ヘギョンくんの胃薬

138本当にあった怖い名無し:2013/04/16(火) 21:47:26.77
昔の新聞に載ってた投書「ヘギョンくんの胃薬」
韓国ネタ嫌いな人はスルーよろ。

投稿主は日本人の、予備校講師男性。
1978年の春、投稿主の通っていた大学が交換留学を行うと発表した。
姉妹校である韓国の大学から二名、こちらから二名を一年間交換留学させ、
交流を図るというものだった。
その二名のうち一人に、投稿主は選ばれる。
というのも、当時の独裁的な政治体制の韓国に行きたがる学生がいなかったからだ。

投稿主は渋々、韓国行きを了承する。
「まあ、一年だしいいか…」という気持ちがあったからだ。


139本当にあった怖い名無し:2013/04/16(火) 21:48:56.33
韓国の大学で、投稿主は予想以上に温かく迎えられる。
初めてのソウルの街も、生まれ育った関西の繁華街のようで、
投稿主は一週間ほどで気に入る。

学生寮の二人部屋をあてがわれ、そこで生活することになった。
同室になったのは、モク・ヘギョンくんという名前の文学部の学生で、
全羅道出身の豪快な青年だった。
食堂でチゲを奢ってくれたり、
韓国語の分からない投稿主のために、
ハングルと対応するひらがなを書いた表を作ってくれたり。
それでも投稿主は、どこかヘギョンくんと打ち解けられない。
性格は嫌いではないし、
真面目ないいやつだと思っている。
しかしどうしても「こいつは朝鮮人だ」とバカにする気持ちがどこかにある。


140 本当にあった怖い名無し:2013/04/16(火) 21:51:07.21
投稿主は関西出身で、近くには朝鮮戦争で帰れなかった朝鮮人のウトロがあった。
貧しく、基地で鉄くずを拾って生活している彼らを、
投稿主の両親はいつも「ブタの餌でも食ってろ」と罵っていたし、
周囲の人間も誰ひとり好意的に言う者がいなかったからだ。

表向きは笑って接しつつも、「一年経って日本に帰ったら、こいつの事は忘れよう」と思っていた。
当然肚の中では見下してるわけだから、
韓国の学生仲間たちとは表面だけ仲良くしつつ、適当にあしらっていた。
ヘギョンや他の学生たちが教えてくれた住所の紙も、後でこっそり捨てた。


141 本当にあった怖い名無し:2013/04/16(火) 21:54:58.10
そして一年が過ぎた。
日本に帰る前の日、投稿主の送別会をヘギョンくんが開いてくれた。
「俺達の事忘れないでくれよ」
「日本に帰っても元気でな」
「ちゃんと大学卒業しろよ!」
韓国で知り合った友人たちが口々に励ますのを、はいはいと適当に聞く投稿主。

送別会が終わった頃、投稿主は突然の腹痛に襲われる。
どうやら、普段はあまり食べない参鶏湯を、最後だからと食べ過ぎたのが原因のようだった。
寮のベッドで腹痛に苦しむ投稿主。
すると友人たちが、「おい、あいつが腹痛だってよ!」
と夜中の23時にも関わらず薬を買いに走ってくれた。
当時の韓国に24時間営業のドラッグストアなどない。
ソウル市内の薬局を駆けまわるが、どこも店主は家に帰って寝ている。
すると「俺が知り合いのおじさんの店行くよ」とヘギョンくんは
自転車で隣の市まで4キロの道のりを走った。


142 本当にあった怖い名無し:2013/04/16(火) 21:59:32.80
4時間半後、「はい」とヘギョンくんが差し出したのは、高麗人蔘の絵が書かれた胃薬。
ハングルのロゴと、裏に書かれた見慣れない成分と素材。
「こんなの飲めねえよ!」と逆切れする投稿主に、
「これは漢方の成分が入っているんだ。全身の体調を整えるし、眠くもならないよ。
 本当は食前に飲むんだけど、これしかなくてごめんな」
「要らない!飲まない!」と投稿主は我を張る。
朝鮮人が買ってきた胃薬なんて飲んでたまるか!という気持ちがあったからだ。

