たのしみ(星新一)
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238 名前:1/2 :2012/07/18(水) 13:18:20.80
- 星新一「たのしみ」
山奥ののどかな農村に、都会の男がやって来た。
男は目つきが鋭く、ボストンバッグを抱えていた。
歩き疲れた様子で、一軒の農家の縁側に倒れ込み、そのまま寝入ってしまった。夕方、一家が畑から戻って来る。
男は簡潔に、旅行中だが歩き続けて疲れた、と一晩の宿を乞う。では、おあがんなさい。わしらは今夜、寄り合いがあるでな。
「ななななんの寄り合いだっ!?」
お祭りの事さね。農夫は男に聞かれ、新聞は一週間まとめての配達であと三日しないと来ない、村にラジオはない、と答える。
男はボストンバッグを大事そうに抱えて眠った。深夜、三々五々集まってきた村の者を前に、老巫女は厳かに告げた。
「その男は人殺しだ。二人殺している。金を持っているかどうかはわからぬ」翌朝、男は縛られて目を覚ました。三人の農夫が男を見下ろしている。
男は騒ぎ、抗議し、凄み、脅すが、無駄である。
「助けてくれ、金ならやるぞ!」
三人は目を光らせるが、男の視線の先にあるボストンバッグには目もくれない。
山道を引きずられた男は、枝振りのいい木からぶら下がった縄を見て叫ぶ。
「そうさ、確かに俺は人殺しだ!警察に…」
三人は無言のまま男を吊す。
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240 名前:2/2 :2012/07/18(水) 13:19:21.35
- 手まねで命令された唖の若者が、裸にされた死体を埋めた。
男の服とボストンバッグは、老巫女の家で厳重に油紙で封印され、裏の竹やぶに埋められた。
その上には、日付を刻んだ小さな石が置かれた。
「さあ、10年たったらこいつを掘り出して、お祭りをすべえ」
「そういや来年は、いつかのやつの10年目じゃなかったかの」
「そうじゃそうじゃ、楽しみじゃのう」
「さあ、野良に戻るべ」
楽しげなざわめきのあと、皆は日常に戻って行った。後書きによると、昭和36年以前の作品だそうです。
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248 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/18(水) 17:05:51.69
- >>239
事件の時効待ちっぽいけど
三人が目を光らせる理由がわからなかった
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254 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/18(水) 19:56:02.56
- >>248
金は欲しいが村のしきたりに逆らえないジレンマじゃね?