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21アイザック・アシモフ 「死せる過去」 1/4:2013/07/11(木) 16:55:45.22
アイザック・アシモフ 「死せる過去」

過去の時代と地域に焦点をあてて、
映像と音声を視聴することができるタイムビューワ ・ クロノスコピイ。
政府のみが所有し、民間使用は申請が必要で厳しく管理されている。

古代カルタゴの研究に心血を注ぐ考古学者が、
クロノスコピイの使用申請を管理局にすげなく却下され、
頭の固い役人のものわかりの悪さに激怒する。

月に1,2回、認可された研究が広報されているが、
古代カルタゴに比べると取るに足らないくだらない研究ばかり。
なんでこんなものが認められて、私の研究は却下されるのか?
歴史研究の価値がわからないバカ役人どもが!

その頃、考古学者は大学内のパーティで、
幼くして火事で死んだ娘と同年代の若い物理学者と知り合い、
彼に自家製のポータブル・クロノスコピイを作らせようと思いつく。

クロノスコピイの基礎研究であるニュートリニクスは
政府によって研究が厳しく管理されている。
若い物理学者の専攻は人工重力光学で、
未認可の研究に手を出すと、非合法研究とみなされキャリアを失ってしまう。
しかも、クロノスコピイの大きさは5階建てのビルほどもあり、
その製造は莫大な資本と人手と時間を要すると言うではないか!

最初は渋っていた物理学者だったが、若者らしい知的好奇心と、
科学研究を徹底管理する政府への反抗心から
考古学者の頼みを受け入れることにした。


22アイザック・アシモフ 「死せる過去」 2/4:2013/07/11(木) 16:56:54.16
物理学者は伯父のサイエンス・ライターの協力を仰ぐ。
彼は海千山千の曲者で、いろんなコネを持っており、
ニュートリニクスの論文や材料の入手を手伝ってくれたおかげで、
ついに低出力のクロノスコピイが完成する。
それは人工重力光学を応用すれば、
個人で入手可能な材料でも
簡単に作れてしまう画期的な発明であった。

しかしここで問題が生じる。
クロノスコピイが遡れる過去は100年ちょっとが限界だったのだ。
それは不確定性原理によるニュートリノ捕捉の限界であり、
クロノスコピイの大きさやパワーの問題では無かった。
古代カルタゴの研究に活用することが出来ないのか!
しかし、政府が広報している、
クロノスコピイを使用した古代研究の数々は、
一体何なのか?あれは政府のでっち上げなのか?

自由な科学研究の重要性を悟った物理学者は、
後進の研究環境のためにと自家製クロノスコピイの資料を
公表しようとするが、何故か考古学者は激しく反対する。

実は幼い娘の焼死は考古学者の煙草の不始末が原因であり、
娘を今も思慕する妻が、
クロノスコピイでその秘密を知ることを恐れたのだ。

主張相容れず物別れする考古学者と物理学者。
身の危険を感じた物理学者は、クロノスコピイの資料一切を、
自分に何かあったら公開してほしいと伯父に依頼する。

数日後、研究室に考古学者を伴った管理局の役人が踏み込んでくる。


23 アイザック・アシモフ 「死せる過去」 3/4:2013/07/11(木) 16:57:58.20
キャリアの喪失を覚悟した物理学者。
「大学を追放するならどうぞ。僕は公表をあきらめませんよ。」
「それなら、君を逮捕しなければならない」 と告げる役人。
「法廷で全てぶちまけてやる。あなた方の管理体制など容易に解体できますよ」
「いや、君はここから刑務所に直行し、ただ止まるのみだ。裁判は無い」
「バカな、ただの脅しだ、今は20世紀じゃないんだ!」

そこへ警備員の制止を振り切って入ってきた
伯父のサイエンスライターも加勢する。
彼は、依頼内容から甥に身の危険が迫ったと察知していた。
「私にも甥にも身内や仲間がいる。ただ消すわけにはいかないぞ。
 今は20世紀じゃないんだ。脅しにはのらないぞ!」

「畜生、私はどうすればいいんだ!」 
それまで事務的に対応していた役人が、突然激高する。
「あんたら3人はなんにもわかっちゃおらんのだ!まあ話を聞きたまえ!」
余りの剣幕に驚いて口を閉じ、耳を傾ける一同。

「過去とはいつから始まるのか知っているのか?
 1年前か?5分前か?1秒前か?それは一瞬前から始まるのではないか?
 過去を見る事は、現在を見るのとほとんど変わらないのではないか?
 我々が古代研究の広報をでっち上げていたのは、人々の関心を
 その事実から遠ざけるためだった。過去とは大昔の事である、と思わせたのだ。
 しかし、自家製クロノスコピイが簡単に作れると、世間に知れ渡ったらどうなる?
 人々は自分の若いころや死んだ両親を眺めて懐かしむだろうが、
 そんなのは長続きしない。家庭の主婦は、死んだ母親をじきに忘れて、
 家に引きこもっている近所の人や、会社の亭主を眺めて楽しむようになるだろう」


24 アイザック・アシモフ 「死せる過去」 4/4:2013/07/11(木) 16:59:04.97
「ビジネスマンはライバルの、雇い主は使用人の一挙一動を眺め、
 映画やテレビのスターは四六時中誰かにのぞかれることになる。
 プライバシーというものが無くなってしまうのだぞ!
 誰もが覗き魔に覗かれ、絶対に逃れることは出来ない。
 赤外線も感知するクロノスコピイからは、暗闇の中でも隠れることはできない。
 法律で製造禁止?ヘロインを1000年たっても根絶できない人間社会から、
 覗き趣味と好色を満足させてくれる夢の機械をどうやって取り上げる?」

余りの事実に、泣きながら公表しないと約束する物理学者。
何はともあれ、人類社会の危機はすんでのところで回避された。

「いや、間に合わなかった」 とサイエンスライター。
彼は、自分が泥をかぶって甥のキャリアを救うべく、
資料一切を半ダースほどの出版社に送りつけた後だった。
既に1日以上たっている。噂が広まるのに十分な時間だ。
もはや完全回収は不可能だろう。それを聞いてその場で凍りつく一同。

「そんな目で私を見るな!俺にわかるわけないじゃないか!」
「ああ、誰にもわからなかった。あんたは政府の役人は専制的で邪悪で、
 コチコチの石頭としか思わなかった。我々が全力を尽くして
 人類を守っているなんて、夢にも思わなかったんだ!」

暗黒の未来社会の到来を予感させて、物語は終わる。


25 本当にあった怖い名無し:2013/07/11(木) 17:24:57.60
>>21
http://occult-atoaji.sakura.ne.jp/?p=9226
こっちの「死せる過去」より内容が正確だね

ちがうところを訂正して投稿しようか迷ってたから助かる


27 本当にあった怖い名無し:2013/07/11(木) 17:42:13.98
あれ、自分の記憶では
サイエンス・ライターの告白の後、管理局の役人が
「もう君たちを逮捕する必要はなくなってしまった。
 君たちはこの世界を全人類にとって地獄に変えてしまったんだ」
と告げて去っていって終わり、だった気がするけど、
あえてはぶいたのか自分の記憶違いか

29 本当にあった怖い名無し:2013/07/11(木) 18:03:53.53
>>27
それで合ってますが、長くなりすぎるので省略しました。

 

地球は空地でいっぱい (ハヤカワ文庫SF)
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