ホーム » 小説 » 小説/タイトル不明 » いつかは消えなくてはいけない「非現実な存在」

732 名前:その1 :2012/10/25(木) 18:17:35.58
後味悪いというより、切ないなぁと思った話。
かなり前だし、ライトノベル作家の作品で
作者名も題名も忘れたけど投下。

ある繁華街のラブホで男が殴り殺されているのが発見され
凶器は部屋の備え付けのテレビで一撃されての即死。

いくら小型だといっても総量20㎏はあるテレビ本体を降り下ろせるのは屈強な男だろうと、捜査陣は踏んだが
入り口の防犯ビデオを再生してみると、意外にも被害者と同伴していたのは如何にもか弱そうな若い女性だった。

被害者(A)の過去を洗うと、典型的なチンピラで女に美人局や売春などをさせて上前をはねていた悪党であり
殺される直前に「昔の女と再会した」と言っていた事から
過去の女関係を洗うと、その中にあの防犯ビデオに映っていた女性のB子(昔の悪仲間)が浮上して
犯行現場に残っていた指紋も合致したので早速勾留して取り調べを始めたが、B子は頑として犯行を認めず
それどころかAは最近まで見も知らぬ人だったのにいきなり道端で「B子」と人違いして
しつこく絡んできたので怖くて逃げたが、そもそも自分はB子ではなくC子だという。


733 名前:732 その2 :2012/10/25(木) 18:19:31.40
続き

そこで調べてみると確かに戸籍上ではB子など存在せず
どうやらC子の偽名らしいが、Aと組んで悪事をした記憶もラブホにいった記憶もないという、
C子は確かに若くてそれなりに美しいが愚鈍で気が弱く、衣服も地味で
とても防犯ビデオに映っていたり、昔話のB子のイメージと合わない上に
とてもテレビを振り回せるような体力もない事がわかり捜査陣は戸惑う。

ある日、取り調べの途中でC子は突然意識を失い
目覚めた時にとてつもない力で大暴れをして
数人の男達でも抑え切れずに麻酔を使ってやっと収拾させるという事件が起こり、
再び目を醒ますと今度は、C子の気弱さは微塵もない派手で蓮っ葉な性格の女性が出現して
「A子は多重人格者で、自分がB子の人格であり
 Aを殺したのはさっきの大暴れしたDという狂暴な男の人格」
だという。

あまりにも突飛もない話に、最初は懐疑的だった捜査陣も
それからも何度も出てくるD人格の、常識では考えられない力や
B子の人格が出て来たときの説明で信じざる得なくなってくる。


734 名前:732 その3 :2012/10/25(木) 18:21:16.32
続き
実はC子は母親の顔も知らない崩壊家庭に育ち、
幼い頃から実父と実兄(両方とも十年前に自宅マンションのベランダから同時に転落死)に
性的暴行を受け続けているうちに、そういった辛い作業を引き受ける別人格(B子)が生まれ、
B子が出ている間は本人格のC子の精神は眠り続けているので何も覚えていない。

D人格が出現したのは十数年前で、近親相姦を続けていた父と兄がそれに飽き足らず、
C子(中身はB子)を他のロリコン仲間に売って姦わさせる計画を立てている事を知ったB子が
憎しみから作り出してしまった人格で、彼らをベランダから突き落としたが
当時の「何も知らずに眠っていた」というC子の証言と外部からの浸入の形跡がなかった事と、
大人二人を騒がれもせず同時に突き落とせる者は居ないだろうと、
親子喧嘩の挙げ句に一緒に落ちた事故。という事になっていた。

鬼畜と言えど、一応は保護者だった父親を亡くしたC子は未成年で世間に放り出されたが、
元々が愚鈍で気弱な彼女の能力で自活は難しく、金銭的な補填のために時々B子が出現して
街中で男を引っ掻けてお金を得ていて、その時にAと知り合い
素性は明かさずに一緒に組んで悪事をしていた事もあった。


735 名前:732 その4 :2012/10/25(木) 18:22:31.71
それでも数年前にはC子の生活も落ち着き、B子はAとも縁を切って
Dを押さえ付けながら、もう表に出ないで過ごしていくつもりだった。

ところがある日、C子を街中で偶然見つけたAが後をつけてC子の居所を見つけ出し、
過去について脅迫してきたのであの日は「B子」として話し合って決着をつけようとしたのに
いきなりAが襲いかかってきて、抵抗しているうちにDが出て来てしまい、抑える間もなく殺してしまった。
一連の事件はC子にとったら全くの預かり知らない事だという。

こうなってくると刑事達の手に負えず、
多重人格の専門家の精神科医が捜査の手助けをする事になる。

若くて野望に燃えていた精神科医のEは、最初は功名心のみで検査をしていたが、
やがて蓮っ葉で下品だが明朗活発でC子のダークな面を全て引き受けてきて、
尚且つC子を助けるために彼女の人格を完全に統合する(これがC子を罪に問わない条件)手伝いを
買ってくれたB子と、本気で喧嘩したり理解し合ったりしながら少しずつ統合を進めて、
やがてD人格も消えて残りはB子人格のみになった頃、B子を愛している事に気がつくが
C子の治療の完成=B子の消滅という現実に悩むようになり
B子も今まで「分身」としか存在がなかったのに
一個の人格として見てくれたEに対して愛情を持つようになり
それでも自分がいつかは消えなくてはいけない「非現実な存在」である状況に悩むようになり


736 名前:732 その5 :2012/10/25(木) 18:31:38.81
長文すまん。これが最後です。

ある日
「自分だって生きたい!幸せになりたいのにどうして肝心な時はのほほんと眠っていたC子でなく
 辛いことばかりの記憶しかない自分が消えなくてはならないの?不公平だわ!」
と、Eにもたれながら泣いてうったえたが、Eも「正解」が判らず
ただ万感の思いを込めて二人は医者と患者としてでなく初めて恋人同士のキスをする。

Eの胸にもたれながら「ありがとう。ステキな思い出だわ」と呟くとB子は目を閉じて眠った。

彼女が目覚めた時、Eは彼女が愛しいB子でなく
顔は同じでも、ただの平凡な患者に過ぎないC子であり
B子は自らの人格を自分で消し去った事を知った。

失望を隠しながら「治療の終了」とカルテに書いた後
B子を永遠に失った悲しみと、医者の良識と、
非実体の人格の「生存権」についての答えを出せなかった自己嫌悪で嗚咽を漏らすしかないEだった。

なんか確かにB子には殺人の一端の責任があるけど
本人格(気弱で愚鈍)よりB子の人格の方がずっと魅力的だし、
最後にEが自分を殺す治療で苦しまない様に自らを消した時は
「何でドサクサに紛れて入れ替わらない!?」と思ってしまった自分が後味悪くなる小説だった。


741 名前:本当にあった怖い名無し :2012/10/25(木) 19:56:07.83
>>736
乙でした。
多重人格物の悪い人格って大概、主の人格を憎みながら大事に思ってるんだねえ…。
切なくてモヤモヤした。

761 名前:本当にあった怖い名無し :2012/10/25(木) 23:35:08.32
>>732-736
乙です
長いけど面白くてどんどん読めた
ラノベでもこんな話があるんだな
っていうか、私も最後B子がひそかに人格乗っ取って終わりかと思ってたw
あっさり消えちゃったのかB子

後味悪い
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