ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その116 » 疎開っ子数え唄(巴里夫)

461 名前:疎開っ子数え歌1/3 :2010/09/23(木) 15:38:28
中学校の図書室にあった戦争もの漫画です。記憶をたどりながら書いたので違うところもあるかも
この話に出てくる疎開っ子数え唄は歌詞忘れたけど、
お国のためにがんばれ、勝つまで耐えろ、不満を言うなみたいな内容です。

戦火の激しくなった東京を離れ田舎に集団疎開することになった小学生の美保子は
生徒代表であいさつの作文を読み、班長を務めるほど真面目な優等生だ。
軍人だった父はすでに戦死して無く、大好きな母と幼い妹と別れるのは寂しかったが
仲良しの班のみんながいるから平気だと思った。

お寺での集団生活は毎日竹やり訓練に貧しい食事と非常に厳しいものだった
みんな疲弊する中で立派な軍人だった父を誇りに思う美保子はめげず、不満を言う子に注意し、
担任の先生に「もっと厳しく訓練してくれ」と率先して意見する。
が、それは心に余裕のなくなった他の子供たちから見れば『いい子ぶって嫌な子』と捉えられてしまう。
(しかも美保子は体が虚弱で早々と日射病で倒れたりするから不満が倍増)
やがて仲良しだったグループのA子が筆頭になり、その腰ぎんちゃくのB子、
優しいが気が弱く言いなりになってしまうC子・D子が美保子を苛め始めるが、
自分は何処も悪くないと思っている美保子は耐え続ける。

ある日みんなの意地悪で重い物資を荷台で一人で運んでいる最中にはずみで転がり落ちたさつま芋を
あまりの空腹のためつい魔が差し鞄に隠してしまう。
だがすぐに目ざとく美保子の挙動を見抜いたA子にみんなの前で暴露されてしまった
目をかけてくれていた先生にも見限られ、班長を下されてしまい新班長になったA子に
ますます酷く苛められるようになる。

そんな時疎開先に一日だけ子供たちの親が来てくれることになった、
優しい母と久しぶりに再開し喜ぶ美保子
子供に食べ物を持ってくるのは禁止されていたが機転を利かせた母が秘密のお手玉をくれた
『中身は砂糖やきな粉をまぶして炒った大豆よ、遊んだ後におあがりね』と
そのお手玉を取りながら疎開っ子数え唄を歌い耐え続けるのだった。


462 名前:疎開っ子数え歌2/3 :2010/09/23(木) 15:40:04
だが戦火はますます激しくなりお寺の暮らしもどんどん厳しさを増していく、
それに加え終わらないA子たちのいじめと美保子の神経はすり減っていく
たまらなくなった美保子はついに母へ助けを求める手紙を書いた。
『もう限界です、お母さん迎えに来てください、お願いです・お願いです・お願いです・・・』と
それを読んだお母さんがあんなに気丈で我慢強い子がここまで言うのだから余程の事ね、
お姉ちゃんを迎えにいこうね。と妹と話したその夜、東京大空襲にみまわれる。

数日後先生から大空襲の事を聞かされ動揺する児童たち。
美保子は先生に母と妹は無事かとすがりつくが心配ないと一蹴される。
それでも気が気でなく言いようのない不安に陥る美保子にC子とD子が血相を変えてくる
「大変よ!A子があんたのお手玉ばらして喰ってるよ!」
部屋へ駆けつけると匂いを嗅ぎつけたA子とB子が中身の大豆を貪り食っていた、
悲鳴を上げ殴りかかる美保子
だまれ食ってやると吠えるA子、はやし立てるB子、止めようと美保子に加勢するC子とD子
酷い有様の所へやってきた先生が制止し
「こんなくだらないもので喧嘩すんじゃない!」と大切なお手玉の残骸を蹴り飛ばす
何かが切れた美保子はその腕に噛みつき
「先生の馬鹿!お母さんの所に帰るんだ!」と叫び雨の中を駆け出していく。

だが追いかけてきた先生につかまり最悪の事実を告げられる
「東京に帰っても無駄だ、お前の母さんも妹もみんな死んじまったんだぞ」
ぶるぶると震えながら握りしめていたお手玉の切れ端を呆然と見つめていた美保子は
やがてケラケラと笑いだし、楽しげに歌うように言う
「嘘だもーん、お母さんも妹も生きてるもん、迎えに来てくれるんだもん」
自分のしでかした事の重大さに気付き正気に返るよう呼びかける先生をよそに
美保子は雨の中笑い続けるのだった。


463 名前:疎開っ子数え歌3/3 :2010/09/23(木) 15:43:07
しばらくして戦争が終わりみんなが東京に帰る日、
お寺の庭に並んだ生徒たちの顔はなぜかうかなかった、先生も暗く打ち沈んでいる。
そこへ無邪気に喋々を追いかけながら美保子がやって来た
「お母さーん早く、早く迎えにきてよ~」
あの日から彼女が正気を取り戻すことはなかったのだ
そんな彼女にA子が自作のお手玉を渡す「今までごめんね、これお詫びよ」と
自分がそれで許されると思わないが、彼女ができる精一杯のことだった。

美保子は東京へは帰らずお寺の和尚さんが責任を持って引き取ることになっていた
笑いながら受け取ったお手玉で遊びながら美保子は疎開っ子数え唄を歌いだす
それを聞くと先生はワッと泣き出し地面を掻き毟った。生徒たちも俯きすすり泣く
美保子の歌声を背にとぼとぼと歩きだした生徒たちは口々に呟く
「戦争ってなんだろう」「お国のためって何?」「何だろう・・・何だろう」
                                         おしまい


556 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/26(日) 21:21:11
>>461
巴里夫「赤いリュックサック」に収録
http://ekizo.mandarake.co.jp/shop/ja/item_s-165106.html

 

疎開っ子数え唄 (ほるぷ平和漫画シリーズ)
疎開っ子数え唄
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