ホーム » 小説 » 小説/た行 » たぶん、次の人生で(パトリシア・ハイスミス)

917 名前:1/2 :2010/12/13(月) 18:19:55
パトリシア・ハイスミスの短編『たぶん、つぎの人生で』

主人公エレノアは50代半ばで、老猫と一緒に一人暮らしをする女性。
近所から頼まれた縫い物で収入を得ている。
腕が良く、友人から値上げを勧められながらも、安価な値段で請負っているので客も多いらしく、
一人暮らしには不自由していないようだ。

彼女の前に、醜く、四角い怪物が現れる。大きな四角い頭、頑丈そうな手足。身長は2フィートほど。
お約束通り、怪物は彼女にしか見えない。猫ですら気配を感じないらしい。
「俺のことが見えるのは、この世に1ダースくらいしかいない」と怪物。

彼女が怪物に食べ物や寝床を提供し、その代わり怪物は彼女には難しい力仕事をこなしてくれる。
(納屋の重い荷物を移動したり、庭中の雑草を全部抜いたり)
怪物は毎回、「食べる必要は/寝る必要はないのだけど、あんたにつきあうよ。あんたは親切な人だな」と言い、
ちょっとしたほのぼのツンデレ同居状態がしばらく続く。

彼女と怪物とのやりとりで、彼女の半生がわかる。
18歳で父親が死去。財産も少なく、彼女は大学を途中であきらめ就職。その後母親が白血病になり、
10年間、彼女の収入のほとんどは治療費に消えた。29歳で結婚し、翌年娘にも恵まれたが、3年後夫が死亡。
夫は勤める会社が倒産してしまったこともあり、財産はほとんど残らなかった。
娘も20歳で、旅行先で雪崩に巻き込まれて死亡。
このような運に恵まれない人生ながら、彼女は「不運なのは自分だけではない」と
ずっとがんばって生きてきて、人に対しても親切なままだった。


918 名前:2/2 :2010/12/13(月) 18:23:24
ある日「あなたって、絶対に根っからの悪人じゃないわ」と言ったエレノアに対し、怪物はむっとしたようだ。
翌朝、彼女がかわいがっていた猫が、首をへし折られて死んだ。怪物が殺したのだ。
「どうしてこんなことするの?」と問う彼女に、怪物は、
「俺の性(さが)でね。俺が憎いだろ。出て行ってやるよ」
と言って出て行ってしまう。

彼女は猫を庭に埋め、一人で家に戻った。もう怪物が決して現れないことはわかっていた。
家はあまりにも静かで、彼女は夫が死んだとき以上に孤独を感じた。

数日後の夜。彼女は知人に頼まれ、病気の女性に付き添った。
新鮮なイチゴを見舞いの品として持ち、変わりなく親切に。
彼女にはその晩、自分が死ぬことがわかった。
何もしなくても死ぬと確信したが、確実にするために手首を切った。
この期に及んでも、お湯を無駄にしないように、流しで冷たい水で血を流し、
なるべくベッドを汚さずにすむように、タオルを巻いて横になった。

エレノアは彼のことを考えた。小さくて力強く、一風変わっていながら、それでいて純朴で無邪気だった彼。
彼は結局、名前を教えてくれなかった。彼女は、彼を愛していることに気づいた。

ツンデレ同居シーンがなかなか萌だったために、この結末は応えた。
それまでよくある不運の連続の人生に負けずに生きてきた主人公が、
「自分だけ」の災難に対処できなかったのかなとか色々考えた。
また、作中では彼女の結婚は恋愛よりも友愛の方が強い関係の二人が結ばれた印象で、
彼女はこの怪物にだけ恋をしたのかななどと。

 

ゴルフコースの人魚たち (扶桑社ミステリー)
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