絵画修復家キアラ/第6話「聖痕の画家」(たまいまきこ)

6421/2:2013/08/05(月) 14:24:00.67
たまい まきこ『絵画修復家キアラ』の中の
1エピソード「聖痕(スティグマ)の画家」。

中世イタリア。
主人公は、チビデブ娘だが天才的な画家・修復師。
ある地方の教会で血を流すキリストの磔刑図が話題となり、
聖蹟の審問員として絵画専門家の主人公も
同行することになった。

教会は聖画を見ようと集まった近隣の信者達で賑わっていた。
問題のキリスト像を描いたのは人気の美青年絵師で、
天使のような美貌を気に入られて諸貴族の家に出入りし、
法皇にも寵愛されていた。

法皇庁の図書館の閲覧を許されてからは熱心に学んで
神学・歴史・文化とあらゆる面に通じ、人柄は謙虚で徳高く、
絵画の代金もほとんどを孤児院など慈善事業に寄付していた。

件の教会のキリスト図も、13歳の頃に描いていた絵を
先ごろ寄進したものだという。
青年は近く枢機卿へと推薦される予定だ、と噂されていた。

「有力者の注文を受ければ、箔がついて
 素人には良い絵のような気がするだけ」
と主人公は画家としての青年の姿勢が気に食わず、
「僕の腕前はどうですか?」と本人に尋ねられても
「未熟で稚拙」とバッサリ。

しかし青年が真摯に評を聞き入るので、慌てて
「見習い時代の子供の絵なら普通あんなものです。
 気にすることはありません」
とフォローする主人公。
「容姿で先入観を持っていたのは私の方だったのかも知れない。
 もっと絵について語り合えばよかった」と反省する。


6432/2:2013/08/05(月) 14:25:14.15
そんな中、青年の手足に「聖痕」の傷が現れ、
民衆の崇拝熱はますます高まる。

一方、主人公は、キリスト図の裏に
赤い絵ノ具が塗りたくってあり
暖炉の熱で暖まると画布の切れ目から流れ出るよう
細工されていたことを突き止めた。

しかし、民衆は「奇跡」に水を指す主人公を認めず、
神の思し召しを否定する悪魔として魔女裁判にかけられる。
重りを付けて一時間沈め、
溺死せず浮いてきたら魔女として火焙りという例の手法。

ところが、主人公が沈められて少しすると
水がドス黒く濁っていき、
「これは少女の体に取り憑いていた悪魔の正体です!今や少女は潔白です!」
と青年が割って入り、水中から主人公を助けた。

予め重りに顔料を仕込んで
滲み出るようにしておいたものだった。
聖人の為した悪魔祓いの奇跡として
青年はさらに尊敬を集め、枢機卿となった。

青年は
「13歳の頃に描いたという触れ込みのキリスト図は、つい半年前の作品だ」
と主人公に告白する。聖痕も自傷で付けたものだった。
枢機卿となった今、
「やれやれ、聖痕の後遺症でもう絵筆は握れないというし、
 これで法皇様も彼の下手な絵の飾り所に頭を悩ませなくて助かる。
 知性も人徳も申し分ないのに、ご自分の絵の腕前に
 気付いておられないのだけが唯一の欠点だった。
 枢機卿になられて本当に良かった」
と他の聖職者たちが囁き合っている。

青年は、絵筆を折り、画材をまとめて燃やす。
いくら描いても下手の横好きなのは知っていた。
知識を深め精進したが、技能の向上には結び付かなかった。
手の傷も、絵筆を取れない程じゃない。

だが、これらの「聖蹟」は、進退極まった現状を打破し、
画家の道を諦めて皆の望むとおり
低い身分から聖職者に転向するには、必要な演出だった。
「神は私の絵を愛さなかった。私が神に望んだ唯一のものは、
 神が私に望まない唯一のものだった―――」


644 本当にあった怖い名無し:2013/08/05(月) 14:26:32.34
「天賦の才」とは逆に、
これだけ努力家で性格も善いのに、
「決定的な才能の欠如」って残酷だなぁと思った。

本人はべつに貴族にチヤホヤされて有名になりたいとか、
高い地位に出世したいとか望んでいたわけではないのに、
ささやかな夢は叶わず、一見して誰もが羨むような
サクセスストーリー(でも本人は特には…)に適性があった。

「なぜあの人があんな小細工を…?」と訝る主人公に、
主人公の相棒が「大人の事情さ」「天才のお前には解らないよ…」
と言っていたのが印象的だった。


645 本当にあった怖い名無し:2013/08/05(月) 15:18:58.68
面白そうな漫画だなと思ってググってみたら、
本当に主人公がチビデブ娘でワロタ

 

絵画修復家キアラ 1 (ぶんか社コミックス ホラーMシリーズ)
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