ホーム » 小説 » 小説/さ行 » 刹那に似てせつなく(唯川恵)

592 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/02/05(月) 09:18:35
「刹那に似て切なく」

パートとして社内に潜りこみ、社長の子息の命を狙っている女の日々からはじまる。
社長の子息が電話に向かって話している内容を聞く女。
「パスワードは今までの中で一番具合のよかった○年前の子の名前にした」
「ネットに流す?貧乏人どもに俺の宝物は見せられないよ」
ってな事を話している。
女は子息がいなくなった隙に子息のパソコンを立ち上げ、
パスワード欄に自分の娘の名前を打ちこんだ。
すると、目も当てられないようなひどい画像が次々に出て来た。
女はパソコンのデータを消去し、戻ってきた子息を撲殺した。

そこにフィリピン人とのハーフの女がやってくる(以下フィリピン)。
フィリピンは逃げる様子もなく呆然としている女を放っておけず、なんとなく連れて逃げてしまう。
フィリピンは今では日本国籍を持っているがかつては不法滞在者として裏で生きていた。
学校も行けず、母が失踪してからはヤクザの世話になっていた。
しかしヤクザも親切でフィリピンを育ててくれたわけではなく、
ヤクザはフィリピンを、ロリコン(社長の子息)に餌として与えた。
そして何度か堕胎させられたあげくに、
やっと心から愛せた人を殺され、その人の子供も流産させられた。
積年の恨みを抱えたフィリピンは、ヤクザを殺し、
そして自分に酷い事をした子息を殺すために現れたのだった。

高飛びする予定だったが仲間に金を騙し取られたフィリピンはもう自分も終わりだと落ちこむ。
女は、自分の娘も生きていたらフィリピンと同じぐらいの年だった……と、
フィリピンに自分の娘を重ねて、高飛び用の金を用意して無償でフィリピンに渡した。
目的を果たした自分はもう捕まっても、子息の関係者に殺されても良いし、
お金などいらないからと。そう言う女をフィリピンも母のように思いはじめる。

女はかつて娘とすごした日々の事を思う。
不倫の果てに出来た子供で、男と手を切り一人で育てた。
仕事ばかりであまりかまえなかったが、娘は立派に育った。


593 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/02/05(月) 09:20:25
だが娘は小学六年生になったある日、いきなり自殺してしまった。
遺書にはただ「ごめんなさい」とだけ書かれていて、誰もその理由を知らなかった。
ある日、転校して今では娘の文通相手になっているという少女から連絡が来た。
最後に娘が送ったという手紙を読み、女は驚愕する。
娘はよく学校帰りの道で見かける男にいたずらされていた。
自殺した日にまた会うよう強いられており、誰かにばらせば写真をばらまくとも言われた。
どうすればいいだろうと切々とその手紙には綴られていた。

手紙に書かれていた男の特徴や、会った場所などによりすぐに相手が誰かはわかった。
しかし、唯一の証拠である手紙は強奪され、娘の名誉を傷つけるような捏造された証拠が次々と提出される。
母子家庭で親の監督がない事を利用して、小学生でありながら男に体を売る娘だとされ、
しかし罪悪感と、どれだけ乱れようと気づかない母への憤りで自殺したと噂を流された。
顔写真と実名入りでそう報道する週刊誌もあり、裁判では相手の男が出る事もないまま負けた。
「これ以上死んだ娘の恥を晒したいのか」とはじめは応援してくれた近隣の人々にも中傷され、
もう、法の力に頼れないなら自分の手で仇を討つしかなかった。

復讐の機会を待ちながらもいつしか「本当に世間の言う通りだったのかも」と揺らぎ始めた女。
しかし殺害の日、娘の名前のパスワードを入れて出て来た決定的な写真の数々に殺意を揺るぎない物にした。
そして、娘を疑った自分を恥じた。

フィリピンの高飛びの準備が整ったところに、やってきた警察官たち。
ヤクザから逃れ回るうちに、ろくに治療もしなかった流産の後遺症に苦しむようになっていたフィリピンは、
大量の血を流しながら倒れ、女に抱かれながら息絶えてしまった。
迫りくる警官たちに女は逮捕されようとしていた。

いくら世間の晒し者にしたくないからといっても、
娘の写真を消去しちゃえば完全に証拠はなくなるし、
女は世間的にはただの勘違い殺人女扱いされて
娘も援助交際してた小学生扱いのままなんだろかと思うと……

 

刹那に似てせつなく (光文社文庫)
刹那に似てせつなく (光文社文庫)


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