ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その134 » 金曜の夜の集会(萩尾望都)

804 名前:1/3 :2012/10/27(土) 23:04:49.00
萩尾望都の短編からひとつ。

「金曜の夜の集会」

8月最後の金曜日、マーモ少年は親の作っているジンジャービスケットの香りで目が覚める。
病気で臥せっている姉のソーフィヤも今日は体調が良い模様。
ソーフィヤに「今日は何するの?」と聞かれたマーモはほうき星の観測をするんだと答える。
「前の年の夏はほうき星は現れたかね?」と母に問う父親。「去年の話じゃないよ」と返すマーモ。

マーモは友人であるダックやクラスメイトと共に天体クラブへ向かう。
しかしクラブの担任から出た返事は「今夜は中止」というもの。
仕方なくマーモはダックが手に入れた望遠鏡で観測しようと話し合う。

マーモとたちは観測予定地となる城跡に向かう。
そこでは涙を流す母親がジプシーの男に子供の行方を聞いていた。
「子供は明日帰ってくる」というジプシー男の言葉に長身の少女、セイラは悲しげに答える。
「あんな嘘すぐにばれるわ。あそこの坊やははしかで亡くなったのよ」
その言葉に憤慨するジプシー男、逃げ出す子供たち。

ダックが家に戻ると母親が望遠鏡を手に怒り狂っていた。
ダックは家を出てしまった父親から望遠鏡を貰ったのだ。
母親をなだめる為に望遠鏡をマーモに託し、ダックは家の中へ。
「どうしよう」と呟くマーモにセイラは「預かってたらいいと思う」と返す。
二人は今宵の予定をどうするかなどを話す。
セイラは「今夜は両親が町内会に行くんで留守番だけど、来週の金曜は映画を見に行こう」とマーモに提案する。
セイラに思いを寄せていたマーモは二つ返事で承諾。
「大人になって天文学者になったら、新しく見つけたほうき星にセイラの名をつけるんだ」
来週のデートと将来の自分を想像し、マーモは心を躍らせる。

マーモが家に戻ると家族がご馳走を並べていた。
「いい一年でしたねえ」と笑い合う夫婦にマーモは「結婚記念日なのか」と両親に尋ねる。
「そう。ある記念日でもあるわねえ」と返す母。


805 名前:2/3 :2012/10/27(土) 23:07:49.11
マーモはダックらと「今宵はほうき星の観測に行く」とを両親に話す。
「今夜は駄目だ。パパとママは今から出かける」と返す両親。肩を落とすマーモ。
日が落ち夜の闇が包むころ、町の大人は家を後にする。
その光景を見つめるマーモの元にダックがやってきた。
聞けばダックの家も母親が家を出たきり戻ってこないとのこと。
同じように大人の不在を気にした子供から「大人たちが集っている」と聞いた二人は城跡まで向かう。

大人たちはジプシー男のキャンプの火を囲んで話をしていた。
大人たちに見つからぬよう、崖の上からその様子を覗くマーモとダック。
その様子をダックの母親が発見。
母親の声に驚いたダックは足を滑らせ崖下へ転落し死んでしまう。

ダックの亡骸を抱えて号泣する母親を大人たちが慰める。
「この変則は今回限りですよ!」「そうですよ!前はなかった!」
「それにすぐ終わります。この日は終わります!」
その言葉に「そうだ。これは変則だ。明日になれば戻るんだ。ろくでなしの亭主も帰ってくるんだ」
と納得するダックの母親。
マーモたちも担任に「心配しないでいいんだ」と慰めの言葉を受ける。
大人たちの言動が引っかかったマーモは担任に「ここでなにをしているの?」と問う。
「0時をまってるんだ…今夜で……今夜でこの街は消滅するんだよ」
呆然とするマーモに担任やジプシー男が真相を語りだす。

今宵の0時を境に街は熱と化して消滅する。
マーモの姉、ソーフィヤは予知能力者であり、この街が消滅する未来を予見した。
大人たちはその未来に抗う為に消滅の日の前日…8月最後の金曜日に集い、彼女と共に祈る。
祈りの力はソーフィヤを介して時間軸を遡り、街はちょうど1年だけ時間が巻き戻る。

時間が巻き戻れば死んだものは生き返る。
はしかで亡くなった子供も、葬式を行った隣の家の老女も、目の前で転落死したダックも帰ってくる。
そしてまた同じ1年が繰り返される。
交通の便や今回のような彗星など微妙な改変はあるけれど、終末の日は変わらない。


