ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その119 » 聖母の葬列(関よしみ)

115 名前:関よしみ「聖母の葬列」 :2010/12/20(月) 23:03:24
優しい両親と気の置けない友人たちに恵まれた明るく元気な女子中学生・片桐望。
望は受験を控えた中学三年だったが、静かだった町は暴走族の騒音に悩まされていた。
それでも夏休みにおっとりしたお嬢様の友人・千景に那須にある彼女の家の別荘での勉強合宿に誘われ、
ボーイフレンドの和久との仲も進展し、まぁ順調な日々を送っていた。
しかし、夏休みに入ると暴走族の悪行はエスカレートし、
リーダー(暴走族のリーダー、以下リーダー)の暴走車に吠え掛かった望の愛犬・ジュンが轢き殺されてしまう
怒りに燃えた望はリーダーの暴走車に鉄パイプを投げつけた。
挑発に乗った暴走車たちに車道まで追い回された望はパトカーに跳ねられ、意識を失う。

病院で意識を取り戻した望。「奇跡だ」と叫ぶ医者。涙を流して喜ぶ両親。
望の首には何故か長い数珠のようなネックレスがかけられていた。
望の両親は病室の隅にいた見知らぬ女性に「ありがとうございました。教祖様」と土下座し出す。
訝しがる望の傍らには何故か神父の姿をした暴走族のリーダーが立っていた。
「ジュンを返せ」とリーダーに掴み掛る望を医師が押しとどめる。
「君は2年近くも意識不明だったんだよ」
涙を流して望に詫びるリーダー。あまりの豹変ぶりにあっけにとられた望に両親が語りかける。
「お前は教団の奇跡で目を覚ましたんだよ・教祖様のおかげだ」
教祖と呼ばれた女性は望に教会でお会いしましょうと微笑むと病室を立ち去った。


116 名前:関よしみ「聖母の葬列」 :2010/12/20(月) 23:04:32
数日後、中学時代の同級生たちが見舞いに来る。
高校の制服を着た和久と千景に引け目を感じる望。同級生たちも皆、望の首にかけられた数珠を持っている。
望は和久に町中の人間がその教団に入信したと知らされる。
和久は大した信仰心を持っていなかったが、
同級生たちは熱心に教団を信奉しており、千景の傾倒ぶりはすさまじいものだった。
クールでさっぱりした和久とは違い、千景は育ちが良いせいか真面目で純粋だったな、とぼんやりと望は思い出した。
教団の知名度は高いらしく、その日の午後、「教団の奇跡で意識を回復した少女」の取材に、記者たちが望の元を訪れた。

117 名前:関よしみ「聖母の葬列」 :2010/12/20(月) 23:05:45
退院後、望は両親に連れられ、教団の本部に行く。
その日は教祖が自ら信者の汚れた血を清める日ということで大変な数の信者で賑わっていた。
その中には和久の母親もいた。短気な教育ママだった和久の母親も、
望の両親に負けず劣らず教団を信奉しており、別人のように優しい性格に代わっていた。
血の清め方というのは教祖が信者の悪い血がたまっている体の部位を殴りつけ、
汚れた血を出すという狂った方法で、望は恐怖を覚えた。

泣いて嫌がる5歳程の子を母親が無理やり教祖の前に出し、血を流させる場面もあった。
そこに教団を嫌っている千景の両親が乱入し、千景を無理やり連れだす。
「私はこの教団を信じてるの~!」千景は泣き叫んだ。
教祖の命により、望の両親を含んむ多くの信者が千景の家の前に集まり、
「千景ちゃんの信仰を阻むな!」「あなたたちも入信すべし!」と叫びだす。
その光景に望の背筋は寒くなった。
あの穏やかで優しかった両親が、教団のことになると人が変わってしまうのだ。

望の両親は、自宅を教団に寄贈してしまい、狭いアパート暮らしに落ちぶれていた。


118 名前:関よしみ「聖母の葬列」 :2010/12/20(月) 23:06:37
教団に疑問を抱くようになった千景は、同じく教団を頭からは信じていない和久に相談した。
和久も、最初は独裁的だった母親が優しくなったと喜んでいたが
最近では家事もやらずにおつとめにかまけるようになり、家の金を持ち出して教団につぎ込んでいると嘆いた。
和久の話によると、望の事故の後も暴走族の乱暴はしばらく続いたがある日突然、
おとなしくなりリーダーの男が家を一軒一軒土下座して回り、その教団の布教を始めたらしい。
最初はだれも相手にしなかったが望の父に殴られ蹴られても、
一向にめげずに娘への謝罪と教団の素晴らしさを説くリーダーの姿に望の両親も軟化していき、一人二人と入信していった。
そして不治の病の患者が何人も教祖の力で完治し、町中の人間が入信したのだった。

119 名前:関よしみ「聖母の葬列」 :2010/12/20(月) 23:07:20
和久は教祖に会って、元の母に戻してもらうと教団に向かう。望も同行した。
教団についた和久は、教祖への面会を要請するが瞑想中だと追い返される。
二人は教団の裏口で5歳程の男の子とあった。男の子は、教祖の息子だった。
男の子は今日が自分の誕生日で家へ帰ったら母様(教祖)が大きいケーキを作ってくれるんだと嬉しそうだった。
父親がおらず、友達もいない男の子を和久と望は気の毒に思った。
ふと、望は入院していた病院の院長が教団内に入っていくのを見つけた。
教団に入信していない院長がこの場所を訪れるとは…疑問に思った和久と望は院長の後をつける。
部屋の中では院長と教祖、そしてリーダーが言い争っていた。

120 名前:関よしみ「聖母の葬列」 :2010/12/20(月) 23:08:11
何と院長は、脱税の証拠を掴んだ教団に脅迫され、
患者に嘘のガン宣告をしたり軽傷の人間を植物人間にしていたのだ。
院長、教団、リーダー、全員がグルだったのだ。望の2年間の意識不明も院長の手によるものだった。
院長はこれ以上の悪事はごめんだ、今から警察と病院に行くと言い出した。
院長は発覚を恐れた教祖によって、リーダーに殺されてしまう。
二人はこっそり抜け出すが、和久はリーダーとその手下に捕えられた。
一人抜け出した望は町の人間に助けを求める。
教祖の「片桐望は悪魔に魂を乗っ取られている。捕えろ」という言葉を皆が信じてしまい、
望は両親にすら追われることとなる。町中の人間が望を追廻し、交番に逃げ込もうとするも巡査すら信者。
何とか電話ボックスを見つけた望は、取材に来た新聞記者に電話をかけ、助けを請う。
しかし、いつ信者に見つかるともわからず頭に血も上っている望と記者との会話はかみ合わず、
ほとんど事情を伝えられないまま10円玉が切れてしまった。

121 名前:関よしみ「聖母の葬列」 :2010/12/20(月) 23:08:58
望は、千景の両親にかくまってもらおうと、千景の豪邸に走った。
ピンポンも鳴らさず、強引に家に走りこんだ望は衝撃の光景を目にする。
千景の両親は千景によって殺されていたのだ。何故両親を殺したのだと叫ぶ望に千景は平然と答えた。
両親があの教団に入信しないのは2人の体を汚れた血が流れているせいで、
体か悪い血を出してしまえば両親も信じるようになると。
もうすべての血を出し切ったので後は教祖様に生き返らせてもらうだけだと無邪気に笑う千景。
へたり込む望に千景はこう言い放つ。
「望ちゃん、あなた悪魔に取りつかれているんですってね?
 さっき教会に電話させていただいたわ。教祖様が迎えに来られるそうよ」

 

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