ホーム » 小説 » 児童文学・絵本・昔話 » 憧れの先生

490 名前:1/2 :2012/02/09(木) 18:40:00.48
小学生の時読んだ話。そんなにどぎついものではないですが。
話の舞台は昭和初期か戦後すぐあたりではないかと。

花子は新しく担任になった若くてきれいで優しい先生が大好きだった
他の子たちも先生が大好きで、休み時間は生徒たちにいつも囲まれていた
花子もあこがれの先生に話しかけたいと思っていたが、極度に内気で引っ込み思案の上
緊張するとどもる癖があるため、強く願いながらも話しかけられずにいた。
寒い冬の日、授業が終わり帰り支度をしていた時、上着のポケットに5円玉が入っていたのに気が付く。
数日前におばあちゃんのお手伝いをしたお駄賃にもらったのを思い出した。
当時の5円は子供には結構な価値があり、駄菓子屋に行けばアンコ玉やおはじきなどが買うことができる。
花子はしばらく5円玉を手のひらで弄びながら思案していたが、ふと素敵な考えが浮かぶ。
いつものように他の生徒たちに話しかけられていた先生が、一人になった時を見計らい
勇気を出して初めて話しかけた。
「せ・せんせい!こ、こ・この五円玉が、教室の後ろに、お・落ちてましたっ」
やっとの思いでそう言って五円玉を先生に差し出す。すると先生は
「あら、そうなの?届けてくれてありがとうね、花子さん」
とにっこり笑って受け取ってくれた。


491 名前:2/2 :2012/02/09(木) 18:41:31.44
帰り道、雪がしんしんと降っていたが、花子の心はポカポカと温かかった。
あこがれの先生に話しかけることができた、先生が自分だけに向かって話しかけてくれた
自分の名前を呼んでくれた、5円玉を渡すときに少しふれた指は温かかった。
それは5円玉なんかよりもずっと価値のある宝物のようだった。
だが、ふいに花子の前にクラスメイトの男子3人組が立ちふさがった。
怖い顔で、さっき先生に5円玉を拾ったと言っていただろう、ずっと見ていたぞ言われる
驚いて黙って頷くと口ぐちに花子を罵倒しだした
「すぐに届けずにポケットから出したり手でもんだりして、おめぇ本当はもらっちまうつもりだったんだべ」
「んだ、五円あったらいろいろ買えるべ、ずるいことさ考えてたに違いない」
「こん泥棒めが」「卑怯者め」「うそつきが」
あまりの事に言い返すことも出来ずにいると、それを肯定したと受け取ったリーダー格の男の子が
花子を横柄に指さし、ビシリと言い放った
「どもりの花子、泥棒花子、卑怯者の花子、お前なんか先生に優しくされる資格なんてないんだ!」
言いたい放題言って満足した彼らは、立ちすくす花子など見向きもせず去っていった。
のろのろ歩き出した花子は、それでも、何と言われてもあの時とった行動は間違ってない
自分にとって価値のあることだったんだとつぶやいた。
しかしさっきまでの温かさはもうどこにも無く、強さを増した雪の中をとぼとぼと帰っていった。

後味悪い
(後味悪ければクリック)
読み込み中 ... 読み込み中 ...