806 名前:3/3 :2012/10/27(土) 23:10:22.99
マーモは自宅に戻り、ソーフィヤに「安全な未来へ逃げることはできないの?」と問う。
その問いにソーフィヤは「安全な未来はないのよ」と答える。

長いこと私と大人たちは街の時間を巻き戻してきた。
何度もくりかえすうちに平凡で平安な日々の繰り返しに私も大人たちも慣れてしまった。
今日のことを忘れたければ記憶から取り除いてあげるわ。
子供たちは未来の夢を抱き続けて欲しいから、子供たちの記憶だけは毎回まっさらに戻しているのよ。
泣かないでね。これが私の精一杯のことなの。

ソーフィヤの言葉にマーモは涙を流す。
どう足掻いても明日は来ない。セイラと約束したデートの日も、大人になって天文学者になる日も来ない。
ぼくらは今日が終わるまでの未来しか生きることができない。

マーモは自分の夢をかなえる為にダックの遺品となった望遠鏡を手に走り出す。
セイラの家についたマーモは部屋の窓を叩き、彼女をほうき星の観測へ誘う。
マーモの誘いを了承したセーラが身支度を整え窓から身を乗り出したそのとき、無常にも0時を告げる鐘が鳴り響いた。

「いつか町に明日がきたら、ぼくらは熱と光の中でガブリエルのラッパの音を聞くだろう。
右に左に手をつないで天の門に至る階段を上りながらそのときは
見るはずだった映画の話、みつけるはずだったセイラ星の話
なるはずだったおとなの話をみんなで話そう――」

そう呟くマーモの言葉でEND

大人が祈るのを辞めるか、ソーフィヤがイレギュラーな死を迎えるかしない限り無間地獄という後味の悪い話。
子供たちの記憶だけリセットしているのは、真実を知った子供たちが絶望して祈りを妨害するからなのかなと思った。
マーモも記憶がリセットされてなかったら、自分に未来が無いことを知りつつ
平安を望む大人たちの祈りに加担しなくちゃいけないのかなと思うとやりきれない。


813 名前:本当にあった怖い名無し :2012/10/28(日) 00:16:18.44
記憶を残すのに特別な作業が必要なんじゃなくて記憶を消すのに特別な作業が必要ってことは、
この町以外の人類全員は訳も分からんまま膨大な量の記憶を引き継ぎ続けてるってことか?
「安全な未来はない」ってことは滅ぶのも時間が巻き戻ってるのも世界全体の話なんだろうし

814 名前:本当にあった怖い名無し :2012/10/28(日) 00:44:34.23
>>805
> 今宵の0時を境に街は熱と化して消滅する。
> マーモの姉、ソーフィヤは予知能力者であり、この街が消滅する未来を予見した。
この街限定なら避難すればいいんじゃ?
記憶引き継いでるならみんな予知を信じるだろうし。
世界中の話ならごめん

815 名前:本当にあった怖い名無し :2012/10/28(日) 00:57:39.46
>>814
今漫画が手元にないんだけど、全世界が戦争(おそらく核)で消滅するんだ
だから主人公の姉が、住んでる街だけを1年前に戻す

817 名前:815 :2012/10/28(日) 01:02:24.83
>>815だけど、全世界が消滅するっていう確固たる台詞はなかったかも
姉が「安全な未来はどこにもないのよ」って悟った瞳で言うシーンがあります
ややこしくしてごめんなさい

819 名前:本当にあった怖い名無し :2012/10/28(日) 01:46:30.66
セーラとセイラは別人?
なんか名前も似ていてごちゃごちゃしていて
誰か産業にまとめて

821 名前:本当にあった怖い名無し :2012/10/28(日) 02:04:24.80
>>819
未来に対していろいろ夢を抱いていた。
ふとしたことで町が無限リセット→再起動状態になっているのを知った。
未来なんて来ないじゃないですか!やだー!

822 名前:本当にあった怖い名無し :2012/10/28(日) 02:34:13.65
時間が戻って一度死んだ人(はしかの子とかダック)が生き返ったら次回からは死ななくていいの?
繰り返して死ぬのかな?

823 名前:本当にあった怖い名無し :2012/10/28(日) 03:30:13.55
>>822
親は記憶を引き継いだままループするから、選択を間違えなければ死なない。
むしろ死=イレギュラーイベント的な感覚になってるから、
また手違いて死んでも「巻き戻ったら生き返るからいいや」と考えるようになってるかも。

 

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