ヘギョンくんはしばらく黙っていた。
「しまった」と投稿主は思うが、彼は怒っている様子はない。
「分かった、じゃあお前のカバンに入れとくよ。気が向いたら飲んでくれよ」
と言って部屋を出て行った。
悪いことをしたかな?と投稿主は少し反省したが、
今更謝るのも嫌でふて寝してしまう。


143 本当にあった怖い名無し:2013/04/16(火) 22:11:45.26
翌日。
空港に見送りに来てくれた友人の中にヘギョンくんはいなかった。
薬の礼を言ってなかったのを思い出し、
友人のジェファンにありがとうと伝えてくれと頼む投稿主。

「分かった。あいつ今年から陸軍に行くから、早めに言っとくよ。
 今日来れないのも、兵役の準備があるからなんだ」
「なんであいつは夜中なのに薬買いに行ってくれたんだ?」
「腹痛いってのたうち回ってる奴は放っておかないよ。お前はどう思ってたか知らんがな。
 朝鮮人だって人間だから、いいやつも悪い奴も、付き合いにくい奴もいるさ。
 それだけは分かって欲しかったんだ」

つまり、肚の中で見下して仲良しのふりをしていたのを、彼らは最初から知っていて、
それでも怒らないでいてくれたのだ。
「気が向いたらまた韓国に来いよ!待ってるからなー!」
空港のゲートに行くまで、友人たちはずっと手を振ってくれていた。


144 本当にあった怖い名無し:2013/04/16(火) 22:19:07.37
投稿主はヘギョンくんの住所を書いたメモを捨ててしまい、
日本で大学を卒業した。
そしていつしか彼のことは忘れてしまっていた。

30年後、予備校講師になっていた投稿主は、風邪をひき薬箱を漁る。
その中には、見覚えのあるハングルのパッケージが。
インターネットで調べると、それは柴胡桂枝湯という漢方薬だった。
体の熱や炎症を抑える働きもあり、胃のむかつきに効く薬だ。
つまりあの腹痛も、風邪で弱った胃に参鶏湯を詰め込んだのが原因だった。

「そういえば、あの時俺は1週間も風邪ひいて寝てたんだっけ。
 ヘギョンのやつ、やけに俺の熱測ってたなあ。
 俺はあいつが風邪ひいてもスープ一つ作ってやらなかったのに、
 あいつはちゃんと俺のこと気にかけてくれて…」


146 本当にあった怖い名無し:2013/04/16(火) 22:30:44.87
最後はこんな一文だった。

ヘギョンが今どこにいるか、俺は知らない。
あいつの住所も、捨ててしまったせいで知らない。
それどころか、俺は一年も一緒にいたのに
ヘギョンの出身地も家のことも聞いたことがなかった。
あいつは、俺が関西のことを教えたら
「たこ焼き食べたいなあ、美味しそうだなあ」なんて言ってくれたのに。

あれから30年経つが、うっかりあの時の学生仲間に会ったら
どうしようと思って、韓国へ行く勇気がない。
あの時の薬は、今も俺の家の薬箱に入っている…
それ故に俺は、あの夜ソウルを駆けまわってくれた彼らと
ヘギョンに対する罪悪感を、一生忘れることができないだろう。


148 本当にあった怖い名無し:2013/04/16(火) 22:49:11.82
予備校講師性格悪すぎだろ…

157 本当にあった怖い名無し:2013/04/17(水) 11:05:38.41
参鶏湯って漢方薬混じりの鶏肉入りお粥だよ。
ちょっとくらい食べ過ぎても長時間のたうちまわるような腹痛になるなんておかしい。
ネタか、でなけりゃ朝鮮人が何か変なものを混入したかどっちか。