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4301/2:2013/06/18(火) 13:32:26.00
筒井康隆「小説「私小説」」

作家Aの所に来た新しい女中は、高校を出たばかりの18歳。
国語の教科書であなたの小説を読んで尊敬しているそうです、
と老妻から聞かされてAは気分がいい。

Aは私小説専門の大家。
若手作家のある短編を「この作品には嘘がある」と批評したところ、
小説とは元々フィクションすなわち嘘の塊、虚構の楽しさを理解できぬ老害pgrと反撃を食らった。
むしゃくしゃしたAは、文芸のために浮気でもしてやろうかと思った。
ちょうど目の前にお誂え向きのがいるではないか、俺の事を尊敬しているという若い女中が。
俺が手籠めにしてやったらむしろ喜ぶだろう。

Aは女中部屋を襲った。
いびきと歯ぎしりの合間に軽やかな寝息がかすかに聞こえ、
ネグリジェが捲れ上がってパンツ丸出しというすさまじい寝相。
「文芸のためじゃ我慢せえ。ええい文豪の言うことが聞けんのか辛抱せい」
奥様に聞こえるじゃないの、襖が開けっ放しよ、といなされたAは少しおとなしくなった。
行為を再開したが、老齢と焦りのせいで股間が反応しない。


4312/2:2013/06/18(火) 13:34:34.78
女中は、男の人がそうなるのって珍しくないんですって、
小説なら先生の好きなように書けばいいじゃない。と慰めた。
枕元に例の若手作家の単行本を見つけたAは嫉妬で勃起し、女中を犯した。
老齢は騒ぎに気づき、全てを見ていた。

Aの新作「若い虫」は、夜半便所に起きた老作家がふと女中部屋を覗き、
天真爛漫な愛らしい寝姿に感激して思わず抱き締め、
目を覚ました女中が恋人のように甘えてきたので…というものだった。
文壇のみならず一般ジャーナリズムでも話題を呼び、Aは非難された。
Aは、すでに暇をとっていた女中を
裏切り者恩知らず昔の女はよかったと罵り、ますます敵を増やした。

女性週刊誌に女中の独占インタビューが載った。
「尊敬するA先生があんな事を…私は奥様のために悲鳴を押し殺しました。
奥様がお気の毒で、私さえ黙っていれば丸く収まると思いました。でも先生はあんな小説を…」

「若い虫」が女中本人を主役にクランクインした頃、
Aは老妻をヒステリックに怒鳴り付けるようになった。
老妻は味噌汁の出汁をゴキブリでとったが、Aは気づかなかった。

A家では飯を圧力鍋で炊く習慣があった。
ある日老妻は、炊きたての熱い圧力鍋でAを撲殺した。
編集者がやって来た時、老妻は圧力鍋を抱えて
「すみませんでしたねえ」と繰り返していた。


432 本当にあった怖い名無し:2013/06/18(火) 14:33:32.05
A妻パワフルすぎワロタ

433 本当にあった怖い名無し:2013/06/18(火) 14:46:47.02
そのせいで後味の悪さが減少してるな

 

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