傷あと(望月花梨)

43 名前:1/3 投稿日:2006/07/22(土) 00:09:41
望月花梨の「傷」

主人公は無口な少女。
その無口さのせいで起こる後味の悪い話が時系列順に語られて行く。

小学校低学年ぐらいの主人公は、従姉の車に乗っている。
無口で友達のできない主人公に従姉は
「いざという時に大事な事を言えないでしょう」と言う。
用事があって車から降りる従姉。主人公は同い年の従弟と共に車に残される。
外では雨が降っていて、暇な主人公は曇りガラスに絵を書いていた。
いきなり、従弟が胸をさわってきた。やめてと言ったが「さわらせろよ」と怒鳴られた。
従姉が帰って来ると、何事もなかったかのように平然としている従弟と、
激しく泣きじゃくる主人公の姿があった。「お腹が痛いんだって」と従弟は言う。
違うと言おうとするが、見えないように足をつねられ牽制された。
どうして自分はお腹が痛いふりなんてしてるんだろう、
どうして何も言えないんだろうと、泣き続けながら主人公は思った。

小学校高学年になった主人公は、いじめのようなものを受けていた。
いじめっ子たちは理科室からプレパラートを盗んでくるよう主人公に強要していた。
プレパラートを窓から落とすと、地面に落ちて割れる瞬間がキラキラしてとても美しいのだ。
教員たちはもちろん教材を盗む事など許さず、戸締りを強化したりと対策していたが
プレパラートを持って行かなければひどい目にあうと主人公は隙を見て理科室に忍び込む。
なんとかプレパラートをげtできたものの、教員たちがやってくる気配がした。
焦りながら窓の外を見ると、いじめっ子たちが歩いていた。
「パス!」主人公は叫びながらプレパラートを投げつけた。
いつもは節約していちまいずつ落とすプレパラートが大量に落ちて行くその様は、
キラキラと輝きとても美しく、主人公もいじめっ子たちも呆然と見惚れてしまう。
だがそれは一瞬で、すぐにプレパラートを大量に浴びたいじめっ子たちの悲鳴が聞こえた。
大事には至らなかったが、薄いガラス片を大量に浴びたわけでいじめっ子たちは無傷ではすまなかった。
後日、教員によって、包帯を巻いたいじめっ子たちに主人公は謝らされた。
「私達何も知りません」口々に主張するいじめっ子たちによって、全ては無口な主人公のせいになった。


44 名前:2/3 投稿日:2006/07/22(土) 00:11:25
中学生になった主人公がトイレに行くと、目立つタイプの子が先生に怒られているところだった。
彼女は生理用品を用具入れに無断で置いていて、トイレを私物化するなと言われていた。
「でも私だけじゃなくて、いきなり来ちゃった子とかみんな使ってるし便利なんですよ」
彼女は言うが、先生は怒りつづけ、二人はそのままトイレを出て行った。
すると、個室に入っていた女の子が出て来た。目立つ子の友達だ。
しかし、エキセントリックで短気で周りに喧嘩売りまくりという感じの目立つ子と違い、
大人しくて目立たないタイプだ。どちらかというと無口で主人公と似たタイプ。
内気な子は小学生の時にトイレにナプキンを持ち込んでいるところを男子にからかわれ、
それ以来目立つ子は内気な子のためにトイレにナプキンを置いておくようになったのだという。
そんな小学生の時の事を、先生に反抗してまでやらなくたっていいのに、と内気な子は呆れた様子。
目立つ子のエキセントリックさにもついていけなくなったのか、似たタイプの主人公といい感じになる。
「もしかしたら友達になれるかも…」と主人公は期待するが、外から怒声が聞こえてきた。
目立つ子が、以前に喧嘩を売った男子たちからリンチを受けているらしい。
内気な子は主人公と話しながらもそわそわした感じになりあげくに
「すぐ帰るね」と言い残し、何故か掃除用のモップを手に出て行き、そのままいつまでも帰ってこなかった。
主人公は待ってと引き止める事すらできず、ただ無言で床に落ちていたナプキンを踏みつけた。

45 名前:3/3 投稿日:2006/07/22(土) 00:13:25
高校生になった主人公は、以前の無口さなど微塵もなく、
友達もたくさんいて誰にでも話しかけおちゃらける明るいキャラになっていた。
ある日、片思いの相手の少年が持ち歩いているノートが気になり盗みだしてしまう。
読み終わったらすぐに返そうと思ったが、開いて見ると中は英文だらけで時間がけっこうかかりそうだった。
英語辞書を片手に和訳していく。それはどうやら交換日記のようだった。
英語の苦手な少年のために、少年の姉が英文での交換日記を提案したようだった。
今日あった出来事などを和やかに書き綴って行く二人。
だが雲行きがだんだん怪しくなる。少年はやがて、姉への欲望を吐露していく。
噂に聞くところだと、少年には親の再婚によって義理の姉がいるのだという。
だけど血がつながらないわりに顔がよく似ており、それには複雑な事情が関わっているらしい。
和訳するにつれ、学校での明るい少年の姿が崩れて行くように思えてきて、
主人公は恐れを抱いて日記を少年の机の中に返す。その姿を同級生の男子たちが見ていた。
恋文でもあるのかと思った男子たちは机の中を覗き、日記を取り出した。
翌朝学校に行くと、少年の日記とその和訳が黒板に貼り出されていた。
ざわめく人々の中、すぐに黒板を消しにかかる主人公に
「もともと読んだのはお前じゃんか」と貼り出した男子たちが言ってくる。
その後ろには当の少年がいた。少年は主人公の名を叫びながら、主人公を殴り倒す。
「お前だろ、お前がやったんだろ、なんとか言えよ、おい」
何も答えない主人公に圧し掛かり、激昂した少年は首を絞める。
周りの生徒が止めに入り、少年は引き離された。
荒く呼吸しながら泣く主人公。友人は男子を責めながら
「あんたもなんで何も言わないのよ」と主人公に訊ねる。
なにを話そうと、やっぱり自分は肝心な時には何も言えないのだと主人公は思う。

それらの記憶を思い出しながら、今でも疼くこの傷をそれでも愛しいと思うと主人公は語る。


46 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/22(土) 00:20:58
>>43-45
乙。最後の「愛しい」って感情がいいと思ったけど、
その傷は少年に首を絞められたアザってことかな。それともそれらの体験全般を指して?
前者だとしたら、切なくもモヤモヤする乙女心だ。

47 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/22(土) 00:23:31
全部の体験って感じでした。
疼く傷も自分の体の一部だからと。

53 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/22(土) 02:20:04
>>43-45
なんか個人的には後味悪いというよりは胸糞だなぁ。
自分がこういう主人公みたいなタイプが嫌いだからかもしれんが。

 

笑えない理由 (3) (花とゆめCOMICS)
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