ベルリンの手紙

311 名前:本当にあった怖い名無し :2011/02/17(木) 04:16:08
12 名前:本当にあった怖い名無し [sage] :2011/01/17(月) 22:46:43 ID:l9aynWoA0
1946年 雑誌「ニュー・ヨーカー」 ジョエル・サイア氏「ベルリンの手紙」

ある日の夕暮れ近く、勤めからの帰りがけに、一人の若い婦人が、
クネーゼベックシュトラッセのひどく爆破された住宅街で電車を待っていた。
その時、一人の盲目の男が彼女に突き当たった。
彼は背が高く、やつれた中年の男で、黒い眼鏡に古びたセーター、
かかとにまでとどくだぶだぶのズボンを着込み、ステッキで道を探っていた。
もう一方の手に彼は手紙をもっていた。彼は腕に、黒い球三つで作られた
ピラミッドの模様のある黄色い腕章をつけていたが、それは外を歩く時
すべてのドイツ人の盲人や聾人が身につけるものであった。
その盲人は夫人に突き当たったことをわびた。彼女は、別になんでもないと彼にいい、
さらに何かのお役にたつことがあったらと彼に聞いた。そこで彼は手紙を彼女に渡し、
その封筒の宛名に連れて行ってくれますかと尋ねた。
手紙は大変遠いクネーゼベックシュトラッセに住んでいる誰かにあてられたものであり、
それにはよほど歩かねばならないと婦人は彼に言った。
「やれやれ、今日はもうこんなに歩きましたのに。
 この手紙を私の代わりにとどけて頂けませんでしょうか?」
と彼は言った。
彼女は喜んでそれを引き受け家に帰る途中にとこを通るから少しも面倒ではないと答えた。
盲人は彼女に厚く礼をいい、2人は別れ、盲人は彼女が来た方の方角に杖をついていった。
2、30ヤード歩いたところで、彼女は盲人がちゃんと歩いて行ったかどうか振り返ってみた。
彼はステッキを小脇に抱えて、急ぎ足にすたすたと歩いていたのである。
これがペテンであることには間違いなかった。手紙をもって行く代わりに彼女はそれを警察に差出し、
どうして手に入ったかを説明した。警察が封筒の宛名のアパートに行ってみると、
2人の男と1人の女がたくさんの肉をしまっていた。その肉は医者が検査したところ人間であった。
封筒の中の手紙には、ただ一言、次のように書いてあった。

「今日は、この人でおしまいです。」