X-DAY(田村由美)

14 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/06/23(木) 09:12:52
BASARAなんかで有名な漫画家・田村由美が昔描いた短編集に入ってた話。
二人の少女それぞれの視点で2章に分けて描かれてたので、一応漫画の形式どおりに書きます。

<内気な少女視点>
内気でおとなしい1人の少女がいた。
その子は友達もおらず、クラスの女子数人からひどいイジメを受けていた。
そのイジメには主犯格の少女が1人いて、直接自らが手を下す事はしないものの、
どうやら取り巻きの女子数人をけしかけて内気な少女をイジメるよう指示しているようだ。
この主犯格の少女と内気な少女は幼い頃からの知り合いで、小学生ぐらいの頃も、
内気な少女が唯一友達としていた女の子を主犯格の少女が奪い、内気な少女は以来孤立してしまった。

ある日、トイレの便器に頭を突っ込まされた内気な少女はその後教室に戻るが、自分の椅子がない。
後方からクスクスと漏れる忍び笑い。
授業が始まっても座ろうとしない少女を不審に思った教員が座るよう指示するが、
内気な少女には「椅子がない」と申告する勇気がない。
仕方なく空気椅子の姿勢をとり椅子に座るふりをするが、もちろん周囲の生徒たちは椅子がないことに気付いている。
それでも誰もそれを指摘することなく、むしろ空気椅子をし始めた少女の滑稽さを笑い、馬鹿にするだけだ。
50分間の授業をずっと空気椅子で通した少女は(スゴイな、おい)ふらふらとした足取りで主犯格の少女のもとに行き、
「私の椅子をかえして」と勇気を出して伝えた。しかし、主犯格の少女は素知らぬふりで「何の事?」と取り合わない。
取り巻きの女子数人に脅され、内気な少女は何も言えなくなり踵を返す。
その時主犯格の少女の足につまづき、派手に転ぶ内気な少女。周囲の生徒は爆笑。


15 名前:続き 投稿日:2005/06/23(木) 09:16:56
何もかもが嫌になり、帰宅途中のアクセサリー店の前で立ち止まった少女は
ひとつのピアスを万引きしようと手に取った。
その瞬間、内気な少女は通りの向こうから主犯格の少女が自分を見ていた事に気がつき、
あわててピアスを放り投げる。
家に向かって駆け出した少女は、”絶対に見られた”と確信した。
あの少女はきっと、私の親にも、教師にも、クラスのみんなにもこの事を言いふらすに違いない。
盗もうとしたわけじゃないのに!
絶望のうちに帰宅した少女に、一本の電話がかかる。あの少女だった。
「今から行っていい?二人で話しようよ」
受話器を置いた内気な少女は青白い顔で立ち尽くした。あいつが1人で来るはずがない。
取り巻きの女たちと一緒になって私を脅すに違いない。

主犯格の少女が来るなり、少女を包丁でいきなり突き刺す内気な少女。
ほとばしる返り血に構わず包丁を何度も何度も振り下ろし、内気な少女は主犯格の少女を殺した。
後日警察に尋問される少女。殺害の動機を陳述している。
「だって、私をいじめるんだもの。嫌な子なのよ。本当に嫌な子」


16 名前:続き 投稿日:2005/06/23(木) 09:37:30
<主犯格?の少女視点>
少女がトイレに行くと、案の定知り合いの少女達が1人の少女をいじめていた。
少女は知り合いの少女達をとがめ、こんなくだらない事はやめるよう注意した。
トイレの便器にかがみこんでむせている少女に声をかけると、
少女は憎しみのこもった目でこちらを睨みつけてきた。
睨まれた少女はなぜ睨まれたのかわからず首をかしげ、
あの内気な少女はなぜ昔から私を嫌っているのだろうと不思議に思った。
小さな頃からの知り合いだったが、昔から、もう1人の友達と3人でいても
なかなか遊びに参加してこないような暗い子だった。
教室に戻って授業が始まるが、なかなか座ろうとしない内気な少女を見て、少女は不思議に思う。
教師に言われてしぶしぶ少女が座った途端、周囲から漏れる笑い声を聞き、
少女は何がおかしいのかわからず首をかしげた。
授業が終わった後、内気な少女は少女の席までふらふらと歩いてきて「私の椅子をかえして」と訴えた。
何の事かわからず「何の事?」と尋ねるが、内気な少女は何も言えず黙り込んだ。
騒ぎ始めた周囲の女子たちに追い払われるように内気な少女は踵を返したが、
運悪く少女の足につまづいてしまい、転んでしまった。
とっさに「あっ、ごめん!」と謝った少女だったが、内気な少女は何も聞こえていないかのように教室を後にした。
内気な少女が去った後で周囲の女子に何があったが聞くと、彼女達が内気な少女の椅子を隠したとの事。
またそんな事をして、と周囲の女子を叱り付け、少女は一度、謝らなくてはと内気な少女の後を追った。
アクセサリー店の前でピアスを手に取っている内気な少女を見つけた少女は声をかけようとしたが、
少女に気付くなり内気な少女は逃げるようにしてその場から駆け出してしまった。

17 名前:続き 投稿日:2005/06/23(木) 09:38:20
「あんなに怖がらなくてもいいのに」少女はため息をつきながらピアスを手に取り、
彼女はこれが欲しかったのだろうかと思った。
少女はそのピアスを購入し、プレゼント用に包んでもらった。これを贈って仲直りしようと思ったのだ。
いきなり訪ねては失礼と思い、先に電話をかけた。
鼻歌を歌いながら、内気な少女の家のチャイムを鳴らす少女。

(再び内気な少女視点)
血まみれで横たわる少女の手には、包装したピアスが握られていた。

「だって、私をいじめるんだもの。嫌な子なのよ。本当に嫌な子」     でおしまい。

非常に後味の悪い漫画だった。結構可愛い絵柄だったので特に。


20 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/06/23(木) 12:25:49
GJ、ありがとう。
少女モノならではの陰湿な後味悪さ、堪能しますた。
構成がしっかりして、
作者の視点が情に流されきってないだけに、やりきれないね。

 

きねづかん (小学館文庫)
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