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624 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/12/04(日) 09:42:31
タイムスリップ戦時もの「埴生の宿は…」という自主製作出版漫画(いわゆる同人)

サッカー留学でドイツにやってきた少年がいた。
しかし言葉の壁や世界の実力の壁にぶち当たり、鬱々とした日々を過ごす。
保護者が気晴らしにと街へと連れ出してくれるが、休みはきっちり取る欧州では、
日曜日はことごとくお店がお休み(少なくともこの漫画が描かれた当時は)
ますますくさってしまった少年は、保護者と別行動を取り、ふらふらと街を歩く。

やがて一軒の間口の狭い店に吸い込まれるように入っていった。
そこにはニーナという少女とその両親が経営するちいさな食堂だった。
屈託なく自分を受け入れてくれるニーナとその両親に、肩の力が抜けた少年はそこに心の安らぎを求め、
その余裕から肩肘張ったところがなくなったこともあり、チームメイトとも打ち解けられるようになる。
全てが穏やかに運んでいるかのように思っていたが、やがて少年はニーナの周りに些細な違和感を感じる。
学校制度や配給などといった聞きなれない単語が会話の端々に現れ、
徐々にまさかと思っているうちに少年は決定的なものを見る。
ニーナと一緒に買い物に行った時、いつもと同じ町並みなのにどこか違うようなものを感じ、
そして通りに軍人の姿と連行されるユダヤ人を見たのだ。ニーナはそれを見て悪びれもせず
ユダヤ人を毒づく。驚愕した少年はニーナに今は何年だと問うことしかできなかった。
返ってきた答えは「1943年」だった。
ニーナもその両親もヒトラー総統の正しさを信じ、ドイツの勝利を信じていた。
少年はそれに何も言えなかった。平和で豊かな日本に育ち、
誰も死ぬことのない世界で育った自分に何が言えるのだろうかと。
自分が過去と未来を食堂の扉を通じて行き来できるのなら、
せめてニーナの家族も連れてこれないものかと少年は思案する。


625 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/12/04(日) 09:44:45
一家を自分の家へ招待する約束を取りつけた後、少年はまたニーナとお使いにでかける。
そしてまた街角でユダヤ人狩りを目撃してしまう。その場に固まる少年。
しかしニーナは悪い人たちなんだから早く行こう、と無邪気にせっつく。
ニーナの育った環境を思い、そして目の前で繰り広げられれている光景は既に過去のものであり、
ユダヤ人たちは自分の世界では既に死んでいるものたちなのだから、と無理に思いこもうとする少年、
しかし、やはり絶えきれなかった少年は軍人たちに制止の言葉を投げかけてしまう。
お前も仲間かと軍人に連行されそうになる少年を、ニーナが庇おうとする。

そこに突然の空襲警報が鳴り響いた。軍人も群集も逃げ惑い、
その混乱に乗じて少年とニーナは逃げ延びることができた。
しかしドイツの街は炎に包まれ、あの過去と未来を繋ぐ食堂の扉もどうなったかわからない。
なんとか食堂に辿りついた二人だったが、ニーナの両親は避難したのかどこにもいない。
せめてニーナだけでも、と少年は彼女の手を引いて扉へ向かう。
しかし扉に手をかけた時、吹きこんできた風で少年の帽子が飛び、それを取ろうとした
ニーナが手を離してしまう。その瞬間爆音が鳴り響き、気がついた時には少年はただ一人、
現代に戻っていた。戦前と寸分たがわぬ町並み。戦後すぐに市民たちが力を合わせて、
少ない資料から完全再現させた誇り高い街だった。
しかしもう、小さな食堂の扉が過去へ向けて開くことはなかった…。

後味悪いっていうよりもの哀しい話でした。


627 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/12/04(日) 12:20:47
扉を出た直後ニーナ白骨に、というオチかと思った。

後味悪い
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