今は静かな(三原順)

467 名前:1/4 投稿日:2005/09/23(金) 17:39:38
確か前スレで明智抄が出てたので、同じ花とゆめつながりの三原順で。
筋が込み入ってて説明しづらいのですが「今は静かな」って話がかなり後味悪い。

半年前、アービンの父親ビリーは救援活動をしに遠い国の難民キャンプへ旅立っていった。
母親のフローラは反対していたが、「飢えた子供たちを助ける」という大義名分の前に、
結局は父親を見送るしかなかった。

そして半年後…ビリーは病に倒れ、帰国してきた。
ビリーが入院している病院に見舞いに来たアービンたちに、
「ベッツィ(アービンの妹)は来なかったのかい?」
と尋ねるビリー。
ベッツィは彼が留守の間、火事で亡くなっていたのだ。
アービンは
「ベッツィは病院が嫌いなんだ!忘れた?」
「父さん、いったい何のために行ってきたの? 病気になって逆にみんなに迷惑かけてさ」
そう言い捨て、病室を飛び出すアービン。
一緒に見舞いに来たビリーの親友、ウォルターから、ベッツィは死んだと聞かされ、驚くビリー。
その後も、アービンはビリーに対して、ベッツィが生きているように振る舞う。
誰もいない窓に向かって妹に話しかけるアービンを心配するビリー。


468 名前:2/4 投稿日:2005/09/23(金) 17:40:29
アービンの幼なじみの姉弟、ヴィヴとジョンの家には病気で寝付いている祖父ダニエルがいる。
彼は園芸が趣味で小さな温室を持っていたが、彼が寝付いてからは世話をする人もなく、、
近く温室を取り壊して家を増築することが決まっていた。
しかし、祖父が悲しむことがわかっているので話を切り出せずにいるヴィヴたち。

ある夜、アービンはあることを確かめると、
ダニエルの部屋に忍び込み、温室の農薬を持ってきたから飲むようにと勧める。
今ならダニエルも温室を取り壊すのを見ないですむから、と。
温室がなくなることを知っていたダニエルはそれを受け取った…。
翌朝、死んだダニエルの部屋からウォルターのライターが発見されたことから彼に容疑がかかるが、
ウォルターはアリバイを黙秘、殺人容疑で逮捕されてしまう。

相変わらずベッツィが生きている風に振る舞うアービン。
アービンに対して、自分がいない間母と妹を守るよう、
兄としての役割を背負わせすぎたのではないかと心配したビリーは、
妹が死んだ現実を見させようと、医者の手を振り切って帰宅し、
アービンを元住んでいた家の焼け跡に連れて行く。
しかし、アービンは正気だった。
妹が生きているように振る舞っていたのは、母親とウォルターの関係を父に気づかせないための芝居だったのだ。


469 名前:3/4 投稿日:2005/09/23(金) 17:40:59
ビリーが旅立ってまもなく、家に泥棒が入った。
もともと神経の細かった母親は、すっかりおびえてしまう。
そして火事とベッツィの死。…そんな中で、手をさしのべてくれたのはウォルターだった。
「誰が飢えて死のうとそんな事私は知らない!知らないわ! …抱きしめて! 私を離さないで」
やがて離れられない関係になっていく二人。
アービンの目から見ても、幸福そうに、綺麗になっていく母親。
しかしビリーのことを好きだった二人は、彼を裏切る事も出来ずにいた…。
そしてアービンはウォルターがダニエル殺しを否認出来ない理由をほのめかすと、
ジョンと湖に行くと言い残して行ってしまう。

ビリーはフローラにウォルターの無実を証言させるため、車で彼女を警察に連れて行く。
ためらう彼女に、彼を見殺しにするのかと責めるビリー。
「私達はあなたを愛してたわ!」
泣き出すフローラにビリーは尋ねる。
「アービンは私達はもう終わりだと行った! ほんとうにそうなのか? ボクが君たちを許しても…」
「許してビリー これまでの事を…そしてこれからの事を許して」
「フローラ…愛してる! 君も…ウォルターも」
そう言うとビリーは車を止め
「これ以上運転していられそうにない…タクシーを拾ってくれないか…」
ビリーはフローラにキスをして、「君がウォルターを救える」と彼女に言う。
タクシーで警察へ向かう彼女を見届けると、ダニエル殺しの真相に気づいたビリーは、
アービンがいるはずの湖へ向かう。

ビリーが湖に着いたとき、アービンとジョンはボート遊びをしていた。
沖へ出たところでボートに水が入り、船が沈みそうになる。
泳げないジョンは泣き出すが、
「ボクの父さんが必ず助けてくれる」
と笑顔で慰めるアービン。
「来て!父さん!!」
ビリーは意を決して沖に向かって泳ぎ出していく…。


471 名前:4/4 投稿日:2005/09/23(金) 17:44:45
ラストはアービンとビリーの葬式の場面。(二人が死んだ事ははっきり描かれてはいない)
夫と息子を亡くしたフローラにそっと寄り添い、肩を抱くウォルター。

ヴィヴはアービンが以前してくれた話の結末を思い出す。
それは暴風雨と船火事に遭った豪華客船の話。
救命ボートに乗り損ね、船に取り残された人々は、現実に起こっている事を受け入れる。
「もう いんちきな希望でごまかす事もない 誰かを踏みつけにして逃げていく事もない
もう誰も恨まず誰とも争わず 人々の心にあるのはただ…愛だけ」
彼らはそのまま死んでいく…
結末に納得いかないヴィヴは叫ぶ。
「ホントにひどいわ! そんなんじゃお話にも何もなりゃしないわ!」
そしてダニエルの葬式の時、アービンが慰めてくれた言葉を…。
「泣くなよヴィヴ むしろダニエルは彼と君たちの幸福を守ったんじゃないか」

誰が悪いってはっきり言えなくて後味悪いです。


489 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/09/23(金) 19:36:58
>>467-471
>「もう いんちきな希望でごまかす事もない 誰かを踏みつけにして逃げていく事もない
>もう誰も恨まず誰とも争わず 人々の心にあるのはただ…愛だけ」

この台詞カッコイイなー。
母親の言った
「誰が飢えて死のうとそんな事私は知らない!知らないわ! …抱きしめて! 私を離さないで」
って台詞は出発前の夫に言えよと、
浮気の言い訳に聞こえてきてこれまた後味悪い。


492 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/09/23(金) 20:19:50
>>471
ウォルターとしっぽりヤって、今後も一緒に幸せになりそうな母親も嫌だな

 

X day (白泉社文庫)
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