スター・レッド(萩尾望都)

279 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/04/07(土) 02:07:36
典型的な後味の悪さではないが
萩尾望都の「スターレッド」は切なく苦い。

23世紀の地球が舞台。
主人公のセイは医者(多分)の父を持つ、真面目な女学生。
だが実は、夜な夜なバイクをぶっ飛ばし、男顔負けの運転テクを持った
暴走族のヘッドである。(この辺は古い作品なので・・・)

セイは赤い風の吹く、夢魔の星である火星に異様に惹かれている。
過去、火星は地球人の流刑地(うろ覚え)として使われており、
現在では地球人と、流刑人の子孫(火星人)が対立しながらも暮らしている。
優位なのは地球人で、既に大きな都市を形成し、火星人は僻地へ追いやられた。
ちなみに火星ではある一定の場所でしか、子供を産む事が出来ない。
その場所は火星人の聖地でもあり、火星人はそれを取り戻したいと機会を窺っている。
(そうしなければ、火星人も子孫を残せないため)

火星人達は特殊な環境の中で育つ事で、頭髪が白く、目が赤く、
そして特殊な能力(超能力の様なもの)を持っている。
実はセイは最後の火星人だった。


280 名前:279 続き 投稿日:2007/04/07(土) 02:09:18
セイは異星人であるエルグと出会い、火星へ旅立つ。
火星で様々な事があり、地球人に正体がばれ捕まったり、
ついには火星人からも命を狙われる事になる。
(予言者が「不吉」と予言した。中には「希望」の様なニュアンスを
告げたものも居たが、多数決で殺す事に決まった)

その後、「委員会」と言う存在(地球より高度な文明を持つもの達が
作り上げた管理機関の様なもので宇宙の均衡を守る事を使命とする)と出会い
火星は「夢魔の巣喰う星(=宇宙の均衡を崩す危険な星)」だと告げられる。
そして「その前に火星を消滅させる」とも。

「存在する事さえも許されないのか」と悩むセイに
異星人のエルグは、自分が6千年以上前(多分)に同じ様に消滅させられた
星の唯一の生き残りである事を告げる。
エルグは強いテレパシー能力を封印する事で、生きる事を許されている。
エルグはセイの為に「君の為の新しい星を見つけよう」と言う。

エルグとセイは、夢魔に取り付かれた太古の星へ向かう。
(うろ覚えだが、何か解決策が無いかを探しに行ったのだと思う。
この星は既に滅んだ死んだ星の様で、生命の姿はない)
しかし、そこでセイは虚無の中に引きずり込まれ(星とシンクロしてしまった?)、
姿を消してしまう。一人残されるエルグ。


281 名前:280 続き 投稿日:2007/04/07(土) 02:10:04
セイは4次元の様な所へ飛ばされ、そこで火星人の1人、ヨダカと出会う。
ヨダカとセイは、そこで火星がついに消滅する事を知る。
ヨダカはセイに「僕が身体を変化させて、君を生んであげる」と言い、火星へ戻る。
火星にいる火星人達も「ヨダカが生む子供は最後の火星人となるだろう」と
予言し、どこかへ消えて行く。
その子供の暮らす場所が、我々の新しい赤い星である、とも。

一人残されたエルグは長い間セイを探したが、
ついに「僕はこれから狂う事にする」と封印されていた
テレパシー能力を解き放ち、宇宙のどこかに居るかもしれないセイに向けて
「君を愛している」とメッセージを送る。

6千年の孤独全てをセイに埋めて欲しかった、と思いながら
星と同化して姿を消すエルグ。
そのテレパシーにより、滅びた筈の星に生命が蘇り、それは宇宙へと広がって行く。

その後、ヨダカは地球で子供を産み、その子供はセイと名付けられた。

最後のエルグの行動は、大人になって読み返せば理解出来なくもないが
どうしても報われない後味の悪さを感じてしまう。
生まれ変わったセイは、エルグの愛したセイではないのだが。
とても美しい話なので、興味があれば読んでみて欲しい。


282 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/04/07(土) 02:16:58
セイは四次元に行った時点で体がなくなったりしたの?
それをヨダが取り込んで産みなおしたってこと?
体が残ってたのに産みなおされたなら恐いかも

283 名前:280 続き 投稿日:2007/04/07(土) 02:32:49
>>282
あ、ごめんね、説明が足りなかった。

セイは身体ごと消えたと思う。
でも確か、ヨダカは身体が火星に戻ったか、残っていたのかで
元に戻る事が出来たけど(四次元に来たのは魂?精神だけ?ちょっと覚えてない)
セイは身体ごと来てしまって、そのまま戻る事は出来なかった様な。

後日、セイの精神体(?)だけが
新しいセイの前に姿を現したりしていた記憶があるので、
新しいセイが、そのまま過去のセイではないのかな、と思った。
(じゃあヨダカの「生んであげる」って何?って気もするが)

星に取り込まれたセイは、いつか宇宙に溶け込んだエルグと出会える、
と解釈すれば、後味は悪くないのかもしれない。

今手元に本がないので間違ってたらごめん。
解釈の仕方も色々ありそうだ・・・。

 

スター・レッド (小学館文庫)
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