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233本当にあった怖い名無し:2014/03/03(月) 20:32:16.55
アメリカの作家ポール・オースターの長編小説「ムーン・パレス」

母親が事故で亡くなったばかりのマーコ・S・フォッグは、
母方の伯父と一緒に暮らしていた。
父親のことは母も伯父も一切話さなかったし、
マーコ自身も小さいころからそのことに触れないよう努めて生きてきた。

成長したマーコは、コロンビア大学で学ぶためニューヨーク独り暮らしをはじめる。
次々と小分けに送られてくる本は伯父の蔵書で、1000冊以上に及んだ。
マーコはそれらを読んでは売り、その金を生活の足しにしていた。
(マーコはかなりのクズで、この時一切アルバイトをしていない。
 生活はすべて伯父からの仕送りと、本を売った金で成り立っていた。)

やがて伯父は死に、本も全部売ってしまったマーコは、
あるとき同じアパートの住人から朝食に誘われる。
その友人で中国人のキティ・ウーという少女にされたキスの感触を頬に残し、
久々のごちそうに感謝して自宅に戻った。

が、家賃滞納でとうとうアパートを追い出されてしまう。


234本当にあった怖い名無し:2014/03/03(月) 20:33:59.20
相も変わらずバイトをしない。
ついにはセントラル・パークで死にかけているところを学友とキティに助けられる。

学友のアパートに居候させてもらっている間、
彼は徴兵検査の結果が不合格だったことや、
キティとデキていたことからやっとアルバイトを探すようになる。

見つけた仕事とは、車いす生活を送る盲目の老人トーマス・エフィングの
世話を住み込みで行う、というものだった。
衣食住が保証されるという点に魅了されて飛びついたマーコだったが、
すぐに後悔することになる。
エフィングはどうしようもないほどヘソ曲りの頑固者だったのだ。

なんやかやで数か月が過ぎたある日のこと、
何を思ったかエフィングは今からきっかり2ヶ月後に死ぬと宣言し、
マーコに死亡記事の原稿を口述筆記させる。

エフィングはこんな話をした。…


235 本当にあった怖い名無し:2014/03/03(月) 20:36:20.94
エフィングは本名をジュリアン・バーバーといい、画家だった。
結婚生活が上手くいっていなかった彼は、
親友に誘われてアメリカ西部をめぐる旅に出る。
いつも彼を拒んでいた妻も、出発の前の晩ばかりは
泣きながら自ら進んでその身体を差し出した。

さて、グランド・キャニオンまで来たとき、仲間のバーンが崖から転落してしまう。
あいつは助からないぜ、とと冷ややかに言う案内人をよそに、
ジュリアンはバーンを助けに崖を降りる。
案内人は去っていった。

バーンは重傷を負いながらもまだ生きていた。
三日三晩苦しみぬいた後、とうとうこと切れる。
ジュリアンはその場でバーンに墓を作ってやった。

次はジュリアンが生きる努力をしなければならなかった。


236 本当にあった怖い名無し:2014/03/03(月) 20:37:52.01
大峡谷の中、彼はある洞穴を見つける。
それは崖の側面にあり、谷底には小川が流れ、ちょっとしたオアシスになっていた。
苦労の末洞穴によじ登ると、そこで男の死体を発見する。まだ新しい。
幸い、家具も一式揃っている。
戸棚には、1人なら1年は持つであろう量の食糧が詰め込んであった。
彼はしばらくそこで暮らすことにした。

数か月後、死体の知り合いであろう男が洞穴にやってきた。
男は目の前にいるのがジュリアンだとは気付かずに、
列車強盗グレシャム兄弟の話をする。
死体の男はグレシャム兄弟とやらに殺されたのだ、とジュリアンは直感した。

その後のある夜、例のグレシャム兄弟+1人が洞穴にやってくる。
ジュリアンは彼らを射殺することに成功し、彼らが持っていた大量の債券を使って
グランド・キャニオンを脱出、近くの街へ生還する。

