ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その67 » 時じくの香の木の実(山岸凉子)

945 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/04/18(水) 01:27:59
山岸涼子の漫画「時じくの香の木の実」(文春文庫「夜叉御前」収録)

まとめたら長文過ぎたので、まず簡単に書いておきます。

・とある一族に腹違いの姉妹が居る
・姉妹は「一族の巫女」になる為の試練を受ける
・姉は死にかけ、妹は元気。妹は勝った!と思う
・持ち寄られる相談にスラスラ答えて行く妹
 結果、一族は国の重要ポストに就く様になる
・ある日、大好きな長兄が、姉と同衾している所を見てしまう妹
・妹激情、2人の間に割って入るが、何故か2人は行為を続けている
・実は妹は、試練を受けた際に死んでいた。
 死ぬ事で不老不死となっていた事、姉がその伝達役を担っていた事を知る。
・本当の巫女は姉だった、と妹はショック。それでも不老不死だから私の方が上だ!と思う
・姉は一族を追放され、その後ひっそり生んだ子供を一族に奪われる
・その子供は男でもなく女でもない存在だったので、一族のトップになる事に
・子供が8歳になり試練を受けるまでの間、妹は口も聞けず身動きもできない
・妹は”子供が8歳になった時、一族に世界を掌握出来る程の力を与えよう”と考える。
 理由は、そうする事で姉に勝ったと証明出来るから
・私は子供の姿をしているけど、子供じゃないのよ、と語るシーンで終わり
 妹の背景に、明らかに世界滅亡を想像させるカットが描かれている

以上です。これじゃあんまりなので、長文の方もおいて行きます。


946 名前:「時じくの香の木の実」1 投稿日:2007/04/18(水) 01:29:14
とある巫女の一族の2人の腹違いの姉妹の物語。
正妻の娘である日向と、妾の娘である日影は
日向が8歳になったある日、大叔母の屋敷へと招待される。
日影は妾の子供だが、日向より2ヶ月前に生まれており
先に生まれた妾の子か、後に生まれた正妻の子か、
どちらに後を継がせるか、で試される事となった。

大叔母は「それを食べると、お前達のどちらかが
永遠に年をとらぬ者となります」と言い、
干した果物の様なものを2人の前に出す。
一族が見守る中、2人はそれを食べるが、
身を貫く激痛に悲鳴を上げ、気を失う。

日向が目を覚ますと、姉の身体は紫色に膨れ上がり、今にも死にかけていた。

日向は自分の勝利を知った。
しかしその代償として、聴力を失う事になった。


947 名前:「時じくの香の木の実」2 投稿日:2007/04/18(水) 01:30:12
時の流れがあやふやに感じられる中、それでも1年程が経過し
日向は偶然、日影の姿を見かける。日影は生きていたのだ。
ひどく腹を立てる日向に、父は酒や魚を持ってくる。
子供だからお酒なんか要らない、と思う日向の前に
10歳年離れた長兄が美しい反物を持って来てくれる。
日向はその兄を好きだったのと、反物の美しさで機嫌を直す。

ふと見ると、父の持って来た魚の上に手紙がおかれていた。
手紙には子供である日向には難解すぎる内容が書かれていた。
「難し過ぎるわ」と呟いた瞬間、頭の中に答えが流れ込んでくる。

これが巫女になると言う事か!と喜ぶ日向の前に体調の悪そうな日影の姿が。
日向はその名前と同じく、じめっとした姉を不快に思いながらも
「もしかして姉も巫女なのか?」と悩む(姉も生きていたから)。

しかししばらくして、日向は「やはり自分が選ばれた巫女だった」と気付く。
姉の日影が年を取っている(成長している)事に気付いたのだ。

一族の巫女は不老不死だと伝えられている。
成長しない自分こそ巫女だと思う。
その後も難解な相談事に次々と答えていく日向。


948 名前:「時じくの香の木の実」3 投稿日:2007/04/18(水) 01:31:05
ある日、長兄が相談事を持ちかけてくる。
それは「結婚したいが、この相手はどうか」と言う内容。
兄は大学を卒業したばかり。
理由の分からない不快感を抱く日向(=恋と言う感情を理解出来ない為だと思われる)。
日向の頭に答えが浮かび、その結婚は上手く行かないと伝えようとする。
日影の姿を見つけたが、日影は禍々しい血の匂いをまき散らし、寝込んでいた。
(初潮が来たのだと思われる)
その匂いに気分が悪くなり、日向は部屋に逃げ帰る。
そのまま1週間程その状態が続き、日向は一歩も部屋から出る事が出来ない。
それ以降、毎月日影はその状態になり、日向は苛立ちを募らせる
その期間は、日向は口をきく事すら出来ないのだ。

