ちきしょう!(藤沢周平)

680 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2007/07/29(日) 04:14:29
藤沢周平の時代小説「ちきしょう!」
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舞台は江戸時代。やや頭が弱く不器用だが気立てのよい女がいた。
夫と幼い子供と3人で幸せに暮らしていたが、夫が事故死してしまう。
女は子供を抱えて必死に働こうとするが、内職は不器用でさっぱりうまくいかない。
やむを得ずこっそりと夜鷹(街娼)をして子供を養っている。
ある晩、子供が病気で寝込んでおり、薬代を稼ぐために女は夜の街に出る。
今晩はなんとしても客をとらねばならない。

一方、同じ街を大店の若旦那が歩いていた。
許嫁が決まり、放蕩を叱られ馴染の芸者だかを親の手回しで隠されてしまい、
遊ぶ金も押えられて憤懣やるかたない。
そんな若旦那の袖を、一人の夜鷹の女が引く。
「金がないから」と振り払おうとする若旦那だが、冗談だと思ったのか
なおも誘ってくる夜鷹の女が案外美人なのに気を惹かれ、了承する。
しかし手持ちの金がないので事が終わるとそのままとんずら。
夜鷹が追いすがるが振り切って逃げてしまう。


681 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2007/07/29(日) 04:15:54
女が長屋に戻ると、近所の人々が「遅かったじゃないか」と口々にとがめるように言う。
部屋の中にはぐったりした子供の姿。既に手遅れなことが一目瞭然だった。
立ち尽くす女。

数ヵ月後、若旦那は上機嫌で街を歩いていた。
覚え始めた商売が楽しくて仕方がなく、また親の目を盗んでものにしたばかりの
許嫁のことを考えてニヤニヤしながら歩いている。
雑踏の中でこちらを見てはっと立ち止まった女に、多分店の客だろうと
にこやかに愛想笑いしてすれ違う。

突然、若旦那は首に鋭い痛みを感じて振り返る。
触ってみた手には血がべっとりついている。
目の前にはかんざしを手に立つ無表情の女。
女の連れが女の名前を呼んで「あんた、何してるんだい!」と言う声を聞きながら、
「そんな女は知らない、一体何なんだ」と泣き叫ぶ若旦那。
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何と言うか、ひたすら欝になった。

 

驟(はし)り雨 (新潮文庫)
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