トーマス・エフィングと名を変え西部で事業を起こしたジュリアンは、
ある日父の友人に遭遇する。
生きていることが知れたら面倒だとパリへ移住するも、
1939年にドイツ軍から逃げるようにニューヨークに帰還する。
(このころからすでに車椅子)


237 本当にあった怖い名無し:2014/03/03(月) 20:40:50.95
その後、エフィングが自分に息子がいることを知ったのは
戦争が終わってからのことだった。
友人が偶然紹介した歴史書の作者がソロモン・バーバーという名前だったためだ。

友人に調べてもらったことによると、ソロモンの誕生日は
ジュリアンが旅に出たころから約10ヶ月後に当たることが分かった。
しかもソロモンは父親を知らないという。
彼が生まれる数か月前に旅先で死亡したと母親から聞かされていた。
ソロモンもマーコと同じコロンビア大学の学生で、
卒業後はそこそこ有名な大学で教鞭を執っていたが、
あろうことか醜聞に見舞われ辞職を余儀なくされたという。
学生のカマでも堀ったんだろう、とエフィングは幾分あざけるように語った。
今は田舎の三流大学を転々としているそうだ。


238 本当にあった怖い名無し:2014/03/03(月) 21:02:04.81
エフィングの物語を受け取ったソロモンは、
マーコに会うため約25年ぶりにニューヨークの地を踏む。
顔すら見たこともない父親についてマーコからいろいろ聞いた彼は、
父が暫く住んでいたというグランド・キャニオンの洞穴を探しに行かないかい、と提案する。
途中でシカゴ?に寄って母と伯父の墓参りをさせてくれるなら、と
マーコはついていくことにする。

道中マーコは自分に母親がいないこと、
クラリネット吹きの伯父と二人で暮らしていたことなど、自分のことについて話す。
大変だったね、と同情したり穏やかな笑みを浮かべるソロモン。


239 本当にあった怖い名無し:2014/03/03(月) 21:03:05.36
久々に訪れる母と伯父の墓は荒れ放題だった。
マーコが草むしりをしていると、なにやら押し殺したような声がする。
不審に思って振り向いてみると、なんとソロモンが贅肉に包まれた肩を震わせ、
顔をくしゃくしゃにして泣いているではないか!
「エミリー……エミリー……どうしてこんな姿に!」

彼のへの字に曲げた口から信じられない言葉が飛び出すのをきいたマーコは、
激昂に駆られこぶしをめちゃくちゃに振り回しながらソロモンに詰め寄った。
「なんであんたが馴れ馴れしく母さんを呼び捨てにするんだ!
 母さんのことなんか知らないくせに!」

詰め寄るあまり、ソロモンは足を滑らせて背中から墓穴に落ちてしまう。
背骨を折ったせいで病室で宙ぶらりんになった、肥満もここに極まれりというほどの巨体が
日に日に痩せていくのを見るのは、マーコもつらかった。

しかし、彼を見つめるソロモンの青い目がエフィングにそっくりなのを見て、
マーコは親子という関係へのノスタルジアを見出す。


240 本当にあった怖い名無し:2014/03/03(月) 21:05:10.45
とうとうマーコは予想していた通りのことをソロモンから告げられる。
――私は君の父親なんだ。

マーコの母エミリーは女学生時代、ハゲで肥満だが気さくな教授ソロモンに惹かれており、
彼らがたった一度だけ結ばれた、その瞬間を掃除婦に見られたのだという。
エミリーは大学を去った。子供を産むためだ。
ソロモンも去った。2人は2度と会うことはなかった。

ソロモンが亡くなると、マーコは唯一空いていたフォッグ家の場所に墓を作ってやった。
エミリーの隣だ。そこは元々マーコのための場所だった。

葬儀の後、彼はそのまま1人でグランド・キャニオンの洞穴を探しに行く。
「ああ、それならもうとっくにダム湖の底さ」。
そう近くの町の地理学者が言った。
何もかも終わった。

マーコは今頃になってキティを再び愛す気力が湧いてきた。
しかし、電話に出たキティはすでに別の男と付き合っていた。
(完)

 

ムーン・パレス (新潮文庫)
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