ホーム » 小説 » 小説/さ行 » さなぎ(筒井康隆)

364 名前:1/2 :2008/08/20(水) 18:22:56
ごめん、じゃあもうひとつ書いた 筒井康隆「さなぎ」

その時代には大人に逆らう若者を矯正する施設「疑似冬眠感化センター」
一般に「さなぎセンター」というものがあった。
大人が「この若者が反抗的だ」と警察に通報するとそのセンターに入れられ、
黒く固く顔を醜く反抗的に歪めた「さなぎ」状態で3年間睡眠矯正され、
出たときにはすっかり「大人」になっているというわけだ。

*****
今日また「おれ」の友達の勝也が親に反抗的な態度をとったとして警察に連れられてしまった。
出がけにくどくど同じことを言うのでつい口答えをしてしまったそうだ。
他の友達とセンターに着いたときには既に勝也は「さなぎ」になってガラスケースに入っていた。
側に両親らしい中年夫婦がいて、母親の方は泣いていたが、父親は虚勢を張って「これでいい」と怒鳴っていた。
そしておれ達の敵意のこもった視線を感じ「文句あるのか?」と問い、
おれは「やっぱりお父さんが決められたことですし、
勝也君はさなぎになって仕方なかったと思います」と答えるしか無かった。


365 名前:2/2 :2008/08/20(水) 18:24:03
家に帰ると食事時で父親が「どこをほっつき歩いていた」と問い始め、
おれは適当に返しながら「食欲は無いのでいいです」と部屋に行こうとすると
「私と同席するのが嫌なんだな」
その後延々と若者の悪口から親への敬意、既にさなぎにされたおれの恋人の真似
「ほうらわたい魅力的でしょう、寝ましょうよ、
 わたいのお腹の上にいらっしゃい、こうやって誘惑されたんだろう」
に至るとおれは泣いてしまい、すると
「親を馬鹿にしているくせにそうやってさなぎにされないために演技してるんだよな」
と、涙がとまりじっと父親の目を見ると父親は激高しておれを殴り
「いつか復讐する気でいるんだろうがそんなことさせないからな」と吹っ飛ばし、
「どうか許してください」復讐シテヤルゾ
「男ならかかってこんか」と食器棚にぶち当てられ頭からダラダラ血をながしながら
「堪忍してください堪忍してください」
復讐シテヤルカラナ
「こいつめ」と椅子を振り下ろされおれは折れた歯を吐き出しながら必死で謝った。
復讐シテヤルゾ

3年経ち、また父親はおれを痛め続けていた。復讐シテヤルゾ
5年経った。復讐シテヤルゾ キット復讐シテヤルゾ
10年経った。復讐シテヤルゾ 
20年経った。父親は死んだ。
復讐シテヤルゾ オレダケガ痛メツケラレタノデハ不公平だ 昔オレガヤラレタノト同ジヨウニ
オレノ子供モ同ジヨウニ痛メツケテヤルゾ
反抗ナンカデキルモノカ モシ反抗シタラさなぎセンター行キダカラナ

 

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