ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その140 » おじさんの手紙(高橋葉介)

7811/2:2013/07/02(火) 10:14:35.75
高橋葉介の初期作品「宵闇通りのブン」から、「おじさんの手紙」

20世紀初頭のヨーロッパを思わせる街「牧神街の宵闇通り」に暮らす
少女ブン(フルネームはブン・ブルルン・ブン)が主人公の連作。

クレメンタインおばさんの夫は冒険家のハイネケン・ビヤボトル、
5つの国で革命の指導者となり3つの戦争に参加した男の中の男。
ハイネケンおじさんはその戦争で片腕を失い、
鯨と銛一本で渡り合って片脚を失い、人食い駝鳥と格闘して片目を失った。

ブンはパパの言いつけで、時々ご機嫌伺いにおばさん宅へお邪魔する。
冒険家の亭主を持って年のほとんどを留守居では寂しかろう、というわけ。
しかしおばさんは、ブンが
「お寂しくはございませんの?」と訊ねると、
「そりゃ寂しいわ、でもあの人は大空を自由に飛び回る鳥。
女のワガママで鎖をつけてはいけないわ、あたしは冒険家の妻というだけで幸せなの」
とうっとりしている。

手紙によると、おじさんは今人跡未踏のジャングルを冒険中。
仲間は恐竜に食われたりオオアリクイに耳の穴から脳みそを吸いとられて殺されたりで全滅。


7822/2:2013/07/02(火) 10:19:16.93
実ははおじさんは近所に隠れ住んでいた。
本当は法律事務所の事務員で、冒険は全部でっち上げ。
おばさん宅の土産(人食い巨人の大腿骨、雪男の頭の皮、ノアの箱船の残骸)は
動物園の象の骨、駱駝のこぶ、ひっぺがした床板。

クレメンタインおばさんに一目惚れしたおじさんは、
男らしい大冒険家が好みだと言うおばさんに即興で冒険譚をでっち上げて結婚にこぎ着けた。
(白熊5頭を相手に栓抜き一本で渡り合った話をお聞かせしましょうか?)

片目片腕片足は、冒険譚を手紙に書くうちについ筆が滑ったので、
辻褄を合わせるために自分でやった。
「デスクワークが性に合ってるんだ、暖炉の前で推理小説を読んで日曜日にはバラの手入れをして…」
「でも彼女はそんな僕を愛しちゃくれない、だから嘘の手紙を書かなくては」

帰り道、ブンは思った。
(もしまた筆が滑ったら?)
(大熊にお腹を食い破られたので代わりに鳥かごを吊るすことにした、なんて書いちゃったら…)

最後、読者に向けての
「馬鹿みたい、ねぇ?」が後味悪かった。
毎回誰かがひどい目に遭って、ブンが「ばーか」って言うのがお決まりなんだが。

 

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