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855 名前:1/2 :2012/08/10(金) 08:39:54.90
トム・ゴドウィン「冷たい方程式」
1954年発表。

未来の地球は銀河系内の複数の惑星を植民地にしていた。
人員や物資を運ぶ定期船のスケジュールは厳密に決まっている。ぎりぎりの数で運航しているのだ。
植民地で緊急事態があれば、必要最小限の物資を運ぶための緊急艇が定期船から飛び立つ。

緊急艇には、パイロットの体重と積み荷の質量から厳密に計算された燃料しか与えられない。
質量が変化すれば緊急艇は宇宙の藻屑となり、植民地の人員に被害が及ぶ。そのため、
【緊急艇で発見された密航者はただちに船外に遺棄されるべし】
という条項が、法律に定められているのだ。

辺境の惑星に血清を運ぶ緊急艇で見つかった密航者は、まだ十代の少女だった。
そこで働く、もう十年も会っていない兄に会うためにこっそり忍び込んだ、と無邪気に語る少女。
どうやら詳しい法律を知らないらしい。
「あたし、牢屋に入れられるの?それとも罰金で済むのかしら。
 向こうに着くまで、おじさんの役に立つわ。料理も裁縫もできるのよ」

パイロットは悩む。これが使命感に取り憑かれた気違い、逃亡犯、
一獲千金狙いの山師ならば有無を言わせずエアロックから放り出すのだが。


856 名前:2/2 :2012/08/10(金) 08:41:36.55
パイロットと定期船の通信を聞いた娘は、密航者への罰を知って泣く。
「どうしても駄目なの?燃料と血清のために、おじさんはあたしを殺すのね。
 
でもあたしが死なないと、患者さんが死んでしまうのね」
「みんなあたしが死ぬのを待っているのね、死ぬほどの悪事は働いていないはずなのに」

定期船の船長の計らいで、減速を開始するぎりぎりまで「処刑」が伸ばされる。植民地の兄との通信も特別に許可された。
少女は来年、兄が転属になる比較的安全な惑星で働く予定だった。その前に兄に会いたかった、と語る。

「もしもし、兄さん?あたし、密航しちゃった。ごめんね、馬鹿なことをしたって、やっとわかったわ」
「来年まで待てなかったの。もう会えないわ、さよなら。…もう時間だわ、泣かないで。大好きよ、兄さん!」
ヴェガ製の高級サンダルを真似た、レザーの代わりにビニール、銀の代わりにメッキした鉄、
宝石の代わりに色ガラスを使った安物のサンダルを履いた少女は、進んでエアロックに入る。

パイロットは植民地に着くまで、少女の言葉を反芻していた。
「死ぬほどの悪いことはしてないはずよ…死ぬほどの悪事は働いていないのに」


857 名前:本当にあった怖い名無し :2012/08/10(金) 09:15:51.63
女の子が最初は強がってて、流行もののファッションに身を固めた
いわゆるビッチ臭く見えてるんだよな。

でも実際は長年会えない兄に急に会いたくなった、
それで深く考えずに侵入してしまった普通の女の子。
パチもんで精一杯オシャレしてる実際は貧乏な女の子ってのがわかってくる。
兄ちゃんも妹も絶望しつつも受け入れるしかない。

 

冷たい方程式 (ハヤカワ文庫SF)
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