幽霊になりたくない(伊藤潤二)
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656 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/12/10(日) 17:55:06
- 幽霊になりたくない
その女と出会ったのは偶然かわからない・・
主人公は夜中の山道を車で走っている途中に、
こちらに背をむけて佇んでいる女を目撃した。
主人公は不信に思い、その女に声をかけ、顔をのぞきこむと驚愕した。
その女は顔中血まみれだったのだ。
主人公は幽霊かもしれない・・と怯えながらも、その女を病院へ連れていった。
医者が調べたところ、女は顔中血まみれにもかかわらず無傷で、
女の顔についていた血は本人の血ではないとのこと。
女は何も語らなかったので真実は不明のまま、女は警察に引き取られた。数日後、主人公の家に女が訪ねてきた。
その女は数日前に主人公が病院へ連れて行った女だった。
女の名は美咲といい、あの場所には自主映画の撮影のためにいたらしいが、
一人だけ取り残されて、血まみれのメイクのまま途方に暮れていたというのだ。
主人公にはお礼が言いたくて訪ねに来たらしい。
そして美咲は帰り際に主人公にそっとメモを渡した。
そのメモには「また会ってくれませんか」と一言と美咲の携帯番号が記されていた。
主人公には妊娠中の妻がいたが、美咲は若くて魅力的な美人だったのでつい誘いにのってしまう。
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657 名前:続き 投稿日:2006/12/10(日) 17:56:55
- 何度目かの逢瀬のあと、ベッドの中で主人公はなぜ美咲が自分を誘ったのかを聞いた。
すると美咲は「あなたには背後霊がたくさんついてるから」と言った。
美咲には幽霊が見えるし、幽霊が好きらしい。
美咲の母親は自分がおなかの中にいる時に亡くなり、
美咲はその死亡した母親の身体から産まれ、母親は死後も美咲に乳を与え育てた。
それ以後美咲にとって幽霊は栄養であり、幽霊の栄養ではないと満足できないのだと語った。
主人公は美咲の横でウトウトしながらその話を聞いていたが、やがて眠りについた。
眠りから覚めたあと、美咲を起こすために横をむいた。
なぜか、またもや美咲の顔は血まみれになっていた。
主人公はそのまま逃げ帰ったが、妻に浮気の有無をなじられ、美咲に別れ話をもちだす。
数日後、主人公が仕事から自宅へ帰ると、美咲と不機嫌そうな顔の妻があった。
どうやら浮気がばれたらしい。当然ながら揉めに揉めて、
もともと妊娠中で不安定だった妻はしばらくして自殺した。悲嘆にくれる主人公。その横にはまだ美咲がいた。
いいかげん美咲とは縁を切りたかったのだが、
美咲は主人公の背後霊を食べきってからではないとダメだと言う。
主人公は相手にしないが、美咲は信じるも信じないもあなたの勝手と言い、
新たに主人公の背後霊となったらしい妻と子らしき空虚なモノを捕まえ貧り食った。
美咲の捕まえたモノからは、血しぶきと叫び声があがった。その叫び声は確かに妻のものだった。その後も美咲は度々主人公の背後霊を貧り食うためにやってきた。
主人公は運に見放され、仕事も家を失い、ついには路上生活者になり、病院で死にかけていた。
そして傍には主人公が幽霊になるのを待ち続けている美咲の姿があった・・何が後味悪いかって、主人公は自業自得といえばそうなんだけど
主人公の妻が旦那に浮気され、自殺に追いこめれたあげく、
死後を子供と共に愛人に食われるというのが何とも・・・