日向が何も告げなかったため、長兄は結婚する。
日影は日に日に女らしくなっていく。その姿を見てせせら笑う日向。
長兄に貰った市松人形を抱きながら、いつまでも人形の様に愛らしい自分を誇りに思う。

ある日、奇妙な感覚に捕われた日向は部屋から走り出る。
廊下が腐り落ちているのを見つけ、恐慌状態で家中を走り回る。
手足が痺れ、言葉も出せない日向は、日影が自慰をしている所を目撃する。
(意味は理解出来ず、ただショックと軽蔑を感じた様な描写)
その後しばらく、誰からの相談も受けず、閉じこもる日向。

そこへ長兄がやってくる。長兄には既に娘が居たが、結婚生活は上手くいっていない。
疲れ果てた兄を見て、元凶である女を呪い殺してやろうか、と思っていると
日影が自ら、日向の部屋を尋ねて来た。初めての事に驚く日向。
毅然とした日影の姿に戸惑いながらも、長兄は離婚すべきだと告げる。


949 名前:「時じくの香の木の実」4 投稿日:2007/04/18(水) 01:32:04
長兄はその後離婚したが、すぐに再婚することに。
その頃には、日向のお告げのお陰で一族は上昇し、
日向と日影の父は、大きな役職に何度も就いていた。
(詳しくは書かれないが、背景に国会議事堂の絵がある事から政治家だと思われる)
長兄の再婚相手は、いずれ長兄を国の最高権力者(総理大臣?)にする力を
バックに持っている。「良し」と告げるしかない日向。
再婚相手は、すぐに男の子を出産した。

その頃、再び廊下が腐り落ち、手足の痺れと声の出ない状況に陥る日向。
それはたびたび起こり、日向は日影を屋敷から追い出さねば、と考える様になる。

そんな矢先。偶然、日影と長兄がセックスしている所を見てしまう。
(日向にセックスの知識があったかは不明だが、おぞましいと感じる)
嫉妬のあまり、怒声を張り上げ2人の間に割って入る日向。
しかし、その瞬間、日向は悟った。

「私には身体がない」

深い静寂の中、不老不死の意味を悟る日向。
あの果実を口にした時、日向は死に、それ以来「この世で年をとらず」
「あの世へ旅立つ事もない」と言う意味で不老不死となったのだ、と。
そして日影は「見えざる稀人」となった日向と、一族を繋ぐ巫女だったのだ、と。

巫女は姉の日影だった。しかしこれは敗北ではない。
姉は何も見えない。私の告げる事を、そのまま伝えるだけだから。
私はいわば、神になったのだ、と考える日向。

しかし日向は、敗北感を打ち消す事が出来ない。
心から愛している長兄と、肌を合わす事の出来る姉に対しても、
自分と違い、成長して年を取って行く身体に対しても。


950 名前:「時じくの香の木の実」5 投稿日:2007/04/18(水) 01:33:28
日影は「常処女」では無くなり、巫女の地位を追われる。
しばらくして、日向の耳に聞こえる筈のない赤子の泣き声が響く。
追放された姉が密かに生んだ子供を、一族が無理矢理引き取ったのだ。

その子供は、男でもなく女でもなかった。
そして男でもあり、女でもあった。
長兄と先妻の間に生まれた娘を差し置いて、その子供が一族の頂点となる事が決まる。

日向は待つ。その子供が8歳になり、あの果実を口にする時を。
その時、性別を越えた真のシャーマンが誕生する。
それまでは日向は動く事も言葉を発する事も出来ないのだが。

長兄に貰った市松人形を抱えたまま、日向は語る。

「その時が来たら、一族に世界を掌握する程の権力を与えよう。
 それが神の意志かどうかは分からないが、私には関係ない。
 そうする事で、私は”長兄の子供を産んだ日影”に勝ったと証明出来る」

あくまでも「姉の日影に勝つ事」を考えている日向。

「永遠に8歳のまま、成長も衰える事もしない私を
 不安に思う人が居るかもしれないが、分別まで8歳の子供ではない」

そう語る日向の背景に、原子雲(キノコ雲)の絵が描かれて終わり。

 

夜叉御前―自選作品集 (文春文庫―ビジュアル版)
夜叉御前―自選作品集
(文春文庫―ビジュアル版)
夏の寓話 (山岸凉子スペシャルセレクション 6)
夏の寓話
(山岸凉子スペシャルセレクション 6)


後味悪い
(後味悪ければクリック)
読み込み中 ... 読み込み中 ...