世にも奇妙な物語/「おばあちゃん」

557 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/14(日) 06:11:04
随分前にテレビで見た後味の悪い物語。前スレで既出ならスマソ。

タイトル失念。
(うろ覚えだけど内容自体は合ってると思う)

山奥にある病院に入院する祖母のお見舞いに来た少女(仮にA子とする)とその両親。
個室のベッドには、全身にチューブが通された祖母が力なく横たわっている。、
動くことも、喋ることも出来ずただじっと窓から差し込む新緑を見つめている祖母は、どこか寂しげだ。
A子の母は軽蔑したような眼差しで祖母の顔を覗き込むと、
「太陽の光が目に悪いから」と、窓のカーテンをシャッと閉める。一瞬表情が歪む祖母。

少女を残して奥の部屋に移動した両親は、医者と何やら会話している。
「病状はなかなか回復せず……」「もってあと……」
どうやら祖母の命はもうそう長くないらしい。少女が悲しそうな顔で祖母の髪を撫でる。
両親が戻ってきた。「A子、帰る準備しなさいよ」。母の言葉に「え!? もう?」と動揺する少女。
「まったく、医療費だけでもバカにならないのに、とっとと死んでくれないかしら」
祖母が身動きできないことをいいことに、心無い言葉を吐き捨てる母。
少女が身支度を終え、両親の後に着いていこうとしたそのとき、少女の頭の中に祖母の声が響いた。
「……!!?? おばあちゃん!?」。驚く少女に、頭の中の祖母は説明する。


558 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/14(日) 06:11:51
「今日の日没、私の迎えが来る。私はお荷物のようだし、それに抗うつもりはないが、
死ぬ前にどうしても会いたい人がいる。私の初恋の相手。どうなっているのか心配で死にきれない。
だから、A子の体を借りたい。今日だけ私と入れ替わって欲しい。必ず日没までに戻るから。約束する」
祖母の言葉に驚きを隠せない少女。最初は迷っていた少女だが、
祖母の懇願についに根負けし、入れ替わりを決意する。

「A子! 何してるの!? 早くしないと置いていくわよ!」
母の声に振り向く少女。いやそれは既に祖母だった。
「おばあちゃん、苦しいよ、息ができないよ、助けて」
「ごめんなさい。必ず戻るから」
少女と入れ替わった祖母は、申し訳なさそうにその場を後にした。

病院から帰宅した祖母は、早速初恋の相手の家に向かう。
垣根から家の内部を覗き込むと、そこには寝たきりになり、虚空を見つめるだけの変わり果てた彼がいた。
そこへお粥を持って彼の枕元に座る義理の娘(?)。
熱々のお粥を彼の口元に運ぶが、上手く咀嚼できず、口角から次々とお粥がこぼれ落ちる。。
「あぁ!! イライラする!! ほんといつになったら死んでくれるのよ!」
娘は彼に苛立ち、そう暴言を浴びせてそのまま立ち去ってしまった。
「私と同じ目にあっていたんだ……可哀想に……」
祖母は無断で家に侵入すると彼の枕元に寄り、
「私よ、○○よ、覚えてる?」と話しかけながらお粥を丁寧に彼の口元に運ぶ。
と、そこに娘が。動転した祖母は必死に説明しようとするが、上手く説明できないし、
説明したところで信用してもらえるはずがない。
「何よアンタ!! 頭おかしいんじゃないの!?」。娘にお粥を投げつけられて逃げ去る祖母。


559 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/14(日) 06:12:27
複雑な表情のまま帰宅した祖母は、しばし呆然とするが、ふと外を見ると既に日が傾き始めていた。
A子との約束を思い出した祖母は、慌てて駆け出すと、車で1時間はかかる病院へ向かう。
ようやく山に到着するが、途中で道を間違え、道に迷ってしまう。
「早く行かなきゃ、孫が、A子が苦しい思いをしているのに」
鬱蒼と草木の茂る山道を駆け上がる祖母。と、そのとき、突き出した枝でおでこをザックリ切ってしまう。
その場にしゃがみ込む祖母。「このままやり過ごせば、死ななくて済むかもしれない……」
祖母の脳裏をそんな愚考が過ぎるが、
「だめだ! A子にはまだ未来があるんだから! こんな傷A子の今の苦しみに比べたら!」
と、思い直して再び山道を駆け上がった。空は既に鮮烈な蜜色に染まっていた。

日がまさに西の空に沈もうとしたとき、祖母は何とか病院の前に到着していた。
病室の扉を勢いよく開ける。
「おばあちゃん、早く、苦しい、苦しいよ」
助けを求める祖母の姿をした少女に、窓から迎えの光が差し込もうとしていた。
「A子、ありがとう、今、元通りにしてあげるからね」
A子のもとへかけよる祖母。2人を淡い光が包み込む。
「A子、本当にありがとう」


560 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/14(日) 06:14:47
― 40年後 ―

鯨幕に包まれたA子の自宅。喪服を着た人々が盛んに行き交う。
読経の中、棺の横で正座しているA子。遺影にはA子の母親が写っている。
「因果応報なのだろうか、あの人も、全身にチューブを通されて苦しみながら逝った」
A子の心の声が響く。

ふと、髪の毛をかきあげるA子。その額にはあのときの傷がまだ残っていた。
「A子には申し分けないことをした」
髪の毛を下ろし、心の中で呟くA子(?)
「ごめんね、A子。でも不公平じゃない。あの女にも、私の気持ちを分からせてやりたかったの」
不適な笑みを浮かべながら遺影を見つめる、A子の祖母。

終 わ り


565 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/14(日) 10:17:30
>>562
世にも奇妙な物語のおばあちゃんだったかな?
途中まで感動ものだけに堕落感凄いよな

568 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/14(日) 11:57:14
>>557
乙でした。面白かった!
ここでも何度か読んだ話だけど、
読んだ中では一番細かく書いてあって分かりやすい分、後味も悪かった。

569 名前:本当にあった怖い名無し :2008/12/14(日) 13:21:44
>>560
おお、覚えてる!
確かお手玉を小道具にしてなかったっけ?
最後のA子母の葬儀の時、お棺の横で大人になったA子が
歌いながらお手玉をする。
その歌とお手玉で「A子=祖母!?」と思わせてから
ナレーションで種明かし、みたいな。

ほんと後味悪かったなあ、あれ。

 

世にも奇妙な物語 小説の特別編 悲鳴 (角川ホラー文庫)
世にも奇妙な物語
小説の特別編 悲鳴