ディスカスの記憶(大崎善生)
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791 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/09/03(日) 00:59:13
- 大崎善生 短編集「別れの後の静かな午後」の中の「ディスカスの記憶」
細かいところはうろ覚えなのですがご容赦を。東京に住む主人公(早川)に、見知らぬ女性から謎めいた電話がかかってくる。
どこで名前と電話番号を知ったのか?という問いに、警察から聞いた、という。
数年前のある時期に、姉が殺され、事件は未解決だ。その周辺で何か変わったことがなかったか?
女性の話は要領を得ない。裏を取ろうにも、殺人自体、報道されなかったようだ。
実際に会って話をすることになるが、普通の真面目な会社員らしいその女性は、
冷やかしやおかしい様子があるわけではなく、真剣でせっぱ詰まった様子である。
身分証を数種持ち歩き、このことで見知らぬ人と会い続けていることを伺わせる。早川には、ささいだが心当たりがあった。
早川は、繁殖が非常に難しい「ディスカス」という熱帯魚を飼っていて、
pHなどの水の状況を毎日細かく記録している。
まさにその時期のある日に、たくさんのつがいが一斉に産卵をした。
何かの理由で水が変わったのだ。おそらくその日、早川の住むマンションで、その女性の姉が殺され、
死体は屋上の給水タンクに放り込まれた。そのために、水質は激変した。
女性が詳しいことを話せないのは、警察に口止めされているから。
給水タンクで遺体が見つかったものの、ずさんな管理のため亡くなった時期が絞り込めず、
足取りや犯人を特定するのが困難だった。
(姉は仕事を辞めていたか何かで、人と接点がなくなっていた?)都会のマンションの給水の管理がいかにずさんで、汚い水に接しているか、
この殺人の顛末が知れたら騒ぎになるだろう。
報道が制限され、素人探偵にも口止めされることは想像できる。
女性は、それでも、離れて暮らしていた姉のために、なんとか犯人を見つけたいと行動していたのだ。
このあと、早川の記録が証拠になり日にちが特定できたことで、犯人が逮捕される。
報道はやはり最低限度のものだった。———-
早川は都会で犠牲になった姉と、姉を慕う女性に同情し、終始理解がある態度なんだけれど、
自分とこの水が・・・マンションの人だって・・・
煮炊きに使いはしないんだろうけど、風呂とか洗顔とか・・・
いや結局知らないほうが幸せなんだろうけど・・・