が
どうして自分は呼んでくれなかったんだと後から問い合わせが殺到したという。
旧友が名前を挙げていくそのクラスメートらの名前には、いくつも覚えがあった。
名前と同時に、彼らとのいろいろなエピソードが蘇えってくる。
自分の幼少期の記憶は失われてはいなかったんだとホッとした作家は、
もう一度ちゃんとしたクラス会をやり直すかと問う旧友に
今また忙しい中で一から同窓会の準備をし直すのは大変だから、と丁寧に辞退する。
本物のクラス会を開けば、その中に「彼女」も居るだろう。
だが、自分の中の彼女像とは違う中年女性になっていて、彼女も彼女なりに幸せにやってるだろう。
強いて会う必要はないし、その方がかえって思い出を壊さずに済む。
旧友との話を終えて、作家は静かに受話器を置いた。
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363 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/19(日) 07:16:20
- …キッチリ落ちはついていて、話もまとまってはいるんだけど、
最初ややオカルティックに座敷童のような謎の少女の正体を探る謎解きっぽい雰囲気だったのが
「記憶の中で美化されていた」という卑近な結論で肩透かしを食ったような気分だったのと、
同窓会を開くのを間違えたというお粗末な経過で、
なんだか前提条件の破綻した推理物を解かされたようなスッキリしない感じが残った。