パタリロ!/第277話「ミステリーゾーン」(魔夜峰央)

765 名前:1/4 :2008/08/26(火) 00:02:45
漫画『パタリロ!』より、「ミステリーゾーン」というお話。

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舞台は主人公の少年国王パタリロが統治する、小さな島国である。
ある日パタリロの部下のタマネギが空港で土産物屋の店番をしていると、
学生時代の友人だった青年ヘルムートと、その恋人マヌエルにバッタリ出会う。
今しがたこの国に到着したばかりだという2人だったが、憔悴しきった様子で
「黒髪でこれこれこういう容姿の男は来なかったか」とタマネギに尋ねる。
そういう男なら確か前の便で先ほど入国したのを見たと思う、と伝えると
驚き恐怖の表情を浮かべる2人。ただならぬ2人の怯えた様子に
わけを尋ねると、ヘルムート青年は黒髪の男について語り始めた。

 黒髪の男、というのはマヌエルの叔父である。
 マヌエルは事故で両親を亡くして、資産家である叔父に養育されていたのだ。
 男はマヌエルに高い知性や芸術性を身につけさせるため家庭教師を探していた。
 博学のヘルムートは男に気に入られマヌエルの家庭教師となる。

 何度も授業をしに訪れるうち、ヘルムートは美しく聡明で素直な生徒マヌエルに
 惹かれ始める。やがてマヌエルもヘルムートを愛するようになり2人は恋人になる。

 ところがある日、男の電話を盗み聞いてしまったヘルムートは仰天する。
 男はなんと人身売買組織にマヌエルを売り飛ばすつもりだったのだ。
 男は身寄りのないマヌエルに良い教育を受けさせてやる優しい叔父などではなく、
 マヌエルに教養を身につけさせていたのもマヌエルをより高く売るため、
 「商品」としての価値を上げるためにすぎなかったのである。
 
 男を問い詰めるヘルムートに、秘密を知られ逆上した男が襲い掛かる。
 激しくもみ合った末にヘルムートは男を電話のコードで絞め殺してしまった。
 自分が警察に捕まったらマヌエルは1人ぼっちになってしまう、
 そう思ったヘルムートはマヌエルに事情を話して2人で叔父の屋敷を出、
 ヘルムートのアパートへと逃げ込んだ。


766 名前:2/4 :2008/08/26(火) 00:04:13
 男を殺したことがバレ警察の捜査がいつ自分に及ぶかもしれないとビクビクする
 ヘルムート青年。しかし何日経っても警察がアパートに来る様子は無く、
 それどころか男が殺されたことすらニュースになっていないようなのである。
 不審に思いながらもヘルムートは新たな仕事を見つけマヌエルとの同棲生活が始まった。
 
 マヌエルも叔父に売り飛ばされかけたショックから徐々に立ち直っていき、
 静かだが幸せな2人の毎日が続く。
 しかしある夜、呼び鈴のチャイムに応えて部屋のドアを開けたマヌエルは悲鳴をあげた。

 そこには青い顔をした叔父が立っていたのである。
 マヌエルの悲鳴を聞いて駆け付けるヘルムート、男は死んでおらず復讐に来たのか。
 襲い掛かってくる男に、ヘルムートは咄嗟に玄関にあった雨傘で応戦する。
 傘は男の胸に突き刺さり、男は声も無く崩れ落ちた。2人は男が死んでいることを確認する。
 今度こそ確かに男を殺してしまった。もうこのアパートにはいられない。
 2人はまた部屋を飛び出すのだった。

 ところがさらに数日後、移動中に宿泊したホテルのバルコニーに、再び男が現れた。
 何とかバルコニーから突き落とし、階下に降りてまた男の死亡を確かめる。

 再び逃亡を開始するヘルムートとマヌエルだったが、どこへ逃げても何度逃げても
 行く先々で必ず、死んだはずの男がやって来るのであった。
 そのたびにナイフで刺し殺し、灰皿で殴り殺し、ある時は死体の頭を岩で潰しさえしたが、
 やはり数日も経つと男はまた2人の前に姿を現すのだ。

タマネギに事情を話し終えたヘルムートは青い顔でつぶやいた。
「……だから飛行機でこの国までやって来たんだ。外国まで来れば大丈夫だろうと。
 なのに、先回りされてるなんて…」
ヘルムートの隣で恐怖と絶望の表情を浮かべるマヌエル。


767 名前:3/4 :2008/08/26(火) 00:06:16
「それで?」
所は変わって、パタリロの友人の家。パタリロと友人が2人で話している。
「それで?そのあと彼らはどうなったの?」
友人がパタリロに尋ねる。
「いや、タマネギから聞いたこの話は、これで終わりなんだ」パタリロは答えた。
「えぇっ?どういうこと?」いぶかしがる友人。

タマネギは、パタリロならばオカルティックな怪事件にも精通していて
きっと力になれるはずだから相談しに行こうと2人を引き止めたのだが、
2人はそれを固辞してその足でまた怯えながらどこかへ旅立ってしまったらしい。
パタリロは後からタマネギにその話を聞かされただけなのだった。

「2人の話が本当なら、その叔父が既にこの世のものでないことは確かだ」
パタリロは淡々と話し続ける。
「だろうね……」
「だが、その2人も何だかおかしいと思わないか?旧友が助けになると言ってるのに
 そこまで頑なに拒んですぐにまた2人だけで逃げ出すだなんて?」
「そう言えばそうだね。」相槌を打つ友人。


768 名前:4/4 :2008/08/26(火) 00:07:17
「ここからは僕の想像にすぎないんだが。マヌエルの叔父が電話をしていた相手は
 ただのマフィアやスケベオヤジなんかじゃなく、もっと別の何かだったんじゃないかな。
 マヌエルに逃げられてしまったことでその『何か』との契約を果たせなかった叔父は、
 『何か』によって永遠に死ぬことのできない体にされてしまった。
 一方でその原因となったヘルムートとマヌエルもまた『何か』を怒らせてしまったために
 いつまでも叔父に怯えながら逃げ続けなくてはならなくされてしまったんだろう。
 3人はすでに『何か』によって永遠に追いかけ続けることと永遠に追いかけ続け
 永遠に逃げ続けなければならない、ミステリーゾーンに囚われてしまっているんだろう。
 だから外の人間が手を貸そうとしてもそれを拒んで、ミステリーゾンの中を逃げ続ける。
 死ぬこともできずに、永遠に。グルグルと。」
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以上です。うろ覚えのまま書いた割りにはやたら長くなった…スマソ。 


773 名前:本当にあった怖い名無し :2008/08/26(火) 00:46:31
かわいそうに見える男も裁かれていない殺人犯ってところがまたいいな
全力でかばえないというか